マルクス恐慌論の方法をめぐって-恐慌の可能性の現実性への転化-
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/26 15:14 UTC 版)
「恐慌」の記事における「マルクス恐慌論の方法をめぐって-恐慌の可能性の現実性への転化-」の解説
マルクス経済学者は「恐慌の必然性」を論証する、という問題の立て方をしてきた(たとえば富塚良三『恐慌論研究』)。しかし、マルクス恐慌論研究者の久留間鮫造は、マルクスの文章を主題別に抜粋する『マルクス経済学レキシコン』を編纂し、恐慌についてマルクスが何を述べているかを調べ上げた。そして、マルクスは「恐慌の必然性」という言い方をどこでもしていない。マルクスは「恐慌の可能性を現実性に転化させる諸契機」と表現しているのであって、「恐慌の必然性」という不明瞭な表現をするべきではない、と述べている(久留間鮫造『マルクス経済学レキシコンの栞』)。恐慌は、資本の基本的矛盾が究極の根拠となって起こるものであるが、この根拠も可能性にすぎない。いつでも生産と消費の矛盾は存在するが、恐慌になる場合もあればならない場合もある。恐慌とは、この根拠の上に様々な諸条件がそろったときに初めて可能性が現実性に転化して発生する資本主義の総合的な現象である。「恐慌の必然性」という把握の仕方では、マルクスの恐慌論の内容が不明確になる。これが久留間鮫造の主張の要旨であり、『資本論の方法』を著してマルクスの用いた弁証法的論理学の方法を研究した見田石介もこれを支持した。
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