口承による伝播
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 02:13 UTC 版)
ホメーロスのテクストは、長期にわたり口承によって伝えられていた。ミルマン・パリーはその高名な論文『ホメーロスにおける伝統的な形容辞』において、「俊足のアキレウス」や「白き腕の女神ヘーラー」のような(原文では)「固有名詞+形容辞」の形の数多くの決まり文句は、アオイドスの仕事を容易にするリズム形式に従っていると示した。1つの半句(フランス語版)を簡単に出来合いの半句で埋めることができる。ホメーロスの詩でしか見られないこの方式は、口承による詩に特有とされる。(詩#歴史も参照) パリーとその弟子のアルバート・ロード(英語版)は、セルビアのノヴィ・パザル地方の吟遊詩人が文盲であるにもかかわらず、こうした種類のリズム形式を用いて完全な韻文による長詩を暗唱できる例も示している。これらの叙事詩を記録してから数年後にロードが再び訪れた時も、吟遊詩人たちが詩にもたらした変更はごく僅かなものであった。詩法は口承文化においてテクストのよりよい伝承を確保する手段でもある。
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