電線 仕様

電線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/26 05:42 UTC 版)

仕様

心線の構成

単線

一本の導体を用いる電線。曲げた形状を保持しやすいが、導体の断面積が大きくなると、曲げにくくなる。また、頻繁に曲げると、金属疲労を起こして断線する。曲げ半径が細いものはワイヤラッピングに使われる。

より線(よりせん、撚線)

複数本の細い導体をより合わせて、一本の導体として用いる電線。より線を構成する個々の導体を素線という。導体断面積が等しい単線の電線と比較して、より線は曲げやすい。

電力用

電力を供給するために使用される電線。

裸電線

銅線(画像はスピーカー接続用のオーディオケーブル
Optical Ground Wire

裸電線とは、絶縁被覆がなく導体がそのままむき出しになっているもの。多くの使用環境では、空気による空間絶縁体として用いる。人体が接触することによる感電や、漏電短絡などの危険があるが、電線のどの場所からも電力を取り出せる利点がある。

絶縁電線

絶縁電線とは、導体絶縁体で覆われているもの。絶縁電線の導体を、心線(core wire)という。

  • 高圧配電線
    • 屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線(OC:Outdoor Crosslinked polyethylene)
    • 屋外用ポリエチレン絶縁電線(OE:Outdoor polyethylene)
  • 高圧引込線
    • 高圧引下用架橋ポリエチレン絶縁電線(PDC:Plane transformer Drop wire Crosslinked polyethylene)
    • 高圧引下用エチレンプロピレンゴム絶縁電線(PDP:Plane transformer Drop wire ethylene Polyethylene rubber)
  • 低圧架空電線
    • 屋外用ビニル絶縁電線(OW:Outdoor Weatherproof)
  • 低圧引込線
    • 引込用ビニル絶縁電線(DV:Drop wire PVC)
  • 屋内配線
  • 電力機器
    • けい素ゴム絶縁ガラス編組絶縁電線(KGB:Glass fiber Braid):耐熱性
    • ネオン管用ビニル絶縁電線(NV:Neon PVC):ネオンサイン回路に用いる変圧器(ネオントランス)の二次側配線用
    • 1000V蛍光放電灯用ビニル絶縁電線(100V FLV:Fluorescent Lamp PVC)

ケーブル

ケーブルcable)とは、絶縁電線を更に保護被覆で覆ったもの。その他の分野における用法はケーブルを参照。なお、オーディオ分野などでは、慣例的に絶縁電線のことをケーブルと呼称する場合も多い。

心線の本数に応じて、単心、2心、3心などがある。

  • 地中電線路用
    • OFケーブル(Oil Filled)
    • 高圧架橋ポリエチレン電力ケーブル
    • 架橋ポリエチレン電力ケーブル
    • コルゲートケーブル:直接埋設用
  • 屋内配線
    • 600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル(VV:PVC PVC)
      • 平型(VVF:VV Flat)
      • 丸型(VVR:VV Round)
    • 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CV:Crosslinked polyethylene PVC)
      • デュプレックス型(CVD):2本の心線が独立して絶縁・保護されているため、CVの2芯より許容電流が高い。
      • トリプレックス型(CVT):3本の心線が独立して絶縁・保護されているため、CVの3芯より許容電流が高い。
      • カドラレックス型(CVQ):4本の心線が独立して絶縁・保護されているため、CVの4芯より許容電流が高い。
    • 分岐付ケーブル(ブランチケーブル)
    • ユニットケーブル
  • 消防設備用
    • 耐火ケーブル(FP-C:Fire Proof Conduit):消防設備の電力供給用。30分通電。
    • 耐熱ケーブル(HP:Heat Proof):消防設備の小勢力回路用。15分通電。
  • 制御回路
    • 制御用ケーブル(CVV:Control PVC PVC)
  • 電力機器
    • キャブタイヤケーブル : 移動機器の電源供給用
    • エレベータ用ケーブル : エレベータの電源供給用。荷重や繰り返しの変形に特に強くなっている。
  • 高温箇所・船舶
    • 無機絶縁ケーブル(MI:Mineral Insulation):保護銅管と各導体を耐熱性の高い無機絶縁物で絶縁したもの
  • アンダーカーペット配線用
    • フラットケーブル

コード

小型電気製品に電力を供給する目的で用いられる電線をコード(Cord)と呼ぶ。

ケーブルとは異なり絶縁被覆のみで、その外側に保護被覆を持たないため、細く柔軟で取り回しが良い。また、通常は導体が撚り線である。

家庭用電気機械器具などでは機器と反対側の端部はプラグになっているものが多く、そのプラグをコンセントに差し込んで使用する。

  • ゴム絶縁袋打コード(FF:Flexible)
  • ビニル平型コード(VFF:PVC Flexible Flat)
  • キャブタイヤコード

電気機器用

主に電気機器の内部配線に使用する電線。

線材の形状による分類

撚対線(よりついせん)
2本の被覆電線を撚り合わせたもの。ツイストペアケーブルとも呼ばれる。
シールド線
状のシールド線とアルミ箔で覆った撚線を心線とする同軸ケーブル
心線の周りを静電シールドで覆った構造のもの。心線には、単心・多心・ツイストペアケーブルなどがある。シールドにはバラ線のもの、編組したもの、アルミテープ巻きのものなどがある。単心のシールド線において特性インピーダンスを規定したものは同軸ケーブルと呼ばれる。心線は心線とも書かれる。
フラットケーブル
フラットケーブルとコネクタ
被覆線を同一ピッチで複数本ならべて、融着した形状の線材。カラーコードで1本ずつ色を変えてあるもの、5本毎などに色の変えてあるものなどがある。圧接型コネクタを使って、一度に配線することが可能である。
フレキシブルフラットケーブル(FFC)
フレキシブルフラットケーブル
平板型の導体を複数本並べて被覆した、リボン状の線材。可動部分や、狭い場所に使用する。

導体の材質による分類

スズめっき線
単線の銅線にスズめっきした裸線。コイルリード線等に用いられる。
銀めっき線[8]
単線の銅線にをめっきした裸線。高周波回路にて、特に低損失の電線が必要な場合に用いる。[9]表皮効果により高周波では伝送される電力が電線表面に集中するため、銀はめっきするだけで実用上十分な性能が得られる。一方、銀を用いる影響で、価格が高くなりがちである。

被覆による分類

エナメル線・ホルマル線
単線の銅線に樹脂塗料を塗布して絶縁した電線。古くはいわゆるエナメル塗料を使ったためエナメル線と言った。ホルマルはformalで、被覆材料のPolyvinyl Formalから来ている。コイル、トランス等に用いられる。後述のポリウレタン線も含め、コイルなど磁束を作る目的で製造された電線を、英語ではMagnet wireと呼ぶ。
ビニール線(ビニール被覆電線)
単線またはより線にビニールの被覆を施して絶縁した電線。
  • 近年の被覆材料
    • ポリ塩化ビニル:安価で難燃性に優れる。
    • ポリエチレン:塩素を含まないので、環境対応としてポリ塩化ビニルを置き換える。
    • フッ素樹脂:耐熱性・耐薬品性などに優れる。
    • ポリエステル:FFC用によく使われる。
    • ポリウレタン(UEW:polyUrethane Enameled copper Wire): 耐熱性、耐薬品性、高周波特性がよい。皮膜をむかず半田付けが可能である。

注釈

  1. ^ 電気設備に関する技術基準を定める省令(平成九年三月二十七日通商産業省令第五十二号)第一条 六号 「電線」とは、強電流電気の伝送に使用する電気導体、絶縁物で被覆した電気導体又は絶縁物で被覆した上を保護被覆で保護した電気導体をいう。
    同十一号 「弱電流電線」とは、弱電流電気の伝送に使用する電気導体、絶縁物で被覆した電気導体又は絶縁物で被覆した上を保護被覆で保護した電気導体をいう。
  2. ^ 有線電気通信設備令(昭和二十八年七月三十一日政令第百三十一号)最終改正:平成一三年一二月二一日政令第四二一号 第一条 一号 電線 有線電気通信(送信の場所と受信の場所との間の線条その他の導体を利用して、電磁的方式により信号を行うことを含む。)を行うための導体(絶縁物又は保護物で被覆されている場合は、これらの物を含む。)であつて、強電流電線に重畳される通信回線に係るもの以外のもの
    同四号 強電流電線 強電流電気の伝送を行うための導体(絶縁物又は保護物で被覆されている場合は、これらの物を含む。)
  3. ^ 遮蔽(シールド)されている、という性質のために、低周波や直流での利用も多い。

出典

  1. ^ a b c d e f g h 『日本大百科全書』【電線】
  2. ^ 電気用語辞典編集委員会 編『電気用語辞典[要ページ番号]』(新版)コロナ社、1982年。ISBN 978-4-339-00411-3 
  3. ^ 電気学会 編『電気工学ポケットブック[要ページ番号]』(JR版)オーム社、1967年。 
  4. ^ a b c Robert Monro Black (1983),The History of Electric Wires and Cables. ISBN 978-0863410017, p.1(chapter 1)
  5. ^ a b c Robert Monro Black (1983), The History of Electric Wires and Cables. ISBN 978-0863410017, pp.1-2.
  6. ^ Robert Monro Black (1983),The History of Electric Wires and Cables. ISBN 978-0863410017, p.2
  7. ^ a b c d e Elandcables, What is the history of electrical cables?
  8. ^ 銀めっき線”. 三洲電線株式会社. 2024年4月26日閲覧。
  9. ^ 3SK293”. 東芝デバイス&ストレージ株式会社 (2014年3月). 2024年4月26日閲覧。3SK294”. 東芝デバイス&ストレージ株式会社 (2014年3月). 2024年4月26日閲覧。それぞれ800MHz、500MHzの周波数にてMOSFETの電力利得を評価する回路において、低損失が要求される共振器に銀めっき線を用いている。


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