アバターロボット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/31 08:35 UTC 版)
アバターロボットは、バーチャルに存在していたアバターをリアルの世界で実現するもの。 人が遠隔からアバターとしてのロボットを操作し、ロボットが体験したことを自分の体で体験する[1]。
テレプレゼンスロボット、分身ロボットとも呼ばれる。
概要
アバターロボット(分身ロボット)は、自ら考えて行動することはなく考えるのは遠隔地からアバターを操作する人間である。 AIを搭載したロボットよりも開発は簡単なように思えるが、送られてくる人間からの指示をリアルタイムに実行して体をコントロールしたり、逆にロボットが触った感触などをデータ化してリアルタイムに人間に伝える必要があるなど、多くの要素技術を組み合わせる必要があり、実用化するにはインタフェースを含めて高度な課題がある。
また、1980年に舘 暲(たち すすむ)東京大学名誉教授が世界に先駆けて提唱し推奨したテレイグジスタンスの概念を実現させるためのロボット技術でもある。
国内先駆けの実用例としては、2010年にロボットコミュニケーターの吉藤健太朗が開発した分身ロボット「OriHime」が2014年から難病患者宅、教育現場などで実用化されている。
同氏の呼びかけで日本財団とANAホールディングスがスポンサーとなり、2018年から始まった「分身ロボットカフェ」では、ALSなどの重度障害者が自宅や病院からアバターロボットを操作しカフェで働く接客実験を実施し、これまで雇用の対象になりえなかった重度障害者らの接客による社会参加が可能になる事を示した。
こういったアバターロボット実用化への取り組みを「ANA AVATAR VISION(ANAアバター)」として支援しているのが、航空会社のANAホールディングスである。 アバターロボットが提供するサービスは医療や教育、宇宙開発、エンターテインメントなど、さまざまな分野での展開が期待されている[1]。 ANA Avatar XPRIZEは2019年世界経済フォーラムが選ぶ主要なテクノロジーの一つ「Collaborative Telepresence」に選ばれている[2]。
コンビニエンスストアでも、1人の従業員が複数店舗のアバターロボットを操作して接客することによりコスト削減や効率化を行っている。また、障がい者など実店舗・対面での勤務が難しい人の就労にも役立っている[3]。
脚注
- ^ a b “アバターロボットが人の感覚を拡張究極の疑似体験への挑戦始まる”. アバターロボット. 日経BP. 2019年8月2日閲覧。
- ^ “World Economic Forum” (英語). WEF. 世界経済フォーラム. 2019年8月5日閲覧。
- ^ 「《eリテール特集》コンビニで広がるアバター接客 就労の幅広げ業務効率化」『日経MJ』2025年3月3日、7面。
関連項目
- テレプレゼンスロボット − 遠隔操作とロボット工学を組み合わせて、遠く離れたある場所に存在(プレゼンス)させる技術。
- テレイグジスタンス − バーチャル・リアリティの一分野。遠隔地にあるモノや人をあたかも近くにあるかのように感じながら、操作などをリアルタイムに行う環境を構築する技術およびその体系。
- ハプティクス − 利用者に力、振動、動きなどを与えることで皮膚感覚フィードバックを行う技術。
- ANA AVATAR XPRIZE - かつて行われたロボット競技会。先端技術で遠隔で人々との応対ができるアバターロボットの開発を競うコンテスト。
外部リンク
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