複線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/19 16:05 UTC 版)
複線化
単線であった路線を複線にすることを複線化と呼ぶ。一般には単線時代の線路を複線の線路の一方に利用して、もう一本の線路を敷く形で工事をするが、場合によっては単線時代の線路を放棄して、丸々複線の線路を新設することもある。これは複線化に合わせて線路の改良を行う目的などによる[5]。
増設の方法
もう一本の線路を既存の線路の脇に増設することを腹付け線増(はらづけせんぞう)と呼ぶ。一方、一本の線路を増設する場合でも、土地の買収の問題や線路改良の意図などから、駅構内のみ上下線を並べて駅間では既存の線路とは離れた場所に線路を敷設する場合があり、このような例を別線線増(べつせんせんぞう)と呼ぶ[5]。
別線線増となっている区間としては、
- 豊沙線 (中華人民共和国)
- 雁翅駅 - ケイ家堡駅
などの例がある。
複線化時の勾配改良
複線化に際して同時に急勾配区間の改良を行う例がある。急勾配の既存路線を放棄して勾配の緩い複線の新線を建設する場合は複線別線線増(ふくせんべつせんせんぞう)と呼ぶ[5]。代表的な例として北陸トンネルがある。
一方、列車の運行上急勾配が問題になるのは下り勾配よりも上り勾配の時であるので、急勾配の既存路線をその勾配を下る向きに再利用して、勾配を登る向きの線路だけを別線線増で緩い勾配にすることがあり、これを迂回線増(うかいせんぞう)と呼ぶ[5]。代表的な例としては東海道本線の大垣駅 - 関ケ原駅間があり、上り本線は垂井駅を経由するが、下り本線は旧・新垂井駅(1986年廃止)を経由するルートで迂回する。
より複雑な例としてたすき掛け線増(たすきがけせんぞう)がある。峠を越えるためにその両側に急勾配区間がある単線区間を複線化する時に、緩勾配の単線を2本建設して途中で従来の線路に図に示したようにつなぎ合わせる。新たに建設した緩勾配の線路を峠を上る向きに使用し、峠を下る時には従来の急勾配の線路を使用する。このようにすることで、どちらの方向に列車を運転する時も、上り勾配を緩くすることができ、また従来の線路の一部を再利用できるので、すべての区間を勾配の緩い複線で造り直すよりも安く済ませることができる。ただし峠の頂点付近の旧線は再利用できずに廃止になることが多い。この手法は、東北本線の複線化で多用された[5]。
- ^ a b c d e f 井上孝司『配線略図で広がる鉄の世界』p.36、2009年 ISBN 978-4-7980-2200-0
- ^ 久保田博『鉄道工学ハンドブック』(第4刷)グランプリ出版、1997年2月13日、34頁。ISBN 4-87687-163-9。
- ^ 江崎昭『輸送の安全からみた鉄道史』(初版)グランプリ出版、1998年9月10日、69,153頁。ISBN 4-87687-195-7。
- ^ a b c d e f 井上孝司『配線略図で広がる鉄の世界』p.40、2009年 ISBN 978-4-7980-2200-0
- ^ a b c d e 祖田圭介「東北本線 路線改良史」『鉄道ピクトリアル』第833巻、電気車研究会、2010年5月、pp.48 - 56。
複線と同じ種類の言葉
- >> 「複線」を含む用語の索引
- 複線のページへのリンク