ギャ男とは? わかりやすく解説

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ギャ男

読み方:ギャお

ビジュアル系バンド男性ファン。あるいは、ビジュアル系服装をする男性のこと。女性は「バンギャル」という。

バンギャル

(ギャ男 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/25 03:34 UTC 版)

バンギャルとは、ヴィジュアル系バンドの熱心なファンである女性を指す言葉である[1][2]

通称としてバンギャ[1]という呼称が一般的になり[2]、更にギャ[2][3]と略すこともある。

また年齢を重ねたバンギャや、長くバンギャをやっている女性をオバンギャババンギャ[2][4]、バンギャの男性版をバンギャ男[2]略してギャ男[5]と呼ぶ。

はっきりした境界線があるわけではないが、基本的には「ヴィジュアル系バンドのファンであること」が実生活及び精神的に大きなウェイトを占めている女性を指す[1]

ただし、音楽評論家の市川哲史は「90年代当時、そもそも『バンギャ』とはロック・バンド好きの女子全般を指す言葉で現在のようなヴィジュアル系バンドの限定使用ではなかった。」と指摘している[6]

歴史

ナゴム系のファンであるナゴムギャルを現在のバンギャの先祖的な存在であるとする説もある[7]

バンギャをはじめとするヴィジュアル系のファンは当初ヤンキー的だったが、次第にオタク的になっていったとされる[8]

音楽評論家の市川哲史は、90年代初期のXのライヴ会場では「バンド名やメンバー名、歌詞を背中一面に金糸で刺繍した特攻服長ランを着た連中が目立ち[9]、会場の外にはヤンキー改造車」が並んでいたと証言しており[10]、このようにヤンキー的だったヴィジュアル系のファン層が95年頃から徐々に[11]オタク的な層へと変化したのではないかと分析している[8]

音楽ライターの藤谷千明は、1996年デビューのSHAZNAの登場はまさにその象徴であったと述べ、「自分をキャラクター的に表現するというのは、現代の2.5次元的なヴィジュアル系に通じている」と主張している[12]。このような変化の要因として、市川はYOSHIKIが拠点を日本からLAへと移したことをあげている[11]

また、90年代末頃からヤンキーの聴く音楽が多様性を見せ始め、2000年代中頃からはEXILEがその人気を独占したのも要因としてあったといわれている[13]

市川は、このようなバンギャ側の変化に伴って、ヴィジュアル系バンドの側もヤンキー的なものからオタク的なものへと変化していったと結論づけている[8]

またバンギャのオタク化としては、ヴィジュアル系バンドをテーマにした同人誌制作、インターネットが一般化した2000年前後での私的ファンサイトや同人サイトの乱立、SNSやバンギャ専門の匿名掲示板の流行がその土台を強固にしたと言われている。[14]

ちなみにヴィジュアル系バンドの同人誌は、80年代後半からBUCK-TICKX JAPANLUNA SEAを中心にコアな人気は博していた。

90年代後半になるとGLAYL'Arc~en~Cielなどがヴィジュアル系の枠を超え国民的人気バンドになり、SHAZNAが社会現象となったことで、これまでヴィジュアル系には興味が無かったマンガやアニメのオタク層(いわゆるファンロード読者)も、こぞって様々なヴィジュアル系バンドの同人誌を制作し始めた。今ではジャンルの一つとして成立している。[15][14][16]

ファッション

ヴィジュアル系バンド(MALICE MIZER)のコスプレ

ファンの中には、バンドのメンバーと同じような服や、バンドの衣装を作っているブランドの同じ服を着たり、手作りをしたりといった、コスプレをする者が多い[17]。また、ゴシック・アンド・ロリータMALICE MIZER(マリス・ミゼル)とそのファンにより、サブカル界に普及しだしたともいわれている[18]

Manaによって立ち上げられたゴスロリブランドMoi-même-Moitié(モワ・メーム・モワティエ)」も、ゴスロリファッションを愛好するバンギャには大人気である。

ゴスロリや奇抜な服やファッションを専門としていたバンギャの多くは、ファッション雑誌「KERA」を愛読していた。[14]

2020年代のバンギャは、NANAの大崎ナナの様なハードロックスタイル、DEATH NOTE弥海砂の様なゴス明日、私は誰かのカノジョのゆあてゃの様な量産型・地雷系女子など、従来のわかりやすいバンギャファッションを楽しむタイプも多いが、清楚系無印良品系、ファストファッションなど自らの好きなファッションを楽しむバンギャも多い。

精神性

ヴィジュアル系バンドのファンには「メンヘラ・カルチャー」があるといわれている[19]

一方、90年代のヴィジュアル系のファンは「コスプレしてライヴ行って、開演前から円陣組んで気合い入れの雄叫びあげて、ライヴ中は撥ねて飛んでヘドバンしてストレス発散」するなど、みな思い思いにライブを健全に楽しんでおり、メンヘラといった印象を抱いたことはないと評論家の市川哲史は述べている[20]

これに対し、ライターの藤谷千明は「ヴィジュアル系における狂気や病みが変質したのも、ゼロ年代」ではないかと述べ[21]、「ヴィジュアル系が表現する闇や病みも」「<ここではないどこか>から<いまここ>になった」結果、メンヘラカルチャーが生まれたのではないかと指摘している[19]

cali≠gariMUCCを代表とする密室ノイローゼ系のバンドが、バンギャ界での「メンヘラ・病み系」派閥が生まれた元祖だとされる。

余談ではあるが、いわゆるメンヘラと呼ばれるバンギャは昭和時代から一定数おり、ヤラカシやサセンの様な異常行動を繰り返した挙句、バンドメンバーとトラブルになったり警察沙汰になったりしている。[16]

バンドの全てのライブに参加する、1枚1000円で売られているバンドメンバーのチェキを何十枚も買う、イベントに参加するために同じCDを何枚も買って積む、メンバーに高額なプレゼント(高級ブランド品や楽器)を貢ぐといったバンギャもまた、大勢いる。

他方、筋肉少女帯大槻ケンヂは「バンギャの一番好きなものは『旅』なんだ」とし、「彼女たちは『ここではないどこか』『今ではないいつか』へ行きたいの。僕も49歳の今でもそう思って生きている。仲の良い友達とずっと旅をしてたいの、バンドはそのお題目なの」と指摘している[22]

また、バンギャはバンドの見た目だけを重視し、音楽性や批評には興味を持たないと思われがちであるが、市川は「いまでもヴィジュアル系の原稿を書くたびにやたら反応がいいから、」メディア側のアプローチをうまく考えれば、ヴィジュアル系批評自体にも需要はあると感じるという[23]

バンギャを題材とした作品

エッセイ(コミック含む)

  • 大槻ケンヂによる数多のエッセイ
    • バンギャの行動や思考を題材にしたエッセイが多数ある。
  • 蟹めんま『バンギャルちゃんの日常』シリーズ[24]
    • 個人ブログ「蟹めんまのバンギャル漫画」を改題してエンターブレインから書籍化。
  • 所テン子『the秘密のバンギャルちゃん』[25]
    • 竹書房サイト「ゆるっとcafe」の連載からの書籍化。

小説・マンガ

  • 多田かおる『ミーハー♥パラダイス』
    • バンギャの夢(バンドとつながりたい)」、「バンギャあるある」、「(こんな)バンギャいるいる」をテーマにした少女漫画。
  • 楠本まきKISSxxxx
    • ヴィジュアル系バンド「DIE KÜSSE」とそのバンギャとの、平成初期を舞台としたゴシックメルヘン・ラブストーリー。
  • 由貴香織里天使禁猟区
    • 90年代を代表するヴィジュアル系アーティスト(HydeHAKUEIなど)をモデルにした耽美なキャラクターが多数登場。ストーリーもヴィジュアル系のイメージに合った天使悪魔をテーマにしたダーク・ファンタジーであり、バンギャが出てくる作品ではないがバンギャのバイブルとも言われた。
  • 由貴香織里『戒音(カイネ)』
    • ヴィジュアル系バンド「エンドルフィン」と謎の連続自殺をするバンギャ達との、ホラーミステリー。
  • 新條まゆ快感♥フレーズ
    • 世界的な人気を誇るヴィジュアル系バンド「ルシファー」のヴォーカリストと、普通の女子高生とのラブストーリー。アニメ化の際にはストーリー内のバンドを具現化したΛuciferが、実際にデビューした。
  • 灰音アサナ『少年ヴィジュアルロック』
    • 主人公がヴィジュアル系バンドのヴォーカリストかつギャ男。母親が元バンギャであり後にオバンギャ化。主人公のバンドを応援するバンギャも出てくる。

映画

  • 絵のない夢
    • ヴィジュアル系バンドのボーカリストに貢ぐため、売春するバンギャを主人公にした作品[26]

テレビ

楽曲

  • 人格ラヂオ「バンギャル症候群」[27]
  • ゴールデンボンバー「†ザ・V系っぽい曲†」[27]
    • 好きなバンドが人気が出るにつれてメイクや曲が変わっていくことに不満や淋しさを覚えるバンギャの心理が歌詞で描写されている。

バンギャ・ギャ男であることを明らかにしている有名人

  • ゴールデンボンバー(ヴィジュアル系バンド)
    • 2004年辺りのいわゆる『ネオ・ヴィジュアル系』と呼ばれる世代とそれ以後のバンドは、X JAPAN黒夢などの90年代のヴィジュアル系バンドをきっかけに、音楽やヴィジュアル系に目覚めた者が非常に多い。言い換えれば、ギャ男が自らもヴィジュアル系バンドを組んでいるという状態。
  • 柳原可奈子(お笑い芸人)
    • 自身のブログ上で、ヴィジュアル系バンドPIERROTの解散について述べた際に、自分のことを「オバンギャ」と発言した[29]
  • 東海林のり子
    • X JAPANのTOSHIのラジオ番組にゲストとして参加したことで、ヴィジュアル系の音楽と世界に目覚める。後日、出演していたおはよう!ナイスデイにてバンギャを特集したところ、大きな反響を呼ぶこととなった。
  • 浅井博章
    • ラジオDJ。90年代の頃からヴィジュアル系に関心を持ち、ヴィジュアル系音楽専門のラジオ番組(NACK5BEAT SHUFFLE』)のDJと、バンギャのための音楽イベントを担当している。

バンギャ系雑誌

  • Cure(キュア)
    • インディーズのヴィジュアル系バンドを数多く扱う専門誌。
  • KERA
    • バンギャを対象としたファッションを扱う[30]

脚注

  1. ^ a b c 「お父さんのためのヴィジュアル系キーワード講座」『音楽誌が書かないJポップ批評27 X JAPANと「ヴィジュアル系」黄金伝説』宝島社、2003年7月、114頁。ISBN 4-7966-3382-0 
  2. ^ a b c d e 『ヘドバン』シンコーミュージック・エンタテイメント、2013年、159頁。 ISBN 978-4-401-63846-8 
  3. ^ バンギャの切なく重い愛!? Presented by ゆるっとcafe”. ライブドア. 2011年10月30日閲覧。
  4. ^ バンギャ”. 日本語俗語辞書. 2011年11月30日閲覧。
  5. ^ マキシマム ザ ホルモン観客限定ライブ、今度はアニメ系コスプレ、顔面ストッキング、V系バンギャ
  6. ^ 市川 & 藤谷 2018, p. 344.
  7. ^ 市川 & 藤谷 2018, p. 365.
  8. ^ a b c 市川 & 藤谷 2018, p. 12.
  9. ^ 市川 & 藤谷 2018, p. 25.
  10. ^ 市川 & 藤谷 2018, pp. 25–26.
  11. ^ a b 市川 & 藤谷 2018, p. 29.
  12. ^ 市川 & 藤谷 2018, p. 32.
  13. ^ 市川 & 藤谷 2018, pp. 37–42.
  14. ^ a b c 『「バンギャルちゃんの日常」シリーズ』エンターブレイン、KADOKAWA、ホーム社、ぶんか社、2012年。 
  15. ^ 『別冊宝島821 音楽誌が書かないJポップ批評27 X JAPANと「ヴィジュアル系」黄金伝説』別冊宝島、2003年6月28日。 
  16. ^ a b 『BAMBOO ESSAY SELECTION 「the秘密のバンギャルちゃん」』竹書房、2013年。 
  17. ^ 大島 & 杉江 2013, pp. 32–34.
  18. ^ 香山侑子、茂木龍太、兼松祥央、鶴田直也、三上浩司、近藤邦雄「ゴシック&ロリータ調の衣服デザイン支援手法の提案(CG・アニメ,映像表現・芸術科学フォーラム2016)」『映像情報メディア学会技術報告』第40巻第11号、2016年3月27日、253–256頁、doi:10.11485/itetr.40.11.0_253 
  19. ^ a b 市川 & 藤谷 2018, p. 288.
  20. ^ 市川 & 藤谷 2018, pp. 288–289.
  21. ^ 市川 & 藤谷 2018, p. 291.
  22. ^ 藤谷千明 (2015年3月5日). “V系バンドマンたちが“オーケン”をアツく語る! 「大槻ケンヂ リスペクト座談会」”. ぴあ. 2018年10月22日閲覧。
  23. ^ 市川 & 藤谷 2018, p. 103.
  24. ^ 世代を超えたV系愛! “ロッキンママ”東海林のり子&『バンギャルちゃんの日常』蟹めんま対談”. ウレぴあ総研. p. 1. 2014年5月24日閲覧。
  25. ^ a b c 【漫画】V系ファン女子の熱すぎる生き様!「バンギャルちゃんの日常」”. ウレぴあ総研. p. 1. 2014年5月24日閲覧。
  26. ^ 絵のない夢”. 映画.com. 2011年10月30日閲覧。
  27. ^ a b 市川 & 藤谷 2018, p. 215.
  28. ^ 市川 & 藤谷 2018, p. 362.
  29. ^ 柳原可奈子 (2006年4月13日). “ヴィジュアル系四天王世代のオバンギャでごめんなさい”. 柳原可奈子公式ブログ 泳ぐジッポとルードボーイ. 2013年6月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年11月25日閲覧。
  30. ^ 男装したい女子のためのファッション本”. エキサイト. 2011年11月25日閲覧。

参考文献

関連項目



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