横坂けんじ

現代俳句データベース(人名)

横坂けんじ

横坂けんじの俳句

いなびかり肉屋が肉を吊り上げる

たうがらし即戦力といふちから

ふくしまや白雨に黒い芯がある

みちのくや喚びあつてゐるほととぎす

ゆく春やガレキの漁船に影がない

ゴム毬に昔へそあり文化の日

モーツアルトの音域に置く籐寝椅子

三社祭電気ブランに感電す

二ん月の木は本心を見せすぎる

働けど働けど林檎盗まれる

先客は父かも知れず夏座敷

冬草やかかとを踏んで靴を履く

初蝶来あやつり獅子の音に合せ

団塊世代は退職世代椿落つ

墓洗ひ真正面から老いてゆく

大西日駅が途方にくれてゐる

女性専用車みな秋思のそぶり

孑孒にルビ振りたれば動き出す

戦力外の通知受けたるかぶと虫

敷石は朝から熱しヒロシマ忌

新蕎麦や無印良品なる妻と

春闌けてつくづく脳の隙間かな

春風駘蕩たりしチンパンジーのお尻

木枯一号鼻の先から人を見て

水中花人はガラスの家に棲む

水打ちておのれの影を消してゆく

炎天に消えたままなり竹とんぼ

白桃は虚のかたまりとして熟れる

立春大吉牛の背中に小鳥来て

蛇口から水漏れてゐる花疲れ

血のめぐり悪くなりゆく吾亦紅

雪まじり雨は首から骨に入る

電気系統にミスあり熊が出る

青野八キロ八十円封書を運ぶ

非日常にして生ぬるき蝌蚪の紐