不夜城を見て颱風のいきいきす
作 者 |
|
季 語 |
|
季 節 |
秋 |
出 典 |
夢の略図 |
前 書 |
|
評 言 |
掲句は句集『夢の略図』の「山は雪」の中に収められている一句である。颱風と不夜城の取り合わせをきっぱりと詠んでいるのが新鮮で現代を反映して面白い。若いお上りさんの颱風には六本木などの不夜城が見えると若者同様に舞い上がるのだろう。 ところで句を読んだ時、首都大学東京大学院の高橋日出男教授らの研究チームが、本年5月28日に「日本地球惑星科学連合」の大会で発表した研究結果をふと思い出した。新聞記事をご存知の方もあると思うが、平成14年までの11年間の夏季に、都心で1時間に20ミリ以上の強い雨が降った226回のケースを分析し、強雨の約2時間前の風向き、航空機からレーザーにより計測した1棟ごとのビルの高さとの関係を詳細に調査した結果、東京都心の高層ビル群の風下地域は、局所的な大雨が多発する傾向があることがわかった。例えば、東風の時は新宿の西側の中野区、南風の時は池袋の北西の板橋や練馬区、北風の時は渋谷の南の目黒区などが雨量の増加回数が最も多く、いずれも高層ビル群の風下地域が、大雨に見舞われる傾向が明確となった。風は高層ビルほど強い上昇気流を生む。湿った空気が高層ビルによって上空に運ばれ、短時間で雨雲に発達して、風下側に大雨を降らせているとみられる。 これらの地域、新宿や池袋、六本木、渋谷など超高層ビル群の存在する地帯は不夜城として有名であり、颱風となれば高層の風下地域の影響はより大きくなるに違いない。作者には詩情を損なうと顰蹙を買うかもしれないが、見方を変えると先の研究結果を五七五の中で見事言い得て妙である。 |
評 者 |
野舘真佐志 |
備 考 |
- 不夜城を見て颱風のいきいきすのページへのリンク