収益法則について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 16:12 UTC 版)
「ピエロ・スラッファ」の記事における「収益法則について」の解説
スラッファは、1926年の論文「収益法則について」(On laws of returns, Economic Journal)において、この問題に挑戦した。かれは、企業が生産量を拡大しようとするときの主要な障害は、新古典派の考えるような生産費の増大(限界費用の増大)ではなく、販売量を増大させるためには、より大きな販売費用を負担するか、製品価格を低下させねばならないことにあるとした。このうち、販売価格を低下させるという構想は、ジョーン・ロビンソンにより『不完全競争の理論』へと具体化された。しかし、この本に対しては、ロビンソン自身も後に不満を表明している。この本は、不完全競争の理論を創始したばかりでなく、「企業の理論」を創造するものでもあった。塩沢由典は、「実業家たちが、その生産を逐次増加したいと思うとき、...主要な障害は」「より多量の財貨を売りさばきがたいことにある」ことにあるという指摘を「スラッファの原理」と呼び、これが企業レベルでの有効需要の原理にあたると主張している。 この不完全競争理論の提唱者であるスラッファの仕事が、新古典学派を論駁し得たかどうかは議論の余地がある。新ケインズ学派はスラッファの供給分析を厳密にすることで、新古典学派の完全競争・産業中心のマクロ的な視点を批判する。産業全体の均衡よりも、個々の企業における費用と生産量の「部分均衡」を優先して分析すべきであると、スラッファも考えた。ただし、彼は「完全競争下における費用不変」のテーゼをたてていることからも、新古典学派の一般均衡体系を否定したわけではなく、供給曲線を構成する手続きを問題にしただけである、という解釈もできる。いずれにせよ、彼の著作とリカード全集の編纂は、1960年代の新リカード学派の成立を可能にしたのである。
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