I級駆逐艦 (初代)とは? わかりやすく解説

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I級駆逐艦 (初代)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/08 06:50 UTC 版)

I級駆逐艦
基本情報
種別 駆逐艦
運用者  イギリス海軍
就役期間 1911年 - 1922年
前級 H級 (エイコーン級)
準同型艦 リバー級英語版
次級 K級 (アカスタ級)
要目 (アドミラルティ型)
常備排水量 778トン (計画)
全長 75.0 m
最大幅 7.8 m
吃水 2.7 m
ボイラー 水管ボイラー×3缶
主機 蒸気タービン×3基
推進器 スクリュープロペラ×3軸
出力 13,500馬力
速力 27.0ノット
航続距離 1,900海里 (13kt巡航時)
燃料 重油178トン
乗員 72名
兵装40口径10.2cm砲×2門
40口径7.6cm砲×2門
・53.3cm単装魚雷発射管×2基
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I級駆逐艦英語: I-class destroyer)は、イギリス海軍駆逐艦の艦級[1]。当初は「アケロン」をネームシップとしてアケロン級: Acheron-class)と称されていたが、1913年に再種別された[2]

来歴

1908年4月に成立したアスキス内閣では、社会保障の財源確保のため、自由統一党以来の海軍増強計画の見直しを進めていた[3]。この流れを受けて、イギリス海軍では、1908-9年度計画のビーグル級(後のG級)、1909-10年度計画のエイコーン級(後のH級)と、コスト低減を重視した駆逐艦が建造されていた[1][2]

1910-11年度計画の駆逐艦も、エイコーン級(H級)を元にした小改正型として予定されており、これによって建造されたのが本級である。しかしこの時期、仮想敵であるドイツ帝国海軍大型水雷艇の速力は30ノットに達しており、従来のイギリス海軍の駆逐艦では劣勢となることが懸念された。このことから、イギリスの民間造船所の高い技術力に期待して、海軍本部の設計による基本型(アドミラルティ型)とは別に、設計・建造にあたって各造船所に大幅な自由裁量を許した特型(Specials)が4タイプ計9隻建造された。このアプローチは成功を収めたことから、以後のイギリス海軍でも度々用いられることになった[1]

設計

上記の経緯より、基本設計はエイコーン級(H級)に準じたものとなっており、船型もE級以来の船首楼型が踏襲されている。ただし本級では機関部の短縮を図り、H級と比して、艦橋を約3メートル後方に移動した。また凌波性改善のため、船首楼だけでなく艦橋付近の舷側にもフレアを付している[1]

アドミラルティ型では、機関構成は基本的にH級のものが踏襲されているが、上記の機関区画短縮の要請から、主ボイラーを1缶減らして3缶とした。主機はパーソンズ・タービン(3軸推進)とブラウン・カーチス・タービン(2軸推進)がある。出力13,500馬力で速力27ノットであった[4]

上記の経緯により建造された特型では、速力向上の要請から主機出力の増大を図っており、出力15,500~16,000馬力で速力28~29ノットとなった。ヤーロウ特型ではブラウン・カーチス・タービン(2軸推進)、ソーニクロフト特型ではパーソンズ・タービン(3軸推進)と、いずれも従来通りの直結タービン方式であったが、パーソンズ特型では、初めて減速機を介したパーソンズ・セミ・ギヤード・タービンを採用した。これは、高圧タービンと巡航タービンに歯車減速機を付けて、推進軸と直結した低圧タービンに結合させたものであり、高圧タービンと巡航タービンの効率向上が実現した[4]

また、ヤーロウ社に発注された特型のうち最後の3隻は、20,000馬力のパーソンズ直結タービン(2軸推進)を搭載したファイアドレーク特型として建造された[1][4]

装備

兵装面では、エイコーン級(H級)の構成が踏襲された。艦砲としては、船首楼甲板と後部甲板に40口径10.2cm砲(BL 4インチ砲Mk.VIII)を1門ずつ、また後部甲板に40口径7.6cm砲(QF 12ポンド砲)2門を装備した。水雷兵装としては、53.3cm単装魚雷発射管2基を備えている[1]

同型艦一覧

設計 艦名 造船所 進水 解体/売却
アドミラルティ型 ゴスホーク
HMS Goshawk
ベアドモア 1911年10月18日 1921年11月
ハインド
HMS Hind
ジョン・ブラウン 1911年7月28日 1921年5月
ホーネット
HMS Hornet
1911年12月20日
ハイドラ
HMS Hydra
1912年2月19日
ディフェンダー
HMS Defender
デニー 1911年8月30日 1921年11月
ドルイド
HMS Druid
1911年12月4日 1921年5月
サンドフライ
HMS Sandfly
スワン・ハンター 1911年7月26日
ジャッカル
HMS Jackal
ホーソン・レスリー 1911年9月9日 1920年9月
タイグリス
HMS Tigress
1911年12月20日 1921年5月
ラプウィング
HMS Lapwing
キャメル・レアード 1911年7月29日 1921年10月
リザード
HMS Lizard
1911年10月10日 1921年11月
フィニックス
HMS Phoenix
ヴィッカースバロー 1911年10月9日 1918年5月14日 戦没
フェレット
HMS Ferret
ホワイト 1911年10月 (竣工) 1921年5月
フォレスター
HMS Forester
1911年6月1日 1921年11月
ヤーロウ特型 アーチャー
HMS Archer
ヤーロウ 1911年10月21日 1921年5月
アタック
HMS Attack
1912年12月12日 1917年12月30日 戦没
ソーニクロフト特型 アケロン
HMS Acheron
ソーニクロフト 1911年7月26日 1921年5月
エイリアル
HMS Ariel
1911年9月 (竣工) 1918年8月2日 戦没
パーソンズ特型 バッジャー
HMS Badger
デニー 1911年7月11日 1921年5月
ビーヴァー
HMS Beaver
1912年11月 (竣工)
ファイアドレーク特型 ファイアドレーク
HMS Firedrake
ヤーロウ 1912年4月9日 1921年10月
ラーチャー
HMS Lurcher
1912年6月1日 1922年6月
オーク
HMS Oak
1912年9月5日 1921年5月

参考文献

  1. ^ a b c d e f 「イギリス駆逐艦史」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、27頁、ISBN 978-4905551478 
  2. ^ a b Randal Gray (1984). Robert Gardiner. ed. Conway's All the World's Fighting Ships 1906-1921. Naval Institute Press. pp. 18, 75. ISBN 978-0870219078 
  3. ^ 坂井秀夫『政治指導の歴史的研究:近代イギリスを中心として』創文社、1967年、393-396頁。 NCID BN0195115X 
  4. ^ a b c 阿部安雄「機関 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、164-171頁、ISBN 978-4905551478 



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