プロトレプティコス_(アリストテレス)とは? わかりやすく解説

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プロトレプティコス (アリストテレス)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/21 03:14 UTC 版)

プロトレプティコス』(古希: Προτρεπτικός, : Protrepticus)邦題『哲学のすすめ[1][2](てつがくのすすめ)は、アリストテレスの著作。古代に複数書かれた「プロトレプティコス」の代表例。断片のみ現存する。

背景

本書はアリストテレスの初期著作にして「公開的著作[3]」、すなわち『形而上学』『ニコマコス倫理学』といった本来非公開の著作と異なり、公開目的で書かれた著作である。

本書の成立経緯としては、イソクラテスプラトンのライバル)の著作『アンティドシス英語版』のアカデメイア批判への反論として書かれた、あるいはキュプロステミソン英語版に向けて書かれた、と伝えられる[4]。テミソンに向けて書かれた場合も、実際の想定読者は若者全般だったと推測される[5]

本書は古代ギリシア・ローマ世界において、アリストテレスの代表作の一つとして読まれた[6]ストア派ゼノンキュニコス派クラテスは本書を批判的に受容した[7]キケロは本書に倣い『ホルテンシウス』を書いた[6]

本書の断片は、主にイアンブリコス同題の著作に抜粋されて伝わる[4]。イアンブリコスの抜粋は、おそらく対話体または書簡体・演説体だった原著を講義体に改めたり、前書きなどを挿入したりしているが、原著に比較的忠実と推測される[4]。またイアンブリコス以外の主な断片として、アウグスティヌス三位一体論英語版』所引(キケロ『ホルテンシウス』の孫引き)の「至福者の島」に関する記述がある[8]

近現代のアリストテレス全集では『断片集』に含まれる。

内容

「我々は哲学すべきである」(philosophēteon)をキーフレーズに、「哲学する」「よく生きる」こと、それにより真の幸福に至ることを、論証形式で読者に勧める[9]

イソクラテスが『アンティドシス英語版』で説いたような実践を重んじる哲学観、すなわち「哲学は実生活に有用・有益でなければならない」[10]「役に立たない哲学は哲学ではない」[7]という哲学観を否定し、観想(観照、テオーリアー)を重んじる哲学観、すなわち哲学すること自体に意義があるとする哲学観を説く[5][11]。そこで、「至福者の島」すなわち島民が観想だけして生きる理想郷、という思考実験を持ち出す[11]

形而上学』冒頭の「人間は生まれつき知ることを欲する」と似た部分もある[12]

日本語訳

出版年順

脚注

  1. ^ 廣川 2011.
  2. ^ 國方 2018.
  3. ^ 廣川 2011, p. 13.
  4. ^ a b c 廣川 2011, p. 17-21.
  5. ^ a b 納富 2021, p. 530f.
  6. ^ a b 廣川 2011, p. 14.
  7. ^ a b 近藤 2017, p. 1f.
  8. ^ 藤沢 2000, p. 239;249.
  9. ^ 廣川 2011, p. 96;107.
  10. ^ 藤沢 2000, p. 225-230.
  11. ^ a b 近藤 2017, p. 4.
  12. ^ 松浦和也「「人間は生まれつき知ることを欲する」のか ―アリストテレス『形而上学』の最初の文について―」『白山哲学 : 東洋大学文学部紀要 哲学科篇』53、東洋大学文学部哲学研究室、2019年。 CRID 1050001202930675968。68頁。

参考文献




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