カルデア神託
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/02 08:19 UTC 版)
『カルデア神託』(カルデアしんたく、英: Chaldean Oracles、古希: λόγια Χαλδαικά[1])または『カルデア人の神託』は、ローマ帝国期の2世紀に古代ギリシア語で書かれた書物。カルデア人(バビロニア人)が授かった神秘主義的・秘教的な神託を記した書物。テウルギア(神働術)の初出[2]。新プラトン主義哲学者のイアンブリコスらに重視された[1]。
成立
マルクス・アウレリウス・アントニヌス帝の治下、カルデア人ユリアノス(英: Julian the Chaldean)と、その息子の神働術者ユリアノス(英: Julian the Theurgist)、あるいは後者一人が、トランス状態(変性意識状態)のときに授かった神託の記録とされる[1]。「カルデア人」は東方的な魔術の達人の代名詞だった[3]。
内容
ヘクサメトロンの韻文集であり、複数の断片のみが現存する[1][3]。相矛盾する箇所もあり[1]、一貫した教説は読み取りづらい[3]。
父なる神[3][4]、天使[3]、知性(ヌース)[4]、世界霊魂[4]、ヘカテー[3][4]、レアー[4]、イウンクス[4]などが登場する。同時代のグノーシス主義や中期プラトン主義との関連性も窺える[5]。「テウルギア」(神働術)は本書の造語である[2]。
受容
古代末期、イアンブリコス派の後期新プラトン主義において重視された。イアンブリコスのほか[1]、プロクロス[6]、ダマスキオス[7]が註解を書いたが、いずれも現存しない。
ビザンツ期には、ミカエル・プセロスが本書をヘルメス文書とともに重視した[8]。ルネサンス期にはフィチーノ、ピコ、パトリツィらが受容した[8]。近代にはアニー・ベサントら神智学者が重視した[8]。
関連項目
脚注
- ^ a b c d e f 堀江 1998, p. 101.
- ^ a b 堀江 1998, p. 109f.
- ^ a b c d e f 藤巻 & 岡田 2012, p. 400f.
- ^ a b c d e f 堀江 1998, p. 102-109.
- ^ 堀江 1998, p. 102.
- ^ 堀江聡; 西村洋平 著「プロクロス」、水地宗明; 山口義久; 堀江聡 編『新プラトン主義を学ぶ人のために』世界思想社〈学ぶ人のために〉、2014年。ISBN 9784790716242。196頁。
- ^ 國方栄二 著「ダマスキオス」、水地宗明; 山口義久; 堀江聡 編『新プラトン主義を学ぶ人のために』世界思想社〈学ぶ人のために〉、2014年。ISBN 9784790716242。231頁。
- ^ a b c 藤巻 & 岡田 2012, p. 398f.
- ^ 堀江 1998, p. 112.
参考文献
- 藤巻一保; 岡田明憲『東洋秘教書大全』学研パブリッシング、2012年。ISBN 978-4-05-405433-2。
- 堀江聡 著「『カルデア神託』と神働術」、水地宗明 監修、新プラトン主義協会 編『ネオプラトニカ 新プラトン主義の影響史』昭和堂、1998年。ISBN 9784812298169。
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