コルラ (巡礼)とは? わかりやすく解説

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コルラ (巡礼)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/02/21 21:21 UTC 版)

数珠を携えてボダナートをコルラする女性たち。一人はマニ車を回している。ネパールカトマンドゥ
カワカルポ英語版梅里雪山の主峰)をコルラする巡礼者たち。標高4,800メートルを超える峠を6つ越え、12日かけて240キロの山道を歩く。
五体投地カイラス山をコルラする巡礼者。
シガツェタシルンポ寺の巡礼ルート。マニ車が並ぶ。

コルラ(チベット文字སྐོར་རワイリー方式skor ra, THL英語版: kor ra)は「ぐるりと回り歩くこと[1]」を意味するチベット語であり、同時に宗教的行為を表す。コルラはチベット仏教、あるいはボン教における巡礼のひとつの形であり、一種の瞑想的儀式、実践である[1]。コルラは聖地や神聖視される自然物、人工物の周りを実践者がぐるりと歩くことで完遂され、通常この行為は巡礼のなかの一部として、または式典や祭事、儀式の一部として行われる。広義ではチベット文化圏で行われる巡礼すべてを指してコルラと呼ばれる。

コルラの定義

チベット人は「巡礼」を「ネコル」(チベット文字གནས་སྐོརワイリー方式gnas skor)と表す。文字通りに取るならばこの語は「住処の周りを回る」という意味で、すなわちチベット人にとって巡礼とは自らが聖地と関係する手段としてその周りをぐるりと回ることを意味する。コルラという文脈の中では「ネコル」の「ネ」は「力を与えられた物」、「神聖な物」であり、その周りを回る者に変化を与える能力があると信じられている。また一部の自然や人工物はイシュタデーヴァター (仏教)英語版ダキニといった人あらざる者の住処であると考えられている[2][3][note 1]

「ネ」、すなわちチベット文化における聖地は一般的に以下の4つのパターンに分類することができる。

コルラの実践者は「ネコルワ」(チベット文字གནས་སྐོར་བワイリー方式gnas skor ba、ネを回る者)と呼ばれる。つまり旅の中で聖地をぐるりと回る儀式を行っているものは誰でも「ネコルワ」である[13]。コルラは功徳を積むための主だった手段のひとつであり、巡礼者はそのためにコルラを実践する。より力の強い聖地をめぐることでより大きな功徳が得られると考えられている[3]。コルラは歩くことで成される場合もあれば、五体投地を繰り返すことで成される場合もある。ただ歩くよりも五体投地によるコルラの方が、また一周だけのコルラよりも多く回る方が、または縁起のよい数字の回数コルラする方が大きな功徳を積むことができるとされている。コルラはマニ車を回しながら、マントラを唱えながら、数珠を数えながら行われる場合もある。仏教徒は通常太陽の巡りに倣って時計回りにコルラする[14][15]。一方ボン教徒は反時計周りにコルラする。

脚注

  1. ^ 例えばカイラス山、ラプチ(ネパール東部の山)、ツァリ(Tsari、チベット南東部)、は全てコルロ・デムチョク(チャクラサムバラ英語版)のネ(住処、宿る場所)であると考えられている。具体的にはカイラスは[4]彼の体が宿る場所であり、ラプチは彼の言葉が、ツァリは彼の精神の宿る場所である。さらにこれらカイラス、ラプチ、ツァリの3カ所は同時に、それぞれ白い獅子の頭のダキニ、トラの頭のダキニ、黒いメス豚のダキニのネであるとされている[5]カム(チベット東部)ではカワカルポ(梅里雪山の主峰)がコルロ・デムチョクのネの東端と考えられている。
  2. ^ いくつかの峰は「ネリ」(néri)に分類される。「ネリ」は「山の住処」と翻訳され、ネリとされる山には名前にも「ネリ」が冠される。チベットではほとんどの山になんらかの神が宿るとされているが、その中でも「ネリ」に分類される峰はわずかである。例えば、カワカルポはしばしばネリ・カワカルポと呼ばれ、ツァリのダクパ・シェルリ(Dakpa Shelri)はしばしばネ・ダクパ・シェルリと呼ばれる[5]

参考文献

  1. ^ a b QUEENS MUSEUM. “Kora: A Meditation on Pilgrimage”. QUEENS MUSEUM. 2016年11月18日閲覧。
  2. ^ Huber, Toni (1997). “Guidebook to La-Phyi”. In Lopez, Jr., Donald S.. Religions of Tibet in Practice. pp. 120–134. ISBN 978-0691011837. 
  3. ^ a b c Dowman, Keith (1998). “Power Places”. The Sacred Life of Tibet. pp. 147–188. ISBN 978-0722533758. http://www.keithdowman.net/books/st.htm. 
  4. ^ https://books.google.com/books/about/The_sacred_mountain.html?id=fafXAAAAMAAJ&redir_esc=y
  5. ^ a b Huber, Toni (1999). The Cult Of Pure Crystal Mountain: Popular Pilgrimage and Visionary Landscape in Southeast Tibet. Oxford University Press. 
  6. ^ Snelling, John. (1990). The Sacred Mountain: The Complete Guide to Tibet's Mount Kailas. 1st edition 1983. Revised and enlarged edition, including: Kailas-Manasarovar Travellers' Guide. Forwards by H.H. the Dalai Lama of Tibet and Christmas Humphreys. East-West Publications, London and The Hague. ISBN 978-0856921735
  7. ^ Kailash, the White Mountain”. Rangjung Yeshe Wiki英語版. 2016年11月18日閲覧。
  8. ^ Lapchi”. Rangjung Yeshe Wiki英語版. 2016年11月18日閲覧。
  9. ^ Tsari”. Rangjung Yeshe Wiki英語版. 2016年11月18日閲覧。
  10. ^ Bradley Mayhew; Michael Kohn; Daniel McCrohan; John Vincent Belleza (April 1, 2011). Tibet. Lonely Planet. pp. 250–251. ISBN 978-1741792188. 
  11. ^ Jennifer Westwood (2002). On Pilgrimage: Sacred Journeys Around the World. Paulist Press. pp. 80–81. ISBN 978-1587680151. 
  12. ^ Baker, Ian (2006). The Heart of the World: A Journey to Tibet's Lost Paradise. ISBN 978-0143036029. 
  13. ^ a b Buffetrille, K. (2013). Pilgrimage in Tibet. doi:10.1093/OBO/9780195393521-0122. 
  14. ^ Linda Kay Davidson; David Martin Gitlitz (2002). Pilgrimage: From the Ganges to Graceland: An Encyclopedia, Τόμος 1. ABC-CLIO. pp. 312–313. ISBN 978-1-57607-004-8. 
  15. ^ Norbert C. Brockman (2011). Encyclopedia of Sacred Places. ABC-CLIO - 2nd Edition. pp. 53–54. ISBN 978-1-59884-654-6. 

外部リンク




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