オキシ塩化ビスマス
塩化酸化ビスマス
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/19 01:20 UTC 版)
塩化酸化ビスマス | |
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別称
オキシ塩化ビスマス
塩化ビスムチル 塩化酸化ビスマス(III) 塩化蒼鉛土(ビスモクライト) |
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識別情報 | |
3D model (JSmol)
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ChemSpider | |
ECHA InfoCard | 100.029.202 |
EC番号 |
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PubChem CID
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UNII | |
CompTox Dashboard (EPA)
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特性 | |
化学式 | BiClO |
モル質量 | 260.43 g mol−1 |
外観 | 真珠のような暈色を持つ白色光沢の結晶Lustrous |
密度 |
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水への溶解度 | 無視できるほど小さい |
溶解度 | 酸に可溶 |
構造 | |
正方晶系, tP6[2] | |
P4/nmm, No. 129 | |
a = 0.3887 nm, c = 0.7354 nm
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危険性 | |
GHS表示: | |
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Warning | |
H315, H319, H335 | |
P261, P264, P271, P280, P302+P352, P304+P340, P305+P351+P338, P312, P321, P332+P313, P337+P313, P362, P403+P233, P405, P501 | |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
塩化酸化ビスマス(えんかさんかびすます、英: bismuth oxychloride)は化学式BiOClで表されるビスマスの無機化合物。別称オキシ塩化ビスマス。白色の光沢を持つ固体であり、古代エジプトなど古代から用いられてきた。板状構造の光の干渉により、真珠のような暈色を呈する。1990年代までは、塩化ビスムチルとして知られ、またパールホワイト色の顔料としても知られていた。
構造
結晶構造は正方晶系であり、Cl-Bi-O-Bi-Cl-Cl-Bi-O-Bi-Clの順にCl−
、Bi3+、O2−イオンの層からなる。この層状でグラファイトに類似した構造により、塩化蒼鉛土(ビスモクライト)は相対的に低い硬度(モース硬度は2-2.5)を示し、他のほとんどのハロゲン化酸化鉱物も同様である[1]。
塩化酸化ビスマスの構造は、超格子を持ち、Cl-Bi-O-Bi-Cl-Cl-Bi-O-Bi-Clの順に配列したCl−
、Bi3+、O2−イオンの層からなる。(画像では、Biは灰色、Oは赤色、Clは緑色)すなわち、陰イオンと陽イオンが交互に並ぶ。このような層状構造によって、塩化酸化ビスマスは真珠光沢を呈する。
個々のイオンの配位に注目すると、中心のビスマスは歪んだ正反四角柱状の配位構造をとる。Bi原子は、正方形の面を形成し2.05 Åに位置する4つのCl原子と、他の正方形の面を形成し2.32 Åに位置する4つのO原子が配位している。O原子は、4つのBi原子と四面体形分子構造をとる[2]。
合成と反応
BiOClは、水中での塩化ビスマス(III)の加水分解によって得られる。
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BiCl
3 + H
2O → BiOCl + 2 HCl
あるいは、400℃で酸化カドミウムと反応させることでも得られる[3]。
-
BiCl
3 + CdO → BiOCl + CdCl
2
また、600℃まで熱すると、BiOClは「アルペ化合物」と呼ばれる複雑な層状構造を持つ化合物Bi
24O
31Cl
10へと変化する[4][5]。
産出と利用
古代エジプトの時代から化粧品に用いられ、アイシャドウ、ヘアースプレー、パウダー、ネイル研磨剤などといった化粧品に真珠光沢の顔料として使われてきた[6]。BiOClの層状構造により、懸濁液は真珠層のような光学的性質を示す。化粧品における名称は、C.I. 77163.である[7]。
BiOClは、マトロカイト鉱物の一つ である塩化蒼鉛土(ビスモクライト)という希少な鉱物として自然に存在する[8]。
類似した化合物として、酸化硝酸ビスマスは白色の顔料として用いられる。
出典
- ^ a b Anthony, John W.; Bideaux, Richard A.; Bladh, Kenneth W. et al., eds. “Bismoclite”. Handbook of Mineralogy. III (Halides, Hydroxides, Oxides). Chantilly, VA, US: Mineralogical Society of America. ISBN 0-9622097-2-4 2011年12月5日閲覧。
- ^ a b Keramidas, K. G.; Voutsas, G. P.; Rentzeperis, P. I. (1993). “The crystal structure of BiOCl”. Zeitschrift für Kristallographie 205 (Part 1): 35–40. Bibcode: 1993ZK....205...35K. doi:10.1524/zkri.1993.205.Part-1.35. ISSN 0044-2968.
- ^ Der BibISBN-Eintrag de:Vorlage:BibISBN/3432023286 ist nicht vorhanden. Bitte prüfe die ISBN und lege ggf. einen neuen Eintrag an.
- ^ Greenwood, Norman N. [英語版]; Earnshaw, Alan (1997). Chemistry of the Elements (英語) (2nd ed.). Butterworth-Heinemann. p. 572. doi:10.1016/C2009-0-30414-6. ISBN 978-0-08-037941-8.
- ^ Eggenweiler, U.; Keller, E.; Krämer, V. (2000). “Redetermination of the crystal structures of the 'Arppe compound' Bi24O31Cl10 and the isomorphous Bi24O31Br10”. Acta Crystallographica Section B 56 (3): 431–437. doi:10.1107/S0108768100000550. ISSN 0108-7681. PMID 10877351.
- ^ Völz, Hans G. et al. "Pigments, Inorganic" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2006 Wiley-VCH, Weinheim. doi:10.1002/14356007.a20_243.pub2.
- ^ Carrasco, F. 2009. Diccionario de Ingredientes Cosmeticos(Paperback)
- ^ Bismoclite on Mindat.org
関連項目
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