三鬼の忌近し空気を抜く枕
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評 言 |
山﨑十生氏は「紫」主宰。「豈」同人。現代俳句協会理事、埼玉県川口市俳句連盟会長、埼玉県現代俳句協会副会長、埼玉県俳句連盟副理事長等俳句の要職を務められ、多忙の人である。このたび刊行の句集『悠悠自適入門』は氏の第8句集であるが、他に4選句集、共著など多数がある。「紫」は先師関口比良男を継いで平成11年に主宰となったが、以来、一党一派に与せず、純正俳句を追求して現在の骨格を形成してきた。また、先師関口比良男は新興俳句を通して高柳重信、西東三鬼とつながっていたが、山﨑氏はそれを受け継いでいる。 三鬼の忌近し空気を抜く枕 この句は、このような氏の経歴を直接暗示させるものではないが、三鬼の代表句「水枕ガバリと寒い海がある」と枕のイメージを共有して、それにより師の関口比良男から三鬼、高柳重信につながっているようでもある。 では、空気を抜く枕は水枕を超えて現代性を獲得しているか。空気を抜く枕は、氏の俳句が思い込みが強く、独りよがりであるという一部の批判を、氏が十分意識して、自分の体内の空気(力み)を抜く思いを反映しているものと思われる。氏の『悠悠自適入門』はこれから、ゆったりと自分の心に合うような俳句を作ってゆくという氏の脱皮宣言でもあろう。このところ、現代俳句協会賞の佳作や次席に推されていることもその証左であり、それを超えてゆく静謐な心境を得んとする氏の心構えを詠みこんだ句であり、まことに氏の代表句にふさわしいと思えるのである。 |
評 者 |
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備 考 |
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