中世国家と政治理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 18:35 UTC 版)
中世国家の特質としては、地域国家であることが挙げられる。中世国家を支配する国王のもとには国境も国土も国民も存在せず、その支配は契約関係に依拠するのであり、なおかつその契約関係は流動的であった。次に国王だけでなく領主も軍事力を持っており、ここでは、現代社会において国家の権力を強力ならしめている暴力の独占が行われていなかった。したがって、国王の公権力の性質と領主の私権力の性質は、暴力に関していえば本質的な区別は存在しなかった。さらに法についても、伝統や慣習が重んじられた。そこには「古き良き法」としての慣習と支配関係を規定する契約があるのみで、国王の権力もそれを改変することはできなかった。国王は契約によって支配したが、同時に契約に支配されていたのである。最後に、中世社会における教会の絶対的な精神的支配を挙げることができる。教皇は、場合によっては国王以上の権威を持っていた。皇帝としてのドイツ国王も中世国家の上位に存在する理念上の帝国(インペリウム)の統治者とされたが、実質に乏しかった上、教皇の支配する教会のほうがより実質的にヨーロッパ世界を統合していた。中世社会では、権力は世俗の国家・王権に、権威は教会に二元化されており、このことがのちのヨーロッパの政治社会を大きく規定した。
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