伊賀章
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/03 10:20 UTC 版)
いが あきら
伊賀 章
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生誕 | 1949年1月5日![]() (現・高梁市) |
死没 | 2017年(68歳没) |
国籍 | ![]() |
出身校 | 関西大学工学部 |
職業 | 研究者・実業家 |
著名な実績 | バースト誤り検出訂正の開発 FeliCaの発明・開発 |
肩書き | ソニー情報技術研究所長 ソニー常務執行役員 |
受賞 | 第4回日本イノベーター大賞 日本経済団体連合会会長発明賞 文部科学大臣賞(2011) |
伊賀 章(いが あきら、1949年(昭和24年)1月5日[1]- 2017年(平成29年))は、研究者、実業家である。ソニー入社後、非接触カード(FeliCa)フェリカを開発した。FeliCaは、iD決済やSuicaやPASMO等の交通系決済へ多く採用されている[2]。入退場管理や公共交通機関のチケットをICカード化しデジタル化した。岡山県高梁市出身の技術者。[3]
来歴・人物
生い立ち
1949年(昭和24年)岡山県上房郡有漢町(現:高梁市)で出生する。1964年(昭和39年)に地元の岡山県立高梁高等学校へ入学する[4]。同期には、東芝副社長を務めた田井一郎、岡山大学医学部教授になる三村哲重がいる[5]。卒業後、1967年(昭和42年)関西大学工学部に入学し[6]、1971年(昭和46年)同大学電子工学科を卒業[7]、すぐに北辰電機製作所(現:横河電機)へ入社する[1]。同社で2年間働いた後、1973年(昭和48年)にソニーに入社する[1]。
ソニーの研究者として
伊賀は研究部署に配属され、ここで非接触カード(FeliCa)を発明し、開発を主導した[8][9]。現在でも、FeliCaシステムは、iD決済やSuicaやPASMO等の交通系決済へ多く採用されている[2]。世界で初めて入退場管理や公共交通機関のチケットをICカード化し、世の中のデジタル化に貢献した。また、電力を無線通信により供給する基本特許を取得、0.2秒以内に処理する仕組みを完成させている[3]。この功績により、1996年、ソニーのカードシステム事業室部長となり、2000年にはコーポレート・リサーチ・フェロー、2002年ユビキタス技術研究所長となった[3]。
東日本旅客鉄道(JR東日本)の「Suica」(スイカ)や ビットワレットの「Edy」(エディ)、NTTドコモやKDDIの決済機能つき携帯電話は、 いずれも基幹技術としてフェリカを採用している。
2003年には、コーポレート・リサーチ・フェロー、ユビキタス技術研究所長を兼務しながらソニーの業務執行役員常務となり、2005年には、スタジオジブリの鈴木敏夫、カーボンナノチューブを発見し、ノーベル賞の有力候補にもなっている飯島澄男、楽天の三木谷浩史についで第4回日本イノベーター大賞を受賞している[10]。
伊賀の開発したFeliCaは、後にソニーとフィリップスが共同で開発したNFC規格と互換性があり、FeliCaを独自開発したソニーの技術が国際規格であるNFCの確立に大きな影響を与えた。また、現在でも、日本国内のみならず、アジアなどの比較的人口が密集した地帯における交通網(電車・バス)の電子決済システムとして、決済速度の速さから多く導入されている。
伊賀は、2005年シニア・バイス・プレジデント、情報技術研究所長となる。2007年には、コーポレート・エグゼクティブSVP、情報技術研究所長、2008年には、業務執行役員SVP、コーポレート・フェローとなるが、2008年6月ソニーを退社する[11]。
伊賀はFeliCa以外にも、ソニー時代に音楽プレーヤー向けPCM(パルス符号変調)の技術開発に携わり、のちのCDやDATに応用されるバースト誤り訂正技術を開発しており、デジタル技術に与えた影響は大きい。その後、民生用のGPS受信機の開発に挑み、製品化にもこぎ着けている。
2011年(平成13年)62歳のときに文部科学大臣賞・科学技術賞(開発部門) を受賞する[12][13]。
2017年(平成29年)に68歳で死去した。
受賞
略歴
- 1949年 - 岡山県上房郡有漢町(現・高梁市)で出生
- 1967年 - 岡山県立高梁高等学校を卒業[5]
- 1971年 - 関西大学工学部を卒業、北辰電機製作所へ入社[1]
- 1973年 - ソニーの研究職へ転職[1]
- 1989年 - 総合研究所・情報通信研究所・情報第2特別研究室長[1]
- 1993年 - 情報システム研究部長[1]
- 1994年 - 中央研究所・情報通信研究部門カードシステム事業開発部長[1]
- 1996年 - アーキテクチャ研究所プロダクトアーキテクチャ・ラボラトリー部長・カードシステム事業室部長[1]
- 1998年 - IT研究所システム開発ラボラトリー部長[1]
- 1999年 - インフォメーション&ネットワーク研究所セキュリティシステム・ラボラトリー部長[1]
- 2000年 - インフォメーション&ネットワーク研究所技師長・コーポレート・リサーチ・フェロー[1]
- 2001年 - インターネット研究所 コーポレート・リサーチフェロー(執行役員)[11]
- 2002年 - ユビキタス技術研究所長[11]
- 2003年 - ソニー業務執行役員常務[11]
- 2007年 - コーポレート・エグゼクティブSVP、情報技術研究所長[11]
- 2008年 - 業務執行役員SVP、コーポレート・フェロー[11]
- 2008年6月 - ソニー退社[11]
- 2017年 - 死去
共著
- ディジタル・オーディオ,土井利忠との共著,ラジオ技術社
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l 2000.07.12 日刊工業新聞 13頁 『新役員/ソニー・執行役員-近藤章氏、野副正行氏、嘉冶健夫氏、神永幸三氏ほか』
- ^ a b 日経クロステック(xTECH) (2009年12月1日). “第5回:蘇生したプロジェクト,「香港」に賭ける(上)”. 日経クロステック(xTECH). 2025年5月6日閲覧。
- ^ a b c 垂井康夫編「生活者の豊かさを創出したイノベーター」90ページ上部
- ^ 旺文社大学受験ラジオ講座テキスト 15(8), 旺文社, 1966年11月
- ^ a b 高梁高校東京支部だより 第29号 13頁, 2017年7月号『S42卒 伊賀章, 田井一郎』
- ^ 大阪府立工業奨励館報告 (54), 大阪府立工業奨励館, 1971年7月『本実験に甚大なこ協力をいただいた関西大学工学部学 伊賀章』
- ^ Card wave 9(8)(105), インフキュリオンコンサルティング, 1996年7月『カードシステム事業室部長伊賀章氏 1949年1月5日岡山県生まれ。71年関西大学工学部電子工学科卒業。73年ソニーに入社。』
- ^ 日経クロステック(xTECH) (2009年11月26日). “第4回:「改札機」と「入退出」,両面作戦に挑む(下)”. 日経クロステック(xTECH). 2025年7月28日閲覧。
- ^ 日経クロステック(xTECH) (2009年12月8日). “第7回:目指すは電池のないコンピュータ,CPUもOSも自分で作る(上)”. 日経クロステック(xTECH). 2025年7月28日閲覧。
- ^ a b “日本イノベーター大賞、2017年は「スタートアップ一色」。受賞した5人のイノベーターとは?”. THE BAKE MAGAZINE (2017年3月23日). 2025年5月17日閲覧。
- ^ a b c d e f g 垂井康夫編「生活者の豊かさを創出したイノベーター」90ページ下部
- ^ 2011.04.13 読売新聞東京朝刊 28頁 『平成23年度科学技術分野の文部科学大臣表彰』
- ^ a b 平成23年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門) 受賞者一覧
- ^ 2006.05.10 日刊工業新聞 23頁 『発明協会、早川氏らに恩賜賞-総理大臣賞は牧氏ら』
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