準キャリア
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準キャリア(じゅんキャリア)とは、日本の中央省庁の一部において、国家公務員採用I種試験に合格し、幹部候補として採用された者(いわゆるキャリア)以外の者のうち、これらの者に準じた処遇を受ける者の俗称である。セミキャリアと呼ばれることもある。
以前は国家上級乙種採用者のことを準キャリアと呼ぶ例があったほか、用例としては稀であるがI種採用者においても、相対的に昇進の遅いグループに属する者(例えば、事務官に対しての技官、検察官に対しての法務省I種採用者、経済産業省本省採用者に対しての特許庁採用者、あるいは東大採用者に対する他大学採用者)をやや揶揄的に「準キャリア」と呼ぶことがある。
最近は、優秀な若手・中堅を中心に積極的に重要ポストや幹部へ登用する動きがある。
警察庁職員
大卒程度国家一般職試験(旧国家公務員採用II種試験)行政区分に合格して本庁採用された警察官を準キャリアと呼ぶ場合がある(管区警察局に採用された一般職試験合格者は警察官ではなく、警察庁事務官や警察庁技官である)。彼らは初任で巡査部長であり、総合職(旧I種)試験合格者(いわゆる「キャリア」)と同様に無試験で昇任する。警察官の大多数を占める都道府県採用者(いわゆる「ノンキャリア」)に比べ有利に処遇され、入庁時から幹部登用に向け計画的に育成される[1]。これまで、昇任しても警視長(本庁課長、一部の県警本部長等)までが限界とされていたが、1989年国家公務員Ⅱ種採用者が2024年4月に宮城県警察本部長に就任[2]し、その後在任中に警視監へ昇任した(2025年1月31日発令、任警視監)[3]。しかしながら、最高幹部(警察庁長官、警視総監、局長級)へ至ることが困難と見込まれる点では他省庁の一般職(旧II種)試験合格者と同様である。なお、従来は都道府県採用者から最優秀者を選抜し警察庁に採用するシステム(推薦制度)が存在していたが、近年においては転勤が多いなどの理由で敬遠する者が多く無実化し、その代替として国家II種(現・一般職)試験合格者を採用したという経緯がある[4]。なお、管区警察局に採用された一般職(旧II種)試験合格者に関しても、警視級の役職までの昇進が常態化している[5]。
都道府県採用警察官は原則として巡査が初任であるが、特定の資格[注 1]を有する者はII種試験合格者と同等に巡査部長の階級で任用されることがある[要出典](ただし、昇任はノンキャリア扱い)。上記であげた特定の資格試験保有者が、初任時において、II種試験合格者よりも上位の待遇・階級・役職で任用されることもある。
刑務官
同様に大卒程度国家一般職試験(旧国家公務員採用II種試験)に合格して採用された法務事務官(刑務官)を準キャリアと呼ぶことがある。刑務官採用試験の合格者が看守として任官するのに対して看守部長として任官する。
財務専門官
財務専門官採用試験で採用された財務局職員を準キャリアと呼ぶことがある[要出典]。財務専門官は、全国10の財務局・財務支局及び沖縄総合事務局財務部において採用される国家専門職である。大蔵省の財務省移行に伴い、財務局は財務省の地方支分部局に移行した経緯がある。移行前の名称は大蔵省財務局であった。それらの経緯から現在でも、財務省の総合出先機関としての役割だけでなく、金融庁の事務委任など、大蔵省接待汚職事件で分離されてしまった財政機能と金融機能の両方を備えることとなっている。財政と金融のプロフェッショナルとして採用され、財務省と金融庁への出向がある。
国税専門官
高卒者が対象の税務職員採用試験に比べ、大卒者が対象の制度設計からして国家公務員Ⅱ種採用である[6]。また、前者が幹部職員への登竜門となる税務大学校本科を選抜試験によって受講させるのに対し、彼らは一定の実務経験の後に自動的に同校専科への入校を命ぜられるため[7][8]、税務署課長クラス(国税局では課長補佐級に該当)への発令が1年早くなる点では若干有利となる。ただし、その後は肩が並んだ本科修了生と実力主義によって本人の能力次第で昇任し、加えて上がりポストが国税局内のうち極一部の部長ポスト(東京国税局調査第三部長等)のため、他の大卒程度国家専門職試験に比べノンキャリア寄りである。
気象庁職員
大卒程度国家総合職試験(旧国家公務員採用I種試験)に合格して採用された気象庁技官や気象庁事務官以外にも、気象大学校学生採用試験を経て同校大学部を卒業した技官が本庁課長、管区気象台長[9]、地方気象台長[10]等への昇任が想定されているが[11]、2021年1月5日に同校OBの木俣昌久が第2代気象防災監(局長級・指定職3号)に就任した[12]。しかし、同格の次長およびトップの長官への補職の事例はなく、依然としてその後の最高幹部はキャリアによって占められている。
海上保安官
海上保安大学校学生採用試験を経て同校本科を卒業した海上保安官は、従来局長級の次長もしくは海上保安監[13](いずれも指定職3号)が限界とされていたところ、OBの佐藤雄二が海上保安庁長官(次官級、指定職7号)を2013年8月1日に充てられた結果[14][15]、正式に総合職(旧I種)試験合格者から海上保安大学校本科卒業者(通称:「若葉」)へシフトされた[16]。これにより、本科卒業者はキャリアにより近い進路を経ることになり、海上保安官採用試験より一等海上保安士として採用された同校初任科修了生が、準キャリアの目標として指定職2号の本庁部長や管区海上保安本部長等を想定されている[17]。海上保安学校出身者が特修科に選抜された場合も、前述の警察庁の推薦制度同様に準キャリアの形態として歩むが、立身出世して本庁首席監察官や海上保安学校長になる事例は存在するものの[18][19]、同じ一等海上保安監(甲)の階級とは言えど指定職に就くのは困難である[20][21]。
脚注
注釈
出典
- ^ 警察庁警察官(スペシャリスト候補)採用案内、警察庁HP。
- ^ 「前石川県警本部長の細田正氏が宮城県警本部長に就任「サイバー空間に隠れている犯罪を検挙」抱負語る」『TBC東北放送』2024年4月26日。2025年4月15日閲覧。
- ^ 「宮城県警の細田本部長、警視監に昇格へ 公安委・31日付」『河北新報』2025年1月18日。2025年4月15日閲覧。
- ^ 神一行著、『警察官僚』参照
- ^ 一般職試験(技術系)【プロフェッショナル候補情報通信職員】採用について警察庁HP
- ^ “国税専門官採用案内パンフレット2025”. 国税専門官採用案内パンフレット及びポスター. 国税庁. 2025年8月30日閲覧。
- ^ “専科|研修|税務大学校|国税庁”. www.nta.go.jp. 国税庁. 2025年8月30日閲覧。
- ^ “国税専門官採用試験採用者の研修フローチャート”. 人事・研修制度. 国税庁. 2025年8月30日閲覧。
- ^ “梶原 靖司-気象大学校”. www.mc-jma.go.jp. 気象大学校. 2025年8月29日閲覧。
- ^ “永田 眞一-気象大学校”. www.mc-jma.go.jp. 気象大学校. 2025年8月29日閲覧。
- ^ “卒業後の進路-気象大学校”. www.mc-jma.go.jp. 気象大学校. 2025年8月29日閲覧。
- ^ “国際防災・人道支援フォーラム 2022” (PDF). 人と防災未来センター. p. 3 (2022年1月26日). 2024年2月21日閲覧。
- ^ 旧警備救難監
- ^ “国土交通省、事務次官に増田優一国土交通審議官…自動車・田端氏、海事・森重氏”. レスポンス(Response.jp). 2020年4月7日閲覧。
- ^ “佐藤雄二氏(59)”. 日本経済新聞 (2013年8月13日). 2020年4月7日閲覧。
- ^ “海上保安庁パンフレット日本語版(PDF形式:26.6MB)”. 海上保安庁パンフレット. 海上保安庁. 2025年8月30日閲覧。
- ^ “海上保安⼤学校(初任科)”. 海上保安庁総務部教育訓練管理官付試験募集係. 2024年4月28日閲覧。
- ^ “学校長挨拶|京都府舞鶴市 海上保安学校”. www.kaiho.mlit.go.jp. 海上保安学校. 2025年8月30日閲覧。
- ^ “学校長挨拶 | 海上保安学校”. www.school.kaiho.mlit.go.jp. 海上保安学校 (2025年4月). 2025年8月30日閲覧。
- ^ 令和7年度より、海上保安学校長が指定職2号俸に格上げされた。
- ^ “級別定数等に関する内閣総理大臣への意見”. 指定職俸給表の適用を受ける職員の号俸の定め並びに職務の級の 定数の設定及び改定に関する意見(令和7年度). 人事院 (2025年3月31日). 2025年8月30日閲覧。
関連項目
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