どの階層まで確実か
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/22 06:55 UTC 版)
現在の日本では、たとえば陸上の脊椎動物や蝶などは通常の図鑑でほとんどの種名が判明してしまう。種子植物などもほとんどは同定できるだろう。しかし、より広い生物の分類群を見渡した場合、一般に生物の同定は難しいものである。実際に存在するすべての種が記載されている分類群はほとんど無いし、その大半が記載されていると言える群も一部にすぎず、身近に見られるものにも未記載種がたくさんある、ということは珍しくない。そしてその同定のための図鑑がない群だっていくらでもある。専門家以外が同定を行う場合、そのような条件下で、ごく一部かも知れない種についてのみ掲載された図鑑を頼りにしていることは知っておくべきである。 このような条件下では、種名が確定することはまずない。うまくぴったりの種が見つかっても、それはその標本がその種であることを意味するのか、それともその種に近縁な別種の可能性があるかを見分けることは困難である。このような場合、記述があれば属の特徴、種の特徴を区別して、この属であることまでは確実だ、ということであるのか、この属であることは間違いなく、その上にこの種であることも確かそうだ、ということであるかを区別する。後者であればその種名を使えるだろうが、前者の場合には属までを確定して、種についての判断は避ける方が無難である。その場合、「○○(属)の1種」といった表現をする。 たとえば、クモを捕まえて、それが雌成虫であれば生殖器なども観察して種名が確定できる。その結果それがオニグモであるとわかれば、 オニグモ Araneus ventricosus ♀成虫1 と採集記録が書ける。亜成虫であれば雌生殖器は確認できないが、それ以外の特徴から、ある程度は確かな判断ができるだろう。しかし、幼虫であれば、この判断は困難となる。その場合、属までの判断であきらめざるを得ない。採集記録はこう書く。 オニグモ属の1種 Araneus sp. 幼虫1 属は省略する場合もある。属名の後ろのsp.はspecies(種)の略。さらに、何だかよくわからなくて、ただコガネグモ科であるのは確かだと判断すれば、 コガネグモ科の1種 Araneidae gen. et sp. indet. という場合もある。
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