債権者への支払又は引渡し
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/17 08:43 UTC 版)
「詐害行為取消権」の記事における「債権者への支払又は引渡し」の解説
財産の返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。この場合において、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをすることを要しない(424条の9第1項)。 2017年の改正前の旧425条は取消権行使の効果は「すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。」とされていた。詐害行為取消権によって債務者の行為が取消されると、受益者、または転得者から債務者に金銭などが戻されることになる。ところがいったんは債務者の手元に戻ってもすぐに債務を弁済するために使われてしまうのだから、債務者としては返還されても受け取る意味がなく、受領を拒否する場合がある。そのため、金銭債権の場合は詐害行為取消権を行使した債権者に直接引渡すことが認められていた(大判大10.6.18)。 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)は取消債権者は受益者または転得者に逸出財産の直接の引渡しを請求することができることを条文化した(424条の9)。 このとき債権者は受益者(または転得者)から受け取った金銭を債務者に返還する債務を負っているが、この債務と自己の有する債権を相殺することによって事実上の優先弁済を受けることができる。債権者が引渡しを受けた金銭等の返還債務と被保全債権を相殺することについては議論があるが、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では明文化は行われず解釈に委ねられている。
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