ボックスカーとは? わかりやすく解説

ボックスカー【Bockscar】

読み方:ぼっくすかー

昭和20年19458月9日長崎原子爆弾投下した米軍B29爆撃機の機名。→エノラゲイファットマン


ボックスカー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/06 16:48 UTC 版)

ボックスカー機首部分のノーズアート

ボックスカー(Bockscar)は、第二次世界大戦時のアメリカ軍第509混成部隊に所属したB-29爆撃機の機名(機体番号44-27297)。ビクターナンバー 77[注釈 1][注釈 2]

1945年8月9日長崎県長崎市原子爆弾ファットマン」を投下したことで知られる。

爆撃投下作戦

攻撃当日ボックスカーは、「グレート・アーティスト」の機長チャールズ・スウィーニー少佐と副操縦士チャールズ・ドナルド・オルベリー大尉、フレッド・オリビイタリア語版中尉によって操縦された。

作戦では第一目標は福岡県小倉市(現北九州市)であり、爆撃当日も原爆投下機であるボックスカーより先に離陸し、天候観測機を務めていた「エノラ・ゲイ」からの報告でも天候に問題はなく、爆撃可能との報告を受けていたことから、ボックスカーも小倉爆撃を目的として作戦を行っていた。しかし、小倉市到着後に爆撃経路進入に3回失敗、その間に天候も悪くなり、迎撃機も確認されたことから、目標を第二目標である長崎市に変更した。

ボックスカーはテニアン島を離陸する時から、爆弾倉に装備した予備タンクの燃料ポンプが故障しており、残燃料に余裕がなかったことから爆撃航程をやり直す余裕はなく、1回目の爆撃航程の際に雲の切れ間から目視できた地点(本来の投下予定地点より北西の地点)に原爆を投下した。

機体

国立アメリカ空軍博物館に展示されるボックスカー

製造モデル番号はB-29-36-MO、機体番号は44-27297。ビクターナンバー77。15機製造された原爆投下作戦用の機体(シルバープレート)の1機で、ネブラスカ州オマハにあったマーティンの工場で製造された。

機体愛称は「ボックス・カー(Bocks Car)」あるいは「ボックス・カー(Bock's Car)」ともしばしば呼ばれる。しかし、機体に描かれた実際の綴りは「Bockscar」だった。これは、通常作戦時の機長フレデリック・ボックにちなんだ「Bock's car(ボックの車)」と、「ボックスカー(boxcar、有蓋貨車)」をかけた駄洒落である。

1945年3月10日に陸軍航空軍に引き渡され、ユタ州ウェンドーバーにあった第509混成部隊に配備された。6月17日にテニアンに到着、8月1日に防諜の理由からビクターナンバーを7から77に変更した。第二次世界大戦終結後の11月、第509混成部隊がニューメキシコ州ロズウェルに帰還。1946年8月まで同部隊に配備された後、アリゾナ州デビスモンサン基地に保管された。その後、1961年9月26日にオハイオ州デイトン国立アメリカ空軍博物館に運ばれ、ファットマンの複製とともに展示されている。

乗組員(通常時)

ボックスカー。垂直尾翼に描かれた矢印は所属を表すテールコード。初期表示
  • 航法士:レオナルド・A・ゴドフリー(Leonard A. Godfrey)[6]
  • 爆撃士:チャールズ・レヴィー(Charles Levy)[7]
  • 無線通信士:ラルフ・D・カリー(Ralph D. Curry)[8]
  • 航空機関士:ロデリック・F・アーノルド(Roderick F. Arnold)[9][10]
  • 銃座担当士・副航空機関士:ラルフ・D・ビランジャー(Ralph D. Belanger)[11]
  • レーダー担当士:ウィリアム・バーニー (William C. Barney)[12]
  • 後部銃座担当士:ロバート・J・ストック(Robert J. Stock)[13]

乗組員(原爆投下時)

長崎出撃時のボックスカー。テールコードが矢印からトライアングルN に変更されている

原爆投下時は「グレート・アーティスト」の乗員クルー C-15(Crew C-15)が乗り組んだ。

8月9日、出発直前のボックスカー搭乗員(ただし、バーンズ、アッシュワースは写っていない)。
(上段、左から)スウィーニー、アルバリー、オリヴィ、ビーハン、バンペルト、ビーザー
(下段、左から)クハレク、スピッツァー、ギャラガー、バークレイ、デハート

以下は同乗した軍人

脚注

注釈

  1. ^ 機体の胴体に描かれる識別番号
  2. ^ 15組のクルー[1]が準備され、それぞれに1機のB-29が配備されていた[2][3] 

出典

  1. ^ A-1、A-2、A-3、A-4、A-5、B-6、B-7、B-8、B-9、B-10、C-11、C-12、C-13、C-14、C-15
  2. ^ 15機のB-29爆撃機。機体番号と機名。44-27298 フルハウス(Full House)、44-86347 ラッギン・ドラゴン(Laggin’ Dragon)、44-27299 ネクスト・オブジェクティブ(Next Objective)、44-27300 ストレンジ・カーゴ(Strange Cargo)、 44-27354 ビッグ・スティンク(Big Stink)、44-27303 ジャビット3世(Jabit III)、 44-27296 サム・パンプキンス(Some Punpkins)、 44-27302 トップ・シークレット(Top Secret)、 44-86292エノラ・ゲイ(Enola Gay)、 44-27304 アップ・アン・アトム(Up an’ Atom)、 44-27301 ストレートフラッシュ(Straight Flush)、 44-86346 ルーク・ザ・スポーク(Luke the Spook)、44-27297 ボックスカー(Bockscar)、 44-86291 ネセサリー・エヴィル(Necessary Evil)、44-27353 グレート・アーティスト(The Great Artiste)
  3. ^ Campbell 2005, p. 119.
  4. ^ the Atomic Heritage Foundation (2022年). “Frederick C. Bock” [フレデリック・ボック]. https://ahf.nuclearmuseum.org/. 2023年12月29日閲覧。
  5. ^ the Atomic Heritage Foundation (2022年). “Hugh C. Ferguson” [ヒュー・C・ファーガソン]. https://ahf.nuclearmuseum.org/. 2023年12月29日閲覧。
  6. ^ the Atomic Heritage Foundation (2022年). “Leonard A. Godfrey” [レオナルド・A・ゴドフリー]. https://ahf.nuclearmuseum.org/. 2023年12月29日閲覧。
  7. ^ the Atomic Heritage Foundation (2022年). “Charles Levy” [チャールズ・レヴィー]. https://ahf.nuclearmuseum.org/. 2023年12月29日閲覧。
  8. ^ the Atomic Heritage Foundation (2022年). “Ralph D. Curry” [ラルフ・D・カリー]. https://ahf.nuclearmuseum.org/. 2023年12月29日閲覧。
  9. ^ the Atomic Heritage Foundation (2022年). “Roderick F. Arnold” [ロデリック・F・アーノルド]. https://ahf.nuclearmuseum.org/. 2023年12月29日閲覧。
  10. ^ Find a Grave (2023年). “Roderick Franklin Arnold” [ロデリック・フランクリン・アーノルド]. https://ja.findagrave.com/. 2023年12月29日閲覧。
  11. ^ the Atomic Heritage Foundation (2022年). “Ralph D. Belanger” [ラルフ・D・ビランジャー]. https://ahf.nuclearmuseum.org/. 2023年12月29日閲覧。
  12. ^ the Atomic Heritage Foundation (2022年). “William C. Barney” [ウィリアム・バーニー]. https://ahf.nuclearmuseum.org/. 2023年12月29日閲覧。
  13. ^ the Atomic Heritage Foundation (2022年). “Robert J. Stock” [ロバート・J・ストック]. https://ahf.nuclearmuseum.org/. 2023年12月29日閲覧。

参考文献

  • Campbell, Richard H. (2005). The Silverplate Bombers: A History and Registry of the Enola Gay and Other B-29's Configured to Carry Atomic Bombs. Jefferson, North Carolina: McFarland & Company, Inc.. ISBN 978-0-7864-2139-8 
  • 奥住喜重、工藤洋三 訳『原爆投下の経緯 ウェンドーヴァーから広島・長崎まで 米軍資料』東方出版、1996年。 ISBN 978-4885914980 
  • 奥住喜重、工藤洋三、桂哲男 訳『米軍資料 原爆投下報告書 パンプキンと広島・長崎』東方出版、1993年。 ISBN 978-4885913501 
  • 奥住喜重、工藤洋三『ティニアン・ファイルは語る 原爆投下暗号電文集』奥住喜重(自費出版)、2002年。 ISBN 978-4990031442 

関連項目

  • ARIEL - 笹本祐一のSF小説で、長崎に向かう途中の同機が現代にタイムスリップしてきたストーリーがある。

外部リンク


「ボックスカー」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ボックスカー」の関連用語

ボックスカーのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ボックスカーのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのボックスカー (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS