遷御 後祭

遷御

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/10 03:34 UTC 版)

後祭

第62回(2013年)遷御の儀を終えた内宮の新正宮
第62回(2013年)遷御の儀翌日、新正宮に詰めかける参拝者

遷御の儀の後祭には、大御饌(おおみけ)、奉幣(ほうへい)、古物渡(こもつわたし)、御神楽御饌(みかぐらみけ)、御神楽(みかぐら)がある[17]

大御饌は、遷御の翌日に初めて神饌を神前に奉る儀式である[25]。午前6時、祭主以下の奉仕者は忌火屋殿(いみびやでん)前庭でお祓いを受け、御贄調舎(みにえちょうしゃ)へ移り、アワビを調理する[26]。調理したアワビは御饌として唐櫃に納め、禰宜が酒とともに神前に供える[26]。奉幣は、勅使が神前に天皇からの幣帛(へいはく)を奉り[3]、祭文を奏上する[25]。古代、が貴重であったため、幣帛と言えば専ら絹織物を指していた[26]。大御饌と奉幣はともに後祭の中でも重要な儀式とされる[26]

古物渡は、旧正殿に残された神宝類を新正殿へ移す儀式である[25]

御神楽御饌は、遷御の翌日夜に初めて舞われる神楽を前に神饌を神前に奉る儀式である[25]。御神楽は新宮の四丈殿にて、勅使・祭主以下の参列の下、初めての神楽を宮内庁楽師十二員が奉納する儀式である[3]。ここで無音で演奏されるのは、「秘曲」と呼ばれる特別な者にのみ伝授される曲である[27]

別宮以下の遷御

内宮と外宮の両正宮の遷御の後に、神宮の14別宮が順次遷御を行う[23]。第62回(2013年)の式年遷宮では、内宮第1位の別宮・荒祭宮10月10日午後8時に、外宮第1位の別宮・多賀宮10月13日に遷御が執行された[28]。残る12社は2014年(平成26年)10月から2015年(平成27年)3月にかけて遷御が行われる[29]。その日程は以下の通り[29]

月日 神社 備考
2014年 10月6日 月讀宮・月讀荒御魂宮 月讀宮は20時、月讀荒御魂宮は22時に執行
10月10日 伊佐奈岐宮・伊佐奈彌宮
11月7日 瀧原宮・瀧原竝宮
11月28日 伊雜宮
12月3日 風日祈宮
12月10日 倭姫宮
2015年 1月28日 土宮
2月28日 月夜見宮
3月15日 風宮

摂社や末社は20年に1度の式年遷宮の対象にはならない[30]が、建て替え・修繕の際に遷御の儀が行われる[31]。例えば、内宮摂社の宇治山田神社では1933年(昭和8年)の建て替えの後、1959年(昭和34年)に大修繕を行ったので、27年目に遷御を行い、外宮摂社の高河原神社では1938年(昭和13年)に建て替えた後に1957年(昭和32年)に大修繕を行ったので、20年目に遷御を行った[31]。所管社は、興玉神・宮比神・屋乃波比伎神のように20年に1度の式年遷宮に合わせて鎮座地が移動する神社もあれば[32]、社殿のない四至神のように移動しない神社もある。

メディアによる報道

第62回(2013年)内宮遷御を前に宇治橋前で取材するCBCのスタッフら

マスメディアによる報道は、社会情勢や世相を反映するものであるが、朝日新聞では第60回(1973年)・第61回(1993年)・第62回(2013年)の内宮遷御を東京本社版朝刊の1面で報じている[33]。第62回の内宮遷御は、朝日新聞以外の全国紙各紙も1面で報じている[33]。第59回(1953年)は、史上初の遷御の列を撮影しているが、1面では扱っていない[33]国家神道の下で行われた第58回(1929年)は、1面扱いではないものの、2面のほぼ全面を遷御関連報道で埋めていた[33]

第62回は、内宮の遷御に合わせて中京広域圏で以下のような特別番組生放送された。


  1. ^ a b c 朝日新聞社"遷御 とは"コトバンク(2013年10月14日閲覧。)
  2. ^ 宇治山田市役所 編(1929):21 - 22ページ
  3. ^ a b c 皇學館大学 編(1986):58ページ
  4. ^ a b c 「伊勢神宮式年遷宮のヤマ場 内宮遷御、10月2日」2013年2月26日付日本経済新聞朝刊、42ページ
  5. ^ a b “伊勢神宮・式年遷宮いよいよクライマックス―神様のお引越し「遷御の儀」”. 伊勢志摩経済新聞. (2013年10月2日). http://iseshima.keizai.biz/headline/1853/ 2013年10月14日閲覧。 
  6. ^ a b 式内社研究会 編(1990):150ページ
  7. ^ a b c 皇學館大学 編(1986):244ページ
  8. ^ a b c d e f 櫻井(1970):193ページ
  9. ^ a b c 福山ほか(1975):222ページ
  10. ^ 櫻井(1970):192 - 193ページ
  11. ^ a b c 櫻井(1970):192ページ
  12. ^ a b 学研パブリッシング(2013):16ページ
  13. ^ a b c d 「刻む歴史 祈りの時 ドキュメント 式年遷宮の街」2013年10月3日付中日新聞朝刊、伊勢志摩版・広域三重14 - 15ページ
  14. ^ 皇學館大学 編(1986):8ページ
  15. ^ a b c 学研パブリッシング(2013):17ページ
  16. ^ a b c d e f g 福山ほか(1975):223ページ
  17. ^ a b c 櫻井(1970):194ページ
  18. ^ a b 「内宮 新たな20年へ 外宮 あす遷御」2013年10月4日付中日新聞朝刊、10版1ページ
  19. ^ a b “伊勢神宮:今夜、遷御の儀”. 毎日新聞. (2013年10月5日). オリジナルの2013年10月15日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2013-1015-0147-19/mainichi.jp/select/news/20131002dde041040017000c.html 2013年10月15日閲覧。 
  20. ^ 「内宮 遷御 伊勢神宮 62回目」2013年10月3日付中日新聞朝刊、10版1ページ
  21. ^ 「大祭 最終章 外宮でも遷御」2013年10月6日付中日新聞朝刊、10版1ページ
  22. ^ a b c 「参拝の熱気 最高潮 外宮も"本番" 沸いた週末」2013年10月6日付中日新聞朝刊、三重版・広域三重24ページ
  23. ^ a b 「伊勢神宮 両宮参拝にぎわう 遷御完了から一夜、行列」2013年10月7日付中日新聞朝刊
  24. ^ a b 「神話 時を超え 神宮の森 包む祈り」2013年10月3日付中日新聞朝刊、社会10版広域27ページ
  25. ^ a b c d 櫻井(1970):238ページ
  26. ^ a b c d 学研パブリッシング(2013):18ページ
  27. ^ 学研パブリッシング(2013):19ページ
  28. ^ “内宮別宮で遷御の儀”. 読売新聞. (2013年10月11日). オリジナルの2013年10月15日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2013-1015-0127-42/www.yomiuri.co.jp/e-japan/mie/news/20131011-OYT8T00088.htm 2013年10月15日閲覧。 
  29. ^ a b 「神業?」何度も台風の直撃を回避する伊勢神宮の「遷御の儀」”. 伊勢志摩経済新聞 (2014年10月13日). 2014年10月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年10月19日閲覧。
  30. ^ 櫻井(1970):93ページ
  31. ^ a b 櫻井(1998):298ページ
  32. ^ 福山ほか(1975):229ページ
  33. ^ a b c d "時代も映す「遷御」報道"せんぐう雑記、2013年10月8日付朝日新聞朝刊、愛知版28ページ
  34. ^ NHKネットクラブ 番組詳細 遷御がつたえる日本の心〜第62回伊勢神宮式年遷宮〜”. NHKネットクラブ. 日本放送協会. 2013年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月14日閲覧。
  35. ^ 東海テレビ | 真夜中のお伊勢さん”. 東海テレビ放送. 2013年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月14日閲覧。


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