ディアナとアクティオンのパ・ド・ドゥ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/06 13:56 UTC 版)
「カンダウレス王 (バレエ)」の記事における「ディアナとアクティオンのパ・ド・ドゥ」の解説
今日において、『カンダウレス王』でもっとも有名な場面はいわゆる「ディアナとアクティオンのパ・ド・ドゥ」(Diane et Actéon Pas de deux)で、ガラ公演、あるいは2009年のユーリ・ブルラカおよびヴァシーリー・メドベージェフがボリショイ・バレエのために改訂した『エスメラルダ』で演じられる。 これはもとは「ディアナの恋人の冒険」(Les Aventures amoureuses de Diane)、または単に「ディアナの踊り」(Pas de Diane; パ・ド・ディアーヌ)と呼ばれ、ローマ神話の狩りの女神ディアナと羊飼いエンディミオン、そしてサテュロスの3人によるパ・ド・トロワであった。この場面はプティパがロシアの画家カール・ブリューロフの絵画にインスピレーションを得たものと言われている。今日踊られているのはプティパが振り付けたものではなく、1935年にアグリッピナ・ワガノワが『エスメラルダ』を改訂するにあたってサテュロスを除き、男性を羊飼いエンディミオンから狩人アクティオンに変え、ディアナが12人のニュンペーとともに踊っている場面として振り付け直したものである。ただし、神話においてディアナとアクティオンは恋仲ではなく、それどころかアクティオンはニュンペーとともに水浴びをしているディアナの裸身を覗き見したためにディアナの怒りを買い、牡鹿に変身させられた挙げ句に自分の猟犬に追われて食い殺される、という悲惨な末路を辿っており、ワガノワの改訂は神話の内容に沿わない奇妙なものになっている。 しかし、そもそもプティパの当初の振付もブリューロフの絵も、エンディミオンをディアナの恋人として描いているという点で誤っている。これはレオ・ドリーブの『シルヴィア』を含め、いくつかのバレエ作品にも見られるものであるが、本来エンディミオンはギリシャ神話の人物であり、これに恋したのは月の女神セレーネーであって、ディアナとは何の関係もない。この誤りは、セレーネーに対応するローマ神話の月の女神ルーナとディアナが同一視されていたことから生じたものである。
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