刃と銘の向き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 16:40 UTC 版)
太刀は刃を下へ向けて、鞘に付けられている足緒(あしお)と呼ばれる部品に太刀緒(たちお)を通して腰に吊り下げる。これを佩(は)くという。これに対し打刀は、いつでも即座に鞘から抜いて切りつけられるようにするため腰の帯に刃を上向きに差す。これを帯刀する(帯びる)という。そのため打刀の銘は左に切られており、飾るときも刃を上にして銘がある「指表(さしおもて)」を見せるようにする。ただし、室町時代後期から江戸時代初期にかけては、反太刀や天神差しといって太刀と同様に刃を下に帯刀することもあった。乗馬の際には刀の鞘の鐺(こじり)が馬に当たると馬が言うことを聞かなくなる恐れがあることから、天神差しにするという習慣が残されていた。 太刀と打刀(刀)の分かりやすい簡単な見分け方として、刃を上にして左腰に差したとき茎の銘が外向きに刻まれている場合は、おおむね打刀である。しかし、幕末期の新々刀時代の日本刀はこれに準じないものもあり、備中国青江派の刀工のように裏銘を切る場合があるなど、例外も多々あるため、必ずこうなっているというわけではない。由緒のある刀は、磨上げ(すりあげ)て体配的には「打刀」となっている太刀でも、「式正の刀」(太刀)であることを示すために、後世の鑑定家により、「太刀銘」が切ってあることが多い(長谷部国重:圧切(へし切長谷部)、正宗:中務(なかつかさ)正宗、いずれも国宝)。復古的な精神の漲っていた、幕末期の新々刀の「太刀銘」も同様の理由による。
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