ギア-GEAR-
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/18 11:19 UTC 版)
『ギア-GEAR-』(ギア)は、日本で公演されている演劇作品である。京都府京都市のギア専用劇場(アートコンプレックス1928)で公演されている。

台詞が一切無いノンバーバル演劇作品であり、マイム、ブレイクダンス、マジック、ジャグリングというパフォーマンスが取り入れられ、ギミックが多く取り入れられた舞台セット、レーザー光線を用いた光学的な演出などでストーリーを表現する[1][2]。
あらすじ
忘れ去られた古いおもちゃ工場では人間がいなくなった今も人間型ロボット「ロボロイド」が働き続ける。そこへ、かつて工場の製品であったおもちゃの人形「ドール」が現れる。ロボロイドは異物に対する解析機能によりドールと交流し、そしてドールはロボロイドたちとの「遊び」を通じて、少しずつ人間に近づいていく。ところが楽しい時間もつかの間、工場では大暴走が起こってしまう。
概要

大きさや形、色の異なる歯車が噛み合い、大きなうねりを生み出す日本独特の和の文化である調和を産み出すとの意味で「ギア」と命名された[1]。あえて人間役を登場させずにロボットと人形を描くことで、このAI時代に改めて「人間」とは何か?を問う作品になっている。
基本的には専用の劇場で公演が行われ、技巧の凝らされたセット、演者の動き、パフォーマンス、光学、音響、風までも使ったギミック[3]でストーリーを表現する、台詞の無いノンバーバル演劇で、公演時間は90分程度[4][5]。言語の壁がない[3]ため、外国人や子どもも楽しめる内容となっており、4歳未満の幼児が入場できるキッズデーも設けられている[6]。
2010年1月にトライアウト公演開始(大阪・道頓堀studioZAZAなど5公演)。その後2012年4月からは、京都の1928ビル(旧:大阪毎日新聞社→毎日新聞社京都支局)にある客席数100席(現在は72席)[7][4]の「アートコンプレックス1928」を『ギア-GEAR-』ロングラン公演の専用劇場とし[8][9][10]、2024年8月現在も公演を続けている[6]。
ロングラン公演は、当初は振るわなかったものの、口コミやリピーターにより2015年6月には1000回を達成、来場者数は小規模な劇場ながら同年10月に7万人を越えた。[11]。2022年4月に京都ロングラン10周年を迎え、2025年9月に公演回数5000回を達成。日本オリジナルコンテンツのロングラン記録として5000回を数えるのは初めてとなる。累計観客動員数は34万9千人を超えている。[12][13][14]。
2012年以降、中国、タイ等での海外イベントに参加し公演を行っているほか、2015年11月から2016年4月にかけて、ロシアのモスクワで海外公演も行われた[8]。
2017年12月22日から、関東進出のロングラン公演として、千葉県千葉市中央区の千葉ポートスクエア内「千葉ポートシアター」で『ギア-GEAR- East Version』[15][16]を開始した(初日はこけら落とし公演)。主催・運営はラオックス、後援は千葉市、bayfm。2019年9月29日に公演回数601回をもって終了した(再開時期未定[17]。2021年5月現在、施設内には本作品の一部看板が残っている)。
特徴
本作品は、歌舞伎が「歌・舞・伎(芝居)・外連(けれん)」などが見事に融合して作られている複合芸術(=コンプレックスアート)であることをヒントに、それらの要素を現代アートに変換して創作されている。他にも歌舞伎の影響を受けている点が多くあり、並木正三によって作られた歌舞伎の「盆」(廻り舞台)に着想を得て舞台中央にはロータリングステージが設けられている。また同じ演目でも役者が異なることがある歌舞伎と同様、本作品でも総勢32人のキャストがおり、1万通り以上の組み合わせがある[18]。プロデューサーの小原啓渡が大学中退後、インド放浪の末に行き着いた禅思想が本作品のベースにもなっている[19]。
舞台公演では珍しく、特定の演出家を置かず、「御客様」を音読みした「オン・キャクヨウ」という架空の人物の名前が、演出家としてクレジットされている。これはロングラン公演にあたり、観客からのフィードバックを重視し演出等を改善しているため[4]。
技術面では、 2006年頃からプロジェクションマッピングを先駆的に実施するほか、最大1600万色のレーザー光線による演出や遠隔操作により色を変えるLEDドレス、強風を巻き起こす巨大な扇風機を用いた仕掛けなどが特徴である[20]。
評価
台詞のない非言語の表現を特徴とした演劇作品であるため、外国人の観客も多く、これまでに世界90カ国以上から観客が来場した[21]。TripAdvisorによる「外国人に人気の日本の観光スポットランキング 2015」19位にランクイン[4][2][22]。
日本オリジナル作品・同一劇場でのロングラン上演としては初の14年目に突入し、これは現在公演中のブロードウェイ作品と比較すると『ウィキッド』『ブック・オブ・モルモン』に次ぐ記録に相当する[21]。
国籍、人種関係なく子どもから大人まで幅広い層をターゲットとしており、客層は家族連れも多く、リピート率は2割ほど[19]。夜の観光コンテンツが少ないと言われる京都において、本作品は新たな体験型観光コンテンツとしても注目されており、デービッド・アトキンソン著『新・観光立国論』(東洋経済新報社、2015年)にて、日本で注目される新たな取り組みの事例として紹介されている。
受賞歴
- 2013年:京都府文化ベンチャーコンペティションにおいて近畿経済産業局長賞、京都銀行賞をダブル受賞[23]
- 2016年:京都創造者大賞2016(アート・文化部門)[2]
- 2018年:「はなやかKANSAI魅力アップアワード 関西インバウンド大賞」を受賞[24]
- 2020年:京都府「京都夢実現プラン」推進特別賞を受賞[25]
キャスト
公演によって、配役がその都度変わる。ここでは過去に出演したことのあるキャストを記す(順不同)
- いいむろなおき
- 岡村渉
- 谷啓吾
- 大熊隆太郎
- ROBI
- TAE
- 達矢
- YOPPY
- たっちん
- じゅんいち
- Chibanasty
- ユウタ
- JO
- 兵頭祐香
- 佐々木ヤス子
- 中村るみ
- 安東利香
- 山根明莉
- 芳本紗良
- 松田有生
- やまさきそら
- SHUMPEI
- ユキ
- せとな
- 楓奏
- 酒田しんご
- Ren
- 渡辺あきら
- 深河晃
- 宮田直人
- Mal
- 石水タヰキ
公演概要
- 2010年 1月 - 2011年 12月:道頓堀studioZAZA(大阪・心斎橋)、 クリエイティブセンター大阪(大阪・ 住之江区)、ハウステンボス(長崎)、アートコンプレックス1928(京都)の計5カ所でトライアウト公演を開催[8]。
- ver.1 (2012年4月 - 7月) アートコンプレックス1928にて、小劇場ロングラン公演を開始[6][8]。
- ver.2 (2012年9月 - 2013年2月) [8]
- ver.3 (2013年5月 - 2015年8月) [8]
- ver.4 (2015年9月 - 2020年3月)[8]
- ver.5 (2020年8月 - )[8]
その他公演
- 2012年 2月24日 - 26日:日中国交正常化40周年記念事業「元気な日本展示会」上海会場(中国・上海市)[2]
- 2012年 9月9日:第2回ALL関西フェスティバル in バンコク(タイ・バンコク)[26]
- 2014年 2月22日 - 23日:第3回ALL関西フェスティバル in クアラルンプール(マレーシア・クアラルンプール)
- 2014年 11月22日 - 23日:第14回マカオ・フード・フェスティバル 関西村ステージ(中国・マカオ)
- 2015年 2月7日 - 8日:ALL関西フェスティバル in シンガポール(シンガポール)
- 2015年 11月 - 2016年4月:ロシア公演 [8]
- 2017年 12月22日 - 2019年9月29日:『ギア-GEAR- East Version』公演(千葉県千葉市・千葉ポートスクエア「千葉ポートシアター」)
- 2019年 8月11日:2019 New Taipei City Children Art Festival(台湾・新北市)
脚注
- ^ a b “京都の感動エンターテイメント ギア-GEAR- 『ギア』とは”. GEAR. 2017年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月5日閲覧。
- ^ a b c d e “京都創造者大賞2016 アート・文化部門 アートコンプレックスグループ”. 京都ブランド推進連絡協議会 (京都府、京都市、京都商工会議所). 2017年6月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月5日閲覧。
- ^ a b “京都で活気づく「ノンバーバル舞台劇」 国境・年齢を超える“わかりやすさ”p.1”. msn産経ニュースwest. (2013年2月2日). オリジナルの2014年9月11日時点におけるアーカイブ。 2017年3月5日閲覧。
{{cite news}}
:|accessdate=
、|date=
の日付が不正です。 (説明)⚠ - ^ a b c d “外国人に人気!日本発・日本初ノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』”. 日本の歩き方 (株式会社地球の歩き方T&E). 2017年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月5日閲覧。
- ^ 「90分」は日経MJの2016/11/18、中本千晶のコラム、「中本千晶のレビューれびゅー」による。
- ^ a b c “京都の感動エンターテイメント ギア-GEAR- チケット”. GEAR. 2017年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月5日閲覧。
- ^ “ギア専用劇場”. CoRich 舞台美術! (2013年2月2日). 2025年9月1日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j “京都の感動エンターテイメント ギア-GEAR- 講演履歴”. GEAR. 2016年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月5日閲覧。
- ^ “アートコンプレックス 1928 1928の紹介”. アートコンプレックス 1928. 2016年3月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月5日閲覧。
- ^ “京都の感動エンターテイメント ギア-GEAR- 劇場紹介”. GEAR. 2016年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月5日閲覧。
- ^ “『ギア -GEAR-』本日14時公演にて、京都ロングラン公演来場者数7万人突破!”. ART COMPLEX. 2016年10月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月5日閲覧。
- ^ “無期限ロングランは日本初! 言葉を用いらずに表現する舞台『ギア-GEAR-』6年目に突入”. ART COMPLEX (プレスリリース)/ソーシャルワイヤー. 2017年4月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年4月27日閲覧。
- ^ 才本淳子 (2025年9月11日). “京都「ギア」 通算5千回公演 日本オリジナルコンテンツとして初”. 朝日新聞デジタル. 2025年9月18日閲覧。
- ^ “ギア専用劇場(ART COMPLEX 1928)”. KYOTO ARTBOX. 2025年9月2日閲覧。
- ^ 『ギア-GEAR-』East Version、12月22日公演スタート!! - ウェイバックマシン(2018年3月4日アーカイブ分)
- ^ OGINO. “ノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』が12月から新設の千葉ポートシアターでイーストバージョンのロングラン開始”. 2019年8月28日閲覧。
- ^ “千葉ポートスクエア・ポートサークル”. 千葉ポートスクエア. 2021年5月5日閲覧。
- ^ “『ギア-GEAR-』専用劇場”. じゃらん. 2025年9月2日閲覧。
- ^ a b “【実は知らないお仕事図鑑 P6:『ギア -GEAR-』プロデューサー】小原啓渡”. ANTENNA. 2025年9月1日閲覧。
- ^ “有限会社一九二八(ギア-GEAR-)(京都企業紹介)”. 京都府. 2025年9月2日閲覧。
- ^ a b “AIの時代に問う「人間とは何だ」ーー京都発の一切セリフを使わない舞台『ギア-GEAR-』通算4,900回公演を達成”. SPICE (2025年6月24日). 2025年9月18日閲覧。
- ^ “トリップアドバイザー、「外国人に人気の観光スポット2015」を発表”. PR TIMES. 2025年9月2日閲覧。
- ^ “ART COMPLEXについて”. ART COMPLEX. 2025年9月10日閲覧。
- ^ “「ギア」にインバウンド大賞”. 京都新聞 (2018年3月7日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ “京都府特別功労表彰等の受賞者の決定について”. 京都府 (2020年6月9日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ 2012、『第2回 ALL関西フェスティバル in バンコク」の開催について』、ALL関西『食』輸出推進委員会 (大阪商工会議所、大阪府、関西経済連合会、新関西国際空港株式会社)
外部リンク
- ギア-GEAR-公式サイト
- ART COMPLEX - 企画制作。リッジクリエイティブ株式会社、代表取締役は小原啓渡(サイト内「About」)。
- ギア -GEAR- East Version - ウェイバックマシン(2019年8月28日アーカイブ分)
- ギア-GEARのページへのリンク