アメリカ合衆国移民・関税執行局とは? わかりやすく解説

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アメリカ合衆国移民・関税執行局

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/04/17 05:05 UTC 版)

アメリカ合衆国移民・関税執行局
ICEのロゴ
HSI Special Agentのバッジ
EROの職員バッジ
標語 「国家安全保障の保護と公共安全の支持(Protecting National Security and Upholding Public Safety)」
HSIのモットー:名誉、サービス、インテグリティ
組織の概要
設立 2003年3月1日 (23年前) (2003-03-01)
前身機関
職員数 20,000+ (2016)
年間予算 $7.6 billion (FY 2018)[1]
管轄
活動管轄 アメリカ合衆国
本部 500 12th Street SW
ワシントンD.C.、アメリカ合衆国

運営幹部
親機関 アメリカ合衆国国土安全保障省
ウェブサイト
www.ice.gov
アメリカ合衆国移民・関税執行局ICEの本部(ワシントンD.C.

アメリカ合衆国移民・関税執行局(アメリカがっしゅうこくいみん・かんぜいしっこうきょく、英語: United States Immigration and Customs Enforcement、略称:ICE(アイス))は、2003年に、アメリカ合衆国国土安全保障省(DHS)設立に伴い旧アメリカ合衆国税関局(U.S. Customs Service)および移民帰化局(Immigration and Naturalization Service, INS)の捜査部門と国内執行部門を統合して設立された[2]、米国国土安全保障省の下部組織であり、公式サイトによると、その主たる役割は犯罪捜査および移民法(1952年の移民国籍法に2001年の愛国者法による改定を加えた法システム)の執行を通じてアメリカ合衆国を守り国家安全保障と公共の安全を維持することであり[3]アメリカ合衆国の移民法の執行(Immigration Enforcement)、および国境を越えて米国内で行われる犯罪との闘い(Combating Transnational Crime)である[3]。日本国内の報道等では、移民税関捜査局と呼ばれることもある[4]。約2万人の執行官(捜査官)を擁し、米国内および世界各地に約400の事務所を構えており[2](2026年現在)、ICEの主要3部門は、国土安全保障捜査局(HSI)、執行・退去業務局(ERO)、主任法律顧問室(OPLA)であり、それに加えて第4の部門である管理・運営部門(M&A)もある[2]。2026年現在の年間予算は約80億ドルであり、予算の大部分は主要3部門に充てられている[2]

概要

ICEの主たる任務は、アメリカ合衆国の安全に関する捜査(Homeland Security Investigations、HSI)および執行・排除活動(Enforcement and Removal、ERO)に集約される[5](移民および帰化業務を担当するのは市民権・移民局(CIS))。

ICEはアメリカ合衆国の大使館などの海外代表部に置くアタッシェAttaché)と連絡を密にしている。ICEは国境を巡回する訳ではなく、それはICEの姉妹機関に当たる同省の税関・国境警備局が担当している。

ICE"捜査官"は、武装し、身元を隠すためにフェイスマスクや私服を着用し、覆面車両を使用することで知られている[6][7]。組織の拡大以降、批判者からは、市民に対して法執行を拡大させるための準軍事組織と評されている[8][9][10]

きわめて暴力的な組織であり、2025年以降に少なくとも8人がICEまたはその関連機関により射殺されている。"アメリカ合衆国の安全のための組織"と公式には謳っていながら、実際にはICEが米国の正当な国民・市民を殺してしまう事件(つまり、公式の"ミッション"とは真逆で、アメリカ合衆国に危険をもたらす事件)を複数回起こしている。 特に次の2つの事件はICEに対する抗議を全米で巻き起こした

  • ICE捜査官が2026年1月にミネソタ州でアメリカ市民のRenée Nicole Goodを射殺してしまった
  • ICE捜査官が2026年1月にやはりミネソタ州でAlex Pretti(米国市民・看護師)を射殺してしまった

しかも、ICEの職員は正当な米国市民を違法に射殺する事件を起こしておいて、その経緯について正直に語らず、偽証を重ねることで知られている。

ICEは設立以来、数々の論争を引き起こしており、ドナルド・トランプ第1次および第2次トランプ政権下で批判が著しく増大した。トランプ大統領の移民政策英語版の一環として2025年に「One Big Beautiful Bill Act英語版」が可決されたことにより、ICEはアメリカ史上で最大かつ最も潤沢な予算を持つ連邦法執行機関となった。ICEによる執行行動、広報活動、戦術は、士気の低下や公的な論争を招いており、合法性英語版、説明責任、市民権に関する懸念を引き起こしている[11][6][12]。ICEは、特に2018年英語版2025年の抗議活動の対象となり[13]ICEの廃止英語版を求めている活動家もいる[14]

歴史

アメリカ合衆国移民・関税執行局は、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件を受けて、翌年の2002年に成立した国土安全保障法英語版に基づき2002年11月に国土安全保障省が成立し、さらに2003年3月1日に機構の再編成により捜査関係を集約して成立した。

おとり捜査

移民・関税執行局は、不法入国不法滞在者をあぶり出すおとり捜査も行う。たとえば、実在しない架空の大学「ファーミントン大学」のホームページを作成し、2019年までに同大学への入学を口実にビザを取得してアメリカ国内に滞在した外国人やブローカーら約250人を逮捕する極めて大掛かりな捜査を行ったことがある[15]

2025年現在:第2次トランプ政権

すべてのICE職員に告げる。諸君は職務の遂行において連邦政府による免責特権がある。諸君に手を出す者、あるいは諸君を制止、妨害しようとする者は、重罪を犯していることになる。 諸君には職務を遂行するための免責特権があり、いかなる者も――市の当局者、州の当局者、不法入国者、左翼の扇動者、あるいは国内の反乱分子であっても――諸君が法的義務および職務を果たすことを妨げることはできない。司法省は、もし当局者がその一線を越えて妨害行為、あるいは合衆国やICE職員に対する共謀罪に及ぶのであれば、彼らは法の裁きを受けることになると明言している。
スティーブン・ミラーホワイトハウス大統領次席補佐官英語版。2025年10月24日、ミッドウェイ・ブリッツ作戦英語版に関与するICE職員に対し、イリノイ州が刑事訴追を行う可能性を示唆したことへの回答として[16][17][18]
ICEと大量強制送還に反対する2025年6月ロサンゼルス抗議活動において防護盾を立てるカリフォルニア州兵英語版
アメリカ合衆国国土安全保障省より提供された、ロサンゼルスにおけるICE(移民・関税執行局)の「執行・排除業務」の画像
マンハッタンのフォーリー・スクエア第2次トランプ政権のICEと大量強制送還に対する大量強制送還抗議活動を行う人々、2025年9月

採用

第2次ドナルド・トランプ政権において、アメリカ合衆国移民・関税執行局(ICE)は採用活動を大幅に強化した。 同局は、2025年12月時点の職員数2万人から増加させ、2026年に1万人の新規職員を採用することを試みており、「戦時下の採用(wartime recruitment)」キャンペーンと呼ばれる採用活動に1年間で1億ドルを割り当てた。

国土安全保障省とホワイトハウスは、TikTokXInstagramに職員採用広告を投稿し、さらにHuluHBO MaxSnapchatSpotifyYouTubeの広告枠も購入してICEの宣伝を行っている。採用活動では、ICEによる強制送還活動を宣伝するためにインターネット・ミームオンライン・インフルエンサーが活用されている。また、UFCの試合を観戦した人々、愛国的なポッドキャストを聴取した人々、銃器やタクティカルギアに関心を示した人々を対象とした、ジオターゲティング英語版広告も利用されている。一部の広告には、白人ナショナリストのスローガンが用いられていた。

レネー・グッドの殺害

2026年1月7日ミネソタ州ミネアポリス市内でICE職員がアメリカ市民の女性レネー・グッドに発砲して死亡させる事件が発生した。政府側は正当防衛を主張したが[19]、市内では抗議デモが行われて全米各地に波及[20]。同月30日には全米350都市で店舗や学校などを休業した上での大規模抗議デモ(事実上のゼネラル・ストライキ)が行われた[21][22]

脚注

  1. Cristobal Ramón, Interior Enforcement Under the Trump Administration by The Numbers: Part One, Removals, Bipartisan Policy Project (June 19, 2019).
  2. 1 2 3 4 U.S. Immigration and Customs Enforcement”. U.S. Immigration and Customs Enforcement. 2026年3月28日閲覧。
  3. 1 2 U.S. Immigration and Customs Enforcement (ICE), Mission, Vision”. 2026年3月28日閲覧。
  4. トランプ氏、国境管理担当に米移民税関捜査局の前局長代理ホーマン氏を指名(米国)”. 日本貿易振興機構(ジェトロ) (2024年11月21日). 2025年5月22日閲覧。
  5. Enforcement and Removal Operations (U.S. Immigration and Customs Enforcement)
  6. 1 2 Levenson (2025年8月25日). Masked agents and public arrests: A closer look at ICE's increasingly aggressive tactics (英語). CNN. 2025年9月26日閲覧。
  7. Fadel, Leila (2025年7月10日). “Masked immigration agents are spurring fear and confusion across the U.S.” (英語). NPR 2025年11月22日閲覧。
  8. Filipovic (2025年9月3日). Donald Trump is creating a personal paramilitary force (英語). New Statesman. 2025年11月17日閲覧。
  9. “How government repression is born – and how to resist it” (英語). The Guardian. (2025年11月16日). ISSN 0261-3077 2025年11月17日閲覧。
  10. Frum, David (英語), How ICE Became Trump's Secret Army 2025年11月17日閲覧。
  11. Dreisbach, Tom (2023年8月16日). “Government's own experts found 'barbaric' and 'negligent' conditions in ICE detention” (英語). NPR 2025年9月26日閲覧。
  12. Popat, Shrai; Yang, Maya (2025年9月26日). “Ice officer 'relieved of duties' after video shows him manhandling woman at New York immigration court” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077 2025年9月26日閲覧。
  13. Liddell (2025年6月13日). Why anti-ICE protests are spreading across the US (英語). The Independent. 2025年9月26日閲覧。
  14. Blake (2025年7月23日). Analysis: ICE is quite unpopular – even more so than when 'abolish ICE' was a thing | CNN Politics (英語). CNN. 2025年10月11日閲覧。
  15. 250人逮捕…きっかけの大学、実は偽物 米政府が設立”. 朝日新聞 (2019年11月28日). 2019年11月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年11月28日閲覧。
  16. DHS shares Stephen Miller clip telling ICE they have 'federal immunity' (英語). FOX 9 (2026年1月14日). 2026年1月21日閲覧。
  17. “Under Trump, a Shift Toward 'Absolute Immunity' for ICE” (英語). The New York Times. (2026年1月15日). オリジナルの2026年1月18日時点におけるアーカイブ。 2026年1月21日閲覧。
  18. Rosin, Hanna (2026年1月15日). Do ICE Officers Have 'Immunity'? (英語). The Atlantic. 2026年1月21日閲覧。
  19. 抗議デモ隊が治安当局と衝突、ICE職員の発砲による女性死亡受け”. AFP (2026年1月9日). 2026年1月11日閲覧。
  20. 移民取り締まりへの抗議、全米規模に ICE発砲で女性死亡”. AFP (2026年1月11日). 2026年1月11日閲覧。
  21. 朝田賢治、西邨紘子 (2026年1月31日). ミネアポリス射殺、全米350カ所でゼネストや大規模デモ 政権に抗議”. 日本経済新聞. 2026年2月3日閲覧。
  22. 八田浩輔 (2026年1月31日). 米ミネアポリス市民射殺 氷点下のなか当局の撤退求める大規模デモ”. 毎日新聞. 2026年2月3日閲覧。

関連項目

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