ヴィーナスと時間の寓意とは? わかりやすく解説

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ヴィーナスと時間の寓意

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/22 00:30 UTC 版)

『ヴィーナスと時間の寓意』
イタリア語: Allegoria di Venere e il Tempo
英語: Allegory with Venus and Time
作者 ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ
製作年 1754年-1758年頃
種類 油彩キャンバス
寸法 292 cm × 190.4 cm (115 in × 75.0 in)
所蔵 ナショナル・ギャラリーロンドン

ヴィーナスと時間の寓意』(ヴィーナスとじかんのぐうい、: Allegoria di Venere e il Tempo, : Allegory with Venus and Time)は、イタリアロココヴェネツィア派の画家ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロが1754年から1758年頃に制作した寓意画である。油彩。愛と美の女神ヴィーナスギリシア神話アプロディテ)と擬人化された「時間」の寓意を描いている。高さが約3メートルにおよぶ縦長の楕円形の画面に描かれており、かつてはヴェネツィアの名門貴族であるコンタリーニ家英語版によって所有されていた。現在はロンドンナショナル・ギャラリーに所蔵されている[1][2][3]

作品

映像外部リンク
10-minute talks. Tiepolo's 'Allegory with Venus and Time' (英語)
ジョヴァンニ・ドメニコ・ティエポロのエッチング。

ティエポロは雲の上に座る愛と豊穣の女神ヴィーナスと「時間」を描いている。場面はヴィーナスが豪奢な黄金色に輝く馬車に乗って空の向こうから現れ、新生児を「時間」のもとに連れてきたところである。ヴィーナスは宝石真珠をあしらった豪華な衣装をまとっている。その上方ではヴィーナスのアトリビュートである2羽のが空を飛びながらキスをしている。また雲には侍女である三美神が身体を寄せ合って下の光景を眺めながら、薔薇の花を撒いて幼児を祝福している。下方では座った「時間」がヴィーナスを見上げつつ受け取った幼児を抱いている。「時間」は背中に大きな翼を持つ年老いた人物として表されている。長い柄の大振りのを脇に置いていることは不死あるいは永遠を象徴する[1][2]。もっとも、腰に付けた砂時計は時間の経過が決して避けられないことを暗示している[1]。さらにその下にはヴィーナスの息子キューピッドが矢がたっぷり入った矢筒を持ち、「時間」の足元のあたりを飛んでいる[1][2]。この矢と矢筒は男女の縁を結ぶキューピッドの力を象徴しており、キューピッドの放った矢に当った者は恋に落ちるとされている[1]

この絵画はヴェネツィア貴族のおそらく寝室の天井を装飾するために描かれた。そのため絵画の形状は装飾的な曲線に沿った楕円形をしている[4]。絵画の構図は下方から見上げる形で鑑賞されることを想定して制作された。キューピッドの太い脚はまるで雲の端から落下しようとしているかのように鑑賞者に向けられ、ヴィーナスを仰ぎ見た「時間」の顔は部分的に隠れている。ティエポロの柔らかな光と繊細な色使いはヴィーナスの白い肌や印象的なピンクの衣装およびそれと対照的な「時間」の褐色の肌や青い腰巻きによく表れている[1]

「時間」が抱いている新生児はもしかしたらヴィーナスとアンキセスの息子でトロイアの英雄であるアイネイアスを表しているかもしれない[1][2]。アイネイアスは生涯の終わりに不死を得たと言われている。古代ローマの創始者であるアイネイアスは、ヴェネツィア最古の貴族の1つであり、自身の血筋が古代の共和制ローマまでさかのぼると主張していたコンタリーニ家にとって、アイネイアスはふさわしい主題であったであろう。本作品の図像は全体的に新生児の誕生を祝うことを示唆しており、後継者が生まれたことを祝うためにコンタリーニ家から依頼された可能性が指摘されている[1][2]。幼児の顔の特徴は理想化されたヴィーナスと「時間」の顔と比べて特徴が際立っているため、実際の幼児をモデルに描いたことも考えられる[1][2]

制作年代はティエポロがヴュルツブルク司教カール・フィリップ・フォン・グライフェンクラウ・ツ・ヴォルラース英語版から受けた仕事を終えて帰国した1753年から、息子ジョヴァンニ・ドメニコが左右反転した構図のエッチングを制作した1758年の間に描かれたと考えられている[1]

来歴

絵画はもともとコンタリーニ家の宮殿の天井を飾るために依頼された[1]。少なくとも1855年までコンタリーニ家の宮殿の1つに残されていたが、1876年までにオランダ人銀行家アンリ・ルイ・ビショフスハイム英語版によって所有されており、ロンドンのビュート・ハウス(Bute House)に設置されていた。1960年代初頭になって絵画はナショナル・ギャラリーによって修復された後、1969年に特別助成金とピルグリム・トラスト英語版の寄付により購入された[1]

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l An Allegory with Venus and Time”. ロンドン・ナショナル・ギャラリー公式サイト. 2025年1月14日閲覧。
  2. ^ a b c d e f An Allegory with Venus and Time”. Web Gallery of Art. 2025年1月14日閲覧。
  3. ^ An Allegory with Venus and Time”. Art UK. 2025年1月14日閲覧。
  4. ^ Allegoria di Venere e il Tempo, c.1754–58”. ロンドン・ナショナル・ギャラリー. 2025年1月14日閲覧。

参考文献

外部リンク




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