西日本方言 西日本方言の概要

西日本方言

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/17 05:11 UTC 版)

アクセント京阪式アクセント東京式アクセント垂井式アクセント無アクセントと地域によって様々な様相を呈するが、文法語彙は西日本で広く共通することが多い。

下位方言

都竹通年雄は、次のように区分している[1]

東条操は、次のように区分している[1]

奥村三雄は、九州を西日本方言に含めて、次のように区分している[2]

  • 関西
  • 九州(九州中南部)

文法

(出典:都竹通年雄「文法概説」)

  • 断定の助動詞には「じゃ」または「」を用いる。例外的に、山陰と熊本県は「だ」を用いる。西日本の各地で「じゃ」から「や」もしくは「だ」へ移行が見られる。(例)何をするんじゃ・や
  • 否定の助動詞には「ない」あるいは「ねえ」ではなく「」を用いる。(例)わからん(分からない)、おきん(起きない)、せん(しない)
    • 能力による不可能表現には「よう 未然形+」を用いる。(例)よう泳がん(近畿ではよう泳がへん):泳ぐ能力を持たない。
    • 否定の過去表現には、中部地方西部・近畿・四国北部・中国東部で「なんだ」(未然形に接続)、中国地方西部・高知県で「ざった・だった」(未然形に接続)を用いる。若年層では「なかった」と「ん」の混合形「んかった」が優勢となっている。 (例)行かなんだ・行かざった・行かんかった(行かなかった)
    • 否定の仮定表現には「なければ」ではなく「ねば」やその変形を用いる。 (例)せねば・せにゃ・せないかん(しなければいけない)
  • 近畿中央部・福井県嶺北を除いて、人・動物の存在を表す動詞には「いる」ではなく「おる」を用いる。 (例)犬がおる(犬がいる)、近畿では犬がいてるを用いることもある。
    • 動作・状態の継続・完了表現には「ておる」(連用形に接続)から変化した「とる・ちょる・とー・ちょー・ちゅー」などを用いる(近畿のみは「てる」も使う)。 (例)分かっとる・分かっちょる(分かっている)
    • 中国・四国(・九州)などでは「ておる」の変形は完了表現にのみ用い、継続表現には「おる」(連用形に接続)から変化した「よる・よー・ゆー」などを用いてアスペクトを区別する。 (例)降っとる・降っちょる←→降りよる・降りよー・降りゆー
  • ワ行五段動詞連用形がウ音便になる。山陰は促音便。(例)こーた(買った)、ゆーた(言った)、おもーた(思った)(山陰のみ、かった、いった、おもった)
  • 形容詞の連用形がウ音便になる。こちらは山陰を含む。 (例)たこーない・たかーない(高くない)
  • サ行五段動詞がイ音便になる。ただし近畿地方・愛媛県などでは衰退している。 (例)だいた(出した)
  • 一段動詞とサ行変格動詞で、命令形に「ろ」ではなく「よ」または「い・え」を用いる。 (例)せよ・せえ(しろ)、みよ・みい(見ろ)、あけよ・あけえ(開けろ)
  • 東日本方言では上一段化した四段活用動詞を、現在もそのままの活用で用いる。 (例)飽く(飽きる)、借る(借りる)、垂る(垂れる)
  • 原因・理由の接続助詞(〜から)には近畿・北陸では「さかい」やその変形「さけ・はかい・はけ」など、中国・四国では「けに」やその変形「けん・けー・きに・きん・きー」などを用いる(九州も同様)。

主な語彙

左が西日本、右が東日本の表現。なお東京方言やそれを基にした共通語は西日本方言の影響を強く受けており、西日本由来の表現で共通語になったものは多い。

  • あかい←→明るい[3]
  • うろこ←→こけら[3]
  • おそろしい・おとろしい・こわい・おっとろしい・←→おっとろしない・おっかない[4]
  • おとつい←→おととい[3]
  • かしわ←→鶏肉[5]
  • カッターシャツ←→ワイシャツ
  • からい・塩辛い←→しょっぱい[3]
  • 借る←→借りる[3]
  • かやくご飯←→炊き込みご飯[5]
  • 気色が悪い←→気味が悪い[4]
  • 串カツ←→串揚げ[5]
  • けむり・けぶり←→けむ・けぶ[3]
  • 校区←→学区[6]
  • こける←→ころぶ
  • こそばゆい・こそばい(い)←→くすぐったい
  • (あさっての翌日が)しあさって←→弥のあさって[3]
  • しょうもない←→くだらない[4]
  • 酸い←→酸っぱい[3]
  • すうどん←→かけうどん[5]
  • (ご飯を)炊く←→煮る
  • 梅雨←→入梅
  • つらら←→あめんぼう
  • てんかす←→揚げ玉[5]
  • 直す←→片付ける
  • なすび←→なす[3]
  • なぬか←→なのか[3]
  • ぬくとい・ぬくい←→あたたかい
  • ひらう←→拾う
  • ひ孫←→ひこ[3]
  • 紅差し指←→薬指[3]
  • ぼったくる←→ぶったくる
  • ぼんち揚げ←→歌舞伎揚げ[5]
  • まどう←→つぐなう
  • むつかしい←→むずかしい
  • め←→まなこ[7]
  • 焼き飯←→炒飯[5]
  • (ご飯を)よそう・つぐ←→盛る

  1. ^ a b c 『岩波講座 日本語11方言』57頁-73頁。
  2. ^ 奥村三雄(1958年)「方言の区画」柴田武、加藤正信、徳川宗賢編『日本の言語学 第6巻 方言』大修館書店、1978年
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 大橋勝男「本土方言下の東西方言」
  4. ^ a b c 真田信治ほか『県別方言感情表現辞典』東京堂出版、2015年
  5. ^ a b c d e f g 篠崎晃一『誤解されやすい方言小辞典』三省堂、2017年
  6. ^ 井上史雄・木部暢子編『はじめて学ぶ方言学』ミネルヴァ書房、2016年
  7. ^ 佐藤(1986)、159頁。
  8. ^ 平山輝男ほか『日本のことばシリーズ15新潟県のことば』明治書院、2005年、26頁。
  9. ^ 平山輝男ほか『日本のことばシリーズ22静岡県のことば』明治書院、2002年。
  10. ^ a b c d 平山輝男「全日本の発音とアクセント」


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