トリ・ドーシャ説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 06:23 UTC 版)
古代ギリシャの体液病理説は、古代インド医学の影響を受けているともいわれる。アーユル・ヴェーダと呼ばれる古代インドの医学では、「ピッタ(胆汁、胆汁素)、カパ(粘液、粘液素)、ヴァータ(風、体風素)」の3つの体液が体をめぐっているとした。医学書『チャラカ・サンヒター』では、人間の病気の原因を体液の増悪とするトリ・ドーシャ説が唱えられた。 古代インドでは、五大元素として「地・水・火・風・空(虚空,空間,アーカーシャ)」が挙げられているが、ピッタは「火・水」、カパは「水・地」、ヴァータは「風、空」からなるとされた。ドーシャは、サンスクリット語で「不純なもの」「増えやすいもの」「体液」「病素」などの意味である。ドーシャは体液であると考えられ、また肉体のエネルギーと精神のエネルギーの両方を含む生体エネルギーであるとされる。 医学書『スシュルタ・サンヒター(英語版)』では、第4の体液として「血液」が挙げられ四体液説となっており、古代インドとギリシャの医学には共通点が多い。古代インド医学の概念が、ペルシア経由でギリシアに伝わった可能性もあるといわれる。『スシュルタ・サンヒター』をThe Sushruta Samhita に英訳したビシャグラトナー(Bhishagratna)は、伝わる過程でヴァータ(風)は除外され、胆汁が黄・黒に区別され、ギリシャの四体液説になったと推測している。
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