ビーティ数列
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/14 03:43 UTC 版)
数学におけるビーティ列(ビーティれつ、英: Beatty sequence, homogeneous Beatty sequence)とは、1 より大きい無理数の整数倍の床関数をとることによって得られる整数列である。ビーティ列の名称は、1926年にそれらについて著したサミュエル・ビーティに因む。
レイリー卿に名を因むレイリーの定理は、ビーティ列の補集合(ただし全体集合は正整数からなる集合)がそれ自身別の無理数で生成されるビーティ列となることを述べる。
ビーティ列はスツルム語の生成にも用いられる。
定義
正の無理数 r はビーティ列 ℬr ≔ ⌊r⌋, ⌊2r⌋, ⌊3r⌋, … を生成する。
r > 1 ならば s ≔ r/r − 1 もまた 1 より大きい無理数で、これら2つは等式 1/r + 1/s = 1 を満たす。これらが生成する2つのビーティ列 ℬr, ℬs はビーティ列の相補対を成す。ここに「補」("complementary") は任意の正整数がこれら2つの列のうちどちらかちょうど1つに属することを意味している。
例
(例1)
r ≔ φ を黄金比とすれば、s = φ + 1 (= φ2) である。これに対するビーティ数列の内、(⌊nr⌋) は下ワイソフ列
であり、補列 (⌊ns⌋) は上ワイソフ列
である。これらの列はワイソフのゲームの必勝形を与え、ワイソフ配列の定義に用いられる。
(例2)
r ≔ √2 とすると、s = 2 + √2 となる。これに対するビーティ数列は
- 1, 2, 4, 5, 7, 8, 9, 11, 12, 14, 15, 16, 18, 19, 21, 22, 24, …(A001951);
- 3, 6, 10, 13, 17, 20, 23, 27, 30, 34, 37, 40, 44, 47, 51, 54, 58, …(A001952).
(例3)
r ≔ π とすると、s = π/π − 1 となる。これに対するビーティ数列は
- 3, 6, 9, 12, 15, 18, 21, 25, 28, 31, 34, 37, 40, 43, 47, 50, 53, …(A022844);
- 1, 2, 4, 5, 7, 8, 10, 11, 13, 14, 16, 17, 19, 20, 22, 23, 24, 26, …(A054386).
歴史
ビーティ列がその名で呼ばれるようになるのは、1926年に雑誌 American Mathematical Monthlyにおいてサミュエル・ビーティ が提起した問題に由来する[1][2]。この問題はおそらく、その雑誌に提案された中でも最も引用される問題の一つである。しかし、それよりもずっと以前の1894年に、同じ数列がレイリーの著書 The Theory of Sound[3]の第二版で簡単に言及されている。
レイリーの定理
レイリーの定理(またはビーティの定理)とは、与えられた任意の無理数 r > 1 に対し、無理数 s > 1 が存在して、2つのビーティ列 ℬr, ℬs は正整数全体の成す集合を分割し、各正整数はこの2つの整数列のうちちょうど一方に属する[3]:123という定理である。
性質
- 命題
- m ∈ ℬr となるための必要十分条件は
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