吸引的不動点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/19 16:33 UTC 版)
写像 f の吸引的不動点(きゅういんてきふどうてん、attractive fixed point)とは、f の不動点 x0 で、x0 の十分近くにある定義域内の任意の値 x について反復関数列 x , f ( x ) , f ( f ( x ) ) , f ( f ( f ( x ) ) ) , … {\displaystyle x,\ f(x),\ f(f(x)),\ f(f(f(x))),\ldots } が x0 に収束するものをいう。どのくらい近ければ「十分近く」であるかは場合によっては微妙な問題である。 自然余弦関数(「自然」というのは単位が ° ではなくラジアンであるという意味) はちょうどひとつだけの吸引的な不動点を持つ。この場合「十分近く」というのはとてもゆるい基準であって、ためしに例えば函数電卓でもって好きな実数を入力して cos ボタンを繰り返し押してみれば、瞬く間に不動点である約 0.73908513 に収束してしまう。つまりそこがグラフと直線 y = x が交差する点である。 必ずしも全ての不動点が吸引的であるわけではなく、たとえば x = 0 は函数 f(x) = 2x の不動点だが、0 以外の値ではどれもこの函数の反復によって急速に発散してしまう。しかしながら、函数 f が不動点 x0 の適当な開近傍で連続的微分可能かつ |f′(x0)| < 1 であるならば、吸引性は保証される。 吸引的不動点はより広い数学的概念であるアトラクターの特別の場合である。吸引的不動点はそれがリアプノフ安定であるとき、安定不動点 (stable fixed point) であるといわれる。また、不動点が中立安定不動点 (neutrally stable fixed point) であるとは、それがリアプノフ安定だが吸引的でないときにいう。二階斉次線型微分方程式の中心は中立安定不動点の例である。
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