水質汚濁 法的規制

水質汚濁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/21 05:22 UTC 版)

法的規制

日本の場合、環境全体に対する基準と事業者の公共水域への排水への規制が主となっている。

環境基準
環境基本法で定める行政上の政策目標。最低限度ではない積極的な目標として、健康項目は全国一律、生活環境項目は河川、湖沼、海域について、その水域類型ごとに設定されている。環境基準は「維持されることが望ましい」水準であって、達成すべく行政・政策を動機づけるものとして定められている。仮に達成できなくても罰則があるわけではなく、主権者たる国民の要求がなければ放置されかねない性質のものである。従って、維持するためには行政を動機づける、意思の表明が必要となる。
一律排水基準
水質汚濁防止法で定める、日平均50m3以上の事業場から公共水域への排出水に対する基本的な規制値。概ね環境基準の(検出されないこと、の場合は定量下限値の)10倍値を用い、排出許容量を定めて環境基準の達成を図っている(公共水域中で10倍以上に希釈されることを期待しているためであるが、その期待ができない地下水では浸透水への規制値は環境基準と同じ値となっている)。実際には原理的に達成困難な業種への例外規定、改正後の経過措置、あるいは条例による上乗せ・横だし規制が存在し、実務では法令の確認を要する。
汚染者負担原則
水質汚濁防止法のもう一つの柱であり、1973年制定の公害健康被害補償法に先だち、水質汚濁による健康被害への損害賠償を定めている。これは、適切な排水処理への投資を経済原理に適ったものとする目的がある。但し、工場など拠点を構えて事業を行う排出責任者を想定したものであって、単発的な不法投棄を抑制するには限界がある。

他国の事例によると、アメリカの環境基準は「水遊びと魚釣りが出来ること」を目標としており、アウトドア好きな国柄が表れている。

対象とされる水の種類

通常この用語を用いる場合、その水の対象は表流水に限られており、地下水などについてこの用語を用いることはほとんどない。

  • 廃棄物などの最終処分場内に含まれる水(保有水)は、高濃度の汚染物質を含む場合がある。ただし処分場内部であることから、水質汚濁とは見なされない。一方、処分場から外へしみ出してゆく水(浸出水)については、地下水汚染を防ぐため遮水により浸出水処理施設へ導かれ、そこで水処理される。
  • 沿岸海域以外の海水は、主に海洋投棄に関する規制で海洋汚染などと表現されている。
  • 酸性雨など、降水が大気中の物質を溶解(湿性沈着)し、高濃度の汚染物質を含んでいても、やはり水質汚濁とはいわない。

底質との関係

現実の環境、特に河川の水質汚濁においては、水中に分散した時の底質そのもの(懸濁物質)、および液体固体の間で物質が吸着溶出する作用が、非常に大きな要素となっている。重みと作用機構はいくぶん異なるが、湖沼や海域でも同様である。

水質汚濁の定義に底質汚染が含まれるのは、大雨による河川増水など気象条件や、浚渫などの人為的な行為によって撹拌された時はもちろん、平常時であっても水との相互作用が常に起きていて、影響を及ぼし合っているためである。従って、ある日時の水だけを試験・評価しただけでは不十分である。

また、底質は水に比して移動速度が極めて遅い特徴がある。さらに物質の吸着・溶出は、接している水との濃度勾配や、各々の物質がもつ水溶性などの物性、水温や他の溶存物質(汽水など)の影響による物理・化学的側面に加え、底質中に無数に存在する微生物代謝食物連鎖などの生態系内部での物質移動といった生物的側面が大きいと考えられ、その解明は道半ばにある。

しかし、水域全体の底質を調査するには、過大なコストが必要となるため、行政による規制はごく限定されたものとなっている。現在、底質に対する規制が実施されているのは、水銀PCBダイオキシン類についてのみとなっている。

従って、有害性が未解明で法規制も行われていなかったり、水処理技術が未発達だった時代に排出された水・廃棄物に由来する有害物質が底質に蓄積されているため、水質が改善した現代の環境へと、逆に溶け出してくるおそれがあり、これは現実に発生していると考えられる。

例えば、ダイオキシン類の排出量は大きく改善されているにも係わらず、環境調査における水質でのダイオキシン類濃度がほとんど減少していない。これは、過去に排出されたダイオキシン類が底質に蓄積し、改善された水質を汚染しているためと考えられる。







英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「水質汚濁」の関連用語

水質汚濁のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



水質汚濁のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの水質汚濁 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS