再生サイクルの基本計算
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/16 05:20 UTC 版)
「再生サイクル」の記事における「再生サイクルの基本計算」の解説
復水器圧力 0.005 MPa 、タービン入口蒸気条件 5 MPa, 500 ℃ のランキンサイクルを例に、再生サイクルの基礎となる計算法を以下に例示する。計算においては、蒸気配管での圧損やタービンでのまさつ損失等を無視し、可能な範囲で可逆変化として扱う。 表 1 1段抽気再生ランキンサイクルの蒸気条件例圧力 p温度 Tかわき度 x比エンタルピー h比エントロピー s MPa ℃ --- kJ/kg kJ/(kg K) HT 5.0 500.00 (過熱蒸気) 3433.661 6.97702 H1 0.4163 163.40 (過熱蒸気) 2780.493 6.97702 hC 0.005 32.90 0.8208 2127.324 6.97702 hC 0.005 32.90 0 137.772 0.47626 h1 0.4163 145.07 0 610.888 1.79125 元のランキンサイクルの復水器圧とタービン入口の蒸気条件が与えられているので、蒸気表や h-s 線図等を用いて、表 1 に示す蒸気条件の タービン入口 HT、復水器出口 hC の値が求まる。また、タービンで等エントロピー膨張するとして、h-s 線図よりタービン出口 hC の値が求まる。 次に、抽気圧力を決める。後述のようにいくつかの経験則があり、またタービンの構造上の制約もあるが、ここではタービン内のエンタルピー落差が等しくなるように H1 = ( HT + HC)/2 として、抽気圧 0.4163 MPa を求めた。 抽気圧が決まれば、h1 は抽気圧に対応する飽和水として値が求まる。復水ポンプ CP 出口、給水ポンプ出口の比エンタルピーは、それぞれのポンプ入口の値 hC、h1 に等しいので、表 1 には記載していない。 このサイクルの T-s 線図を図 2 に示す。 T-s 線図上には、圧力 5 MPa, 0.416 MPa、0.005 MPa の3 本の等圧線を黒の破線で示しているが、図の左方のサブクール水領域では等圧線は互いに極めて接近しており、この3本の等圧線は飽和水線にほぼ重なっている。復水器出口 hC は圧力 0.005 MPa の飽和水線上にあり、それを復水ポンプで圧力 0.4163 MPa に加圧するとサブクール水となるが、両者の温度差および比エンタルピー差は微小であり、図では重なっている。比エンタルピー差はポンプ仕事に相当するが、ポンプ仕事は、タービン仕事、ボイラ加熱量または復水器放熱量のいずれと比べても微小であるため、この説明ではすべてのポンプ仕事を無視している。 熱収支より m 1 H 1 + ( 1 − m 1 ) h C = h 1 {\displaystyle m_{1}H_{1}+(1-m_{1})h_{C}=h_{1}} となるので、抽気量 m1 は次式となる。 m 1 = h 1 − h C H 1 − h C = 610.888 − 137.772 2780.493 − 137.772 = 0.17903 {\displaystyle m_{1}={\frac {h_{1}-h_{C}}{H_{1}-h_{C}}}={\frac {610.888-137.772}{2780.493-137.772}}=0.17903} 熱量および仕事の出入りは次式のようになる。 q B = H T − h 1 = 3433.661 − 610.888 = 2822.773 kJ/kg q C = ( 1 − m 1 ) ( H C − h C ) = ( 1 − 0.17903 ) × ( 2127.324 − 137.772 ) = 1633.363 kJ/kg w T = ( H T − H 1 ) + ( 1 − m 1 ) ( H 1 − H C ) = ( 3433.661 − 2780.493 ) + ( 1 − 0.17903 ) × ( 2780.493 − 2127.324 ) = 1189.400 kJ/kg {\displaystyle {\begin{aligned}q_{B}&=H_{T}-h_{1}=3433.661-610.888=2822.773{\mbox{kJ/kg}}\\q_{C}&=(1-m_{1})(H_{C}-h_{C})=(1-0.17903)\times (2127.324-137.772)=1633.363{\mbox{kJ/kg}}\\w_{T}&=(H_{T}-H_{1})+(1-m_{1})(H_{1}-H_{C})\\&=(3433.661-2780.493)+(1-0.17903)\times (2780.493-2127.324)=1189.400{\mbox{kJ/kg}}\end{aligned}}} したがって、再生ランキンサイクルの熱効率は η = 1 − ( 1 − m 1 ) ( H C − h C ) H T − h 1 = 1 − ( 1 − 0.17903 ) × ( 2127.324 − 137.772 ) 3433.661 − 610.888 = 0.42136 {\displaystyle \eta =1-{\frac {(1-m_{1})(H_{C}-h_{C})}{H_{T}-h_{1}}}=1-{\frac {(1-0.17903)\times (2127.324-137.772)}{3433.661-610.888}}=0.42136} となる。 もし、再生を行わなければ、熱効率は η = 1 − H C − h C H T − h C = H T − H C H T − h C = 3433.661 − 2127.772 3433.661 − 137.772 = 0.39622 {\displaystyle \eta =1-{\frac {H_{C}-h_{C}}{H_{T}-h_{C}}}={\frac {H_{T}-H_{C}}{H_{T}-h_{C}}}={\frac {3433.661-2127.772}{3433.661-137.772}}=0.39622} であるので、再生サイクルにすることにより 約 2.5 % 向上する。
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