ウィルソンループとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > ウィルソンループの意味・解説 

ウィルソンループ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/17 09:36 UTC 版)

ゲージ理論では、ウィルソンループ(Wilson loop)(ケネス・ウィルソン(Kenneth G. Wilson)に因む)は、ゲージ不変な観測量を与えられたループのゲージ接続ホロノミー英語版(holonomy)から得る。古典論では、ウィルソンループの集まりは、ゲージ変換を同一視したゲージ接続を再構成する十分な情報を構成する[1]

場の量子論では、ウィルソンループ観測量の定義は、フォック空間上の「善意の英語版(bona fide)」作用素である。(実際、ハーグの定理英語版(Haag's theorem)は、フォック空間は相互作用のある QFT に対しては存在しないという定理がある。)この定義は、数学的にはデリケートな問題であり、通常はフレーミングを持つ各々のループを備えた繰り込みが要求される。ウィルソン作用素の作用は、量子場の基本励起を作り出すことを解釈され、量子場はループへ局所化される。このようにして、マイケル・ファラデー(Michael Faraday)の「フラックスチューブ」は量子電磁気場の基本励起となる。

ウィルソンループは、1970年代に量子色力学 (QCD) の非摂動的定式化の試み、少なくとも QCD の強い相互作用の領域を扱う一連の変数記法として導入された[2]。ウィルソンループは、クォークの閉じ込めの問題を解くことを意図し考案されたが、今日、未解決のままである。

強い相互作用を持つ量子場理論は、基本的な非摂動的励起をもっているという事実は、アレクサンダー・ポリヤコフ英語版(Alexander Polyakov)により、最初の弦理論を定式化するために提唱された。これは時空での基本量子のループの伝播を記述している。

ウィルソンループはループ量子重力理論の定式化で重要な役割を果たすが、そこでは、スピンネットワークに取って変わられ(後日、スピンフォーム英語版(spinfoam)となった)、ウィルソンループの一種の一般化となっている。

素粒子物理学弦理論において、ウィルソンループ、特にコンパクト多様体の非可縮なループの周りのウィルソンループは、ウィルソンライン(Wilson lines)とよく言われる。

方程式

ウィルソンライン(Wilson line)変数 (あるいは、ウィルソンループ(Wilson loop)変数のほうがよいが、)、常に閉曲線として扱うので、C に沿って動くゲージ場 経路順序べき英語版(path-ordered exponential)のトレースにより定義された次の量である。

ここに、 は空間内の閉曲線であり、経路順序英語版(path-ordering)作用素である。ゲージ変換

,

であり、ここに は、ループの単に起点と終点に対応する(ラインの起点と終点のみが寄与することに対し、間にあるゲージ変換は互いにキャンセルする)。たとえば、SU(2) ゲージに対し、 となる。 の任意の実函数であり、 は 3つのパウリ行列(Pauli matrices)で、和は通常の繰り返しのインデックスを渡る和を意味する。

巡回置換(cyclic permutation)の下のトレースの不変性は、ゲージ変換の下で不変であることを保証する。トレースを取る量は、ゲージリー群の元で、ロレースは実際、無限に多い既約表現の指標に関して、この元の指標であることに注意する。このことは、作用素 が「トレースクラス」(従って、純粋離散スペクトル)へ限定するべきではないが、一般には通常通りエルミート的(数学的には自己随伴)である。詳しいは、最終的に観測している量はこのトレースであるので、どのループ上のどの点を起点とするかは問題ではない。それらの点はすべて同一の値を与える。

実際、A を主 G-バンドル上の接続形式とみなすと、上の方程式は実際、リー群 G の元を与えるループを回る単位元の平行移動と理解すべきである。

経路順序べきは、物理で共通に使われる便利な記法であるが、数学的な作用素の公正な値を秘匿している。数学者は接続の順序べきを「接続のホロノミー」として選び、ウィルソンループが満たすべき平行移動の微分方程式として特徴付けるであろう。

T=0 では、クォークの閉じ込め、あるいはゲージ不変な量子場理論の閉じ込めを解くこと、すなわち、変数が値の増加する「領域」か、ループの「周り」で逆になるかに従って、ウィルソンループ変数が特徴付けられる(「領域の中の法則」か「半径の法則」としても知られる「周囲の法則」となるか)。

有限温度の QCD において、ウィルソンループの熱的期待値は、と閉じ込められたハドロン相と場の閉じ込めの解かれた状態、つまりクォークグルーオンプラズマとを識別する。

参照項目

参考文献

  1. ^ Giles, R. (1981). “Reconstruction of Gauge Potentials from Wilson loops”. Physical Review D 24 (8): 2160. Bibcode1981PhRvD..24.2160G. doi:10.1103/PhysRevD.24.2160. 
  2. ^ Wilson, K. (1974). “Confinement of quarks”. Physical Review D 10 (8): 2445. Bibcode1974PhRvD..10.2445W. doi:10.1103/PhysRevD.10.2445. 

ウィルソンループ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 15:23 UTC 版)

チャーン・サイモンズ理論」の記事における「ウィルソンループ」の解説

チャーン・サイモンズ理論観測量は、ゲージ不変作用素の n-点相関函数である。ゲージ不変作用素で最も良く研究されているゲージ不変作用素は、ウィルソン作用素である。ウィルソンループは M の中のループのホロノミーであり、G のリー群の表現 R の中の軌跡となる。ウィルソンループの積に注目すると、一般性を失うことなし既約表現 R が問題となる。 さらに具体的に言うと、既約表現 R と M のループ K が与えられるとウィルソンループ W R ( K ) {\displaystyle W_{R}(K)} が次の式で定義できるW R ( K ) = Tr R P exp ⁡ i ∮ K A {\displaystyle W_{R}(K)={\text{Tr}}_{R}\,{\mathcal {P}}\,\exp {i\oint _{K}A}} ここに A は接続 1-形式であり、周回積分コーシーの主値であり、 P exp {\displaystyle {\mathcal {P}}\,\exp } は経路順序べき(英語版)である。

※この「ウィルソンループ」の解説は、「チャーン・サイモンズ理論」の解説の一部です。
「ウィルソンループ」を含む「チャーン・サイモンズ理論」の記事については、「チャーン・サイモンズ理論」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ウィルソンループ」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ウィルソンループ」の関連用語

ウィルソンループのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ウィルソンループのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのウィルソンループ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのチャーン・サイモンズ理論 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS