テレイグジスタンス
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テレイグジスタンス(英語: telexistence、遠隔臨場感、遠隔存在感)とは、自分が現在居る場所以外の実空間・仮想空間に実質的に存在し、五感と身体性を保持したまま行動できる”状態を実現する技術体系である[1]。視覚・聴覚・触覚・力覚など複数の感覚をリアルタイムに双方向伝送し、遠隔アバターロボット(サロゲート)を自分の身体として知覚しながら操作できる点が特徴である。
バーチャルリアリティ(VR)の一分野に位置づけられるが、単なる視聴覚の伝送に留まらず、触覚・力覚などを含む多感覚フィードバックと高い操作性を重視する点で、一般的なテレプレゼンス(Telepresence)とは区別される。
概要
テレイグジスタンスという用語は「遠隔(tele-)」と「存在(existence)」を組み合わせた造語であり、舘暲東大名誉教授によって1980年に着想され[2]、1984年に国際学術誌に論文が採録されている[3]。実際には、遠隔ロボットのセンサ情報をオペレータが受けながら、このロボットを制御することにより、遠隔におけるタスクを実行する遠隔操作システムの形式をとる。作業する対象がバーチャルな世界であるようなテレイグジスタンスも考えられる。
技術
テレイグジスタンスは単なる遠隔操作(リモートコントロール)技術ではなく、使用者がその場に実在しているかのような臨場感と身体性を再現することを目指している。そのため、ユーザー側の「主観系」 (入力装置・視覚・聴覚・触覚など) と、ロボット側の「客観系」 (アクチュエーター・センサ) に加え、それらをリアルタイムで接続する「通信系」の三要素から構成される。また、バーチャルリアリティがバーチャル空間への没入を目的とするのに対し、テレイグジスタンスは現実の別地点における存在の再構成を可能とする点で異なる技術体系である。高齢者支援、医療、教育、観光、宇宙探査など多様な分野への応用が期待されている[4]。
この技術を応用し、人間が行く事が困難な場所での危険作業が出来るものとして期待されている。さらには火星、金星開発も人間が直接行って開発するのではなく、地球にいながらテレイグジスタンスの技術を使って開発する事が可能であると考えられている。
2017年に舘暲東大名誉教授(会長)、元三菱商事の富岡仁(代表取締役CEO)、元ソニーの佐野元紀(取締役CTO)らによりテレイグジスタンス株式会社(Telexistence inc.)が設立され[5]、戦略投資家としてKDDI、Global Brain、国立開発研究法人 科学技術振興機構がシード投資を実行した。2018年にはAirbus Venturesがリード投資家となり数十億円規模のシリーズAを完了させた。
テレイグジスタンスという用語と技術は、1990年代以降、IEEEなどの国際標準化団体や学会で広く認知されており、現在では人間拡張 (Human Augmentation) や身体性メディアの先駆的分野としても位置付けられている。
脚注
- ^ S. Tachi, Telexistence, World Scientific Publishing Company, ISBN 978-9812836335, 2009
- ^ “Tachi_Lab - テレイグジスタンス”. tachilab.org. 2025年7月19日閲覧。
- ^ Tachi, S.; Tanie, K.; Komoriya, K.; Kaneko, M. (1985), Morecki, A.; Bianchi, G., eds. (英語), Tele-existence (I): Design and Evaluation of a Visual Display with Sensation of Presence, Springer US, pp. 245–254, doi:10.1007/978-1-4615-9882-4_27, ISBN 978-1-4615-9882-4 2025年7月19日閲覧。
- ^ Tachi, S.; Arai, H.; Maeda, T. (1990-07). “Tele-existence master-slave system for remote manipulation”. EEE International Workshop on Intelligent Robots and Systems, Towards a New Frontier of Applications: 343–348 vol.1. doi:10.1109/IROS.1990.262409 .
- ^ “テレイグジスタンス株式会社”. J-Startup(ジェイスタートアップ). 2025年7月20日閲覧。
関連項目
- テレプレゼンスロボット - テレビ会議+ロボット+遠隔操作技術を組み合わせたロボット。リモートコントロールとロボット技術を組み合わせて人が遠方からある場所で存在(プレゼンス)させることができる技術である。
- アバターロボット、OriHime
- ANA AVATAR - ANAホールディングスが構想する瞬間移動手段。自身の分身となるロボット「AVATAR」(アバター)を遠隔操作し、感覚や意識、技術を瞬間移動させる。
- ロボットカフェ
外部リンク
- テレ・イグジスタンスのページへのリンク