エネルギーの蓄積と放出
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 21:16 UTC 版)
ばねが変形するとき、弾性エネルギーという形でエネルギーがばねに蓄えられる。蓄えられたエネルギーを放出させれば、ばねに機械的な仕事をさせることができる。この「エネルギーの蓄積と放出」という働きが、ばねの主要な特性の2つ目として挙げられる。例えば、弓によって矢を放つのは、このエネルギーの蓄積と放出を利用している。手で弦を引くことで弾性エネルギーを蓄え、手を放すことで弾性エネルギーを矢を飛ばす力に変える。ぜんまい時計では、ぜんまいに蓄えられたエネルギーを放出させながら時計が動いている。弓と比較すると、ぜんまい時計の場合は弾性エネルギーを徐々に放出させながら利用している。自動車の懸架装置用ばねの場合は、路面から伝わる衝撃をばねが受け、衝撃力をばねの弾性エネルギーに変化させて緩衝している。 ばねに蓄えられる弾性エネルギーは、その弾性変形を起こす荷重によってなされた仕事に等しい。荷重-たわみ線図では、曲線と横軸で囲まれた面積が弾性エネルギーに相当する。線形特性に限定せずに、荷重 P がたわみ δ の一般的な関数であるときは、 P(δ) を積分して、弾性エネルギー U は以下のようになる。 U = ∫ P ( δ ) d δ {\displaystyle U=\int P(\delta )d\delta } 線形特性のばねであれば、囲まれる面積は三角形となるので U = P δ 2 = k δ 2 2 = P 2 2 k {\displaystyle U={\frac {P\delta }{2}}={\frac {k\delta ^{2}}{2}}={\frac {P^{2}}{2k}}} が弾性エネルギーである。ばねが受ける荷重 P が同じなら、ばね定数 k が小さいほど吸収エネルギー U が大きくできる。鉄道車両の連結器や緩衝装置のようにばねを衝突を緩和するために使用するときは、この吸収エネルギーが大きいほど有利となる。 荷重-たわみ曲線がヒステリシスループを描く非線形特性ばねの場合では、ループで囲まれる部分の面積分のエネルギーが摩擦などで消費される。このヒステリシスによる弾性エネルギーの消費は減衰として働き、衝撃緩和の視点からは、ループで囲まれる面積が大きいほど有利となる。
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