怪人二十面相 人物

怪人二十面相

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 01:00 UTC 版)

人物

年齢は三十歳前後。変装の天才であり、声色も自由に変えることが出来る。「どんなに明るい場所で、どんなに近寄ってながめても、少しも変装とはわからない、まるで違った人に見え、老人にも若者にも、富豪にも乞食にも、学者にも無頼漢にも、いや、女にさえも、まったくその人になりきってしまうことが出来る」、「賊自身でも、本当の顔を忘れてしまっているのかもしれない」という大怪盗であり、「まほうつかいのようなふしぎなどろぼう」である。「二十面相」という名前であるが実際には二十以上の顔を持っており[注 2]、この点から倍の数となる「四十面相」の名を名乗った事もある。しかし、乱歩は「四十面相に名前を変えたのは失敗だっ」たらしい。「一つのみょうなくせ」があり、「なにかこれという貴重な品物をねらいますと、かならず前もって、いつ何日(いつか)にはそれを頂戴に参上するという、予告状を送る」。

かつては名の知れたサーカス団で曲芸師をしていた経験から、基礎的な身体能力は非常に高く、また手品の様なトリックや仕掛けを考案する狡猾な頭脳の持ち主でもあり、二十面相の犯罪に道化師の扮装やサーカス、曲芸技がしばしば使われているのはこの為である。手錠抜けの名人でもあり、手錠をかけただけではすぐに手の自由を取り戻すことが出来る。『おれは二十面相だ!!』で二十面相は「俺は柔道五段の腕前だ」と自慢しているが、『怪人と少年探偵』ではなぜか「柔道三段」に腕前が下がっている。またフェンシングの名手でもある。趣味嗜好においてはウィスキー煙草等を嗜むが、過去の挫折を理由に自身を偉大な存在であると示したい自己顕示欲の反映からか、アジト内では金モールの入った将軍の様な軍服を好んで着ている。

初登場作品『怪人二十面相』の冒頭で、「人を傷つけたり殺したりする、残酷な振舞は、一度もしたことがありません。血が嫌いなのです」と説明されており、劇中で二十面相自ら「僕は人殺しなんかしませんよ」と公言している。『少年探偵団』のラストでは、自分もろともアジトを爆破し、明智らを巻き添えに爆殺すると脅したが、実際に爆発が起きたのは明智らが避難した後だった。『怪奇四十面相』では火事場に孤立した小林少年を「小林をたすけなければ・・・」との言葉を吐いて、我が身の危険も省みず救出に飛び込む場面もあり、「血がきらい」という「紳士盗賊」らしさを見せている。この為か、ピストル短刀は殆ど使用しない。

一方、『怪人二十面相』の冒頭の解説で「併し、いくら血が嫌いだからと言って、悪いことをする奴のことですから、自分の身が危ないとなれば、それを逃れるためには、何をするかわかったものではありません」と述べられ、「東京中の人たちはただこの一事を恐れ、二十面相の噂ばかりしている」というのが物語の出だしだった。実際に目当ての宝や金を手に入れる為ならば、殺人こそ犯さなくても、対象の宝の所有者や富豪の身内を誘拐してそれを人質にする形で身代金や宝を要求するといった卑劣な行いを平然としており、進退窮まって自爆で脅すパターンは他にも見られ、追い詰められたりすると盗賊らしく荒っぽい振る舞いに出る事がある。また、小林少年を始めとする少年探偵団の団員達に対しても、奇術や機械仕掛け、怪物の着ぐるみ等を用いて怖がらせたる事はよくあり、特に青銅の魔人や魔法博士、カブトムシ大王、妖人ゴングといった「怪人二十面相」とは異なる別人を名乗って犯罪を行う際は、やはり誘拐して人質にとったり、奴隷の様に扱って虐待紛いな行いをする事も厭わず、特に妖人ゴングを名乗った際は、小林少年をブイの中に閉じ込めて殺害しかけた事もある。他にも、『青銅の魔人』では、自らの目的の為に戦争で消息不明になった手塚氏に成り済まして手塚家に居座り、行方不明のままであった事に心を痛めていた妻や子供の昌一、雪子を騙すという卑劣な手段に及んでおり、物理的な暴力は好まないが、人の心を傷つける行いに関しては躊躇を見せない様子も見せる。『怪奇四十面相』ではいつもは玩具の拳銃で脅すところ、実銃を取り出して引き金を引いた(事前に明智が弾を抜いていたため不発)という場面があり、あるエピソードで明智を幽閉した際にも、直接殺すのが嫌いなだけで「君(明智)が脱出できずにこのまま死んで行くのは私の知った事ではないからね。」と嘯いて去っており、この時には明智からも二十面相を「凶賊」とも呼んでいる。

将軍の様な軍服をプライベートでは好んで着ていながら反戦主義者ぶる事があり、『宇宙怪人』では居並ぶ警察や明智ら大向こうを前に「戦争を起こして沢山の人を殺した悪い奴らがつかまらず、自分だけがつかまる」事に対して憤慨し、散々世間を騒がせた己の悪業を棚に上げて「戦争という大犯罪」を批判している。その一方で、「(星の世界から)攻められる前に、こちらから攻めたらどうだ」と、むしろ好戦的な熱弁を揮ってもいる。『透明怪人』や『電人M』でも反戦めいた発言をしている。

毎回、複数名義で入手した洋館などにからくり仕掛けを施してアジトに構え悪事を働いているのだが、毎回明智にしてやられる形で終わり、各ストーリーの最後で捕まって次のストーリーが始まるまでにはいつの間にか脱獄している事や死を偽装して逃走する展開が多い。

乱歩と怪人二十面相

怪人二十面相』が書かれた当時の少年誌には、少年探偵ものが数多く連載されていた。しかしこれらの作品では、探偵役を主人公の少年自らが担って、推理という難解な作業を行なっていた為、内容がそらぞらしく迫力にかけるものが大半であった。

雑誌『少年倶楽部』の編集者たちは、主人公の少年が探偵をするのではなく、主人公以外の大人が探偵役を担う事でより面白い小説が作れるのではないかと思い立った。そこで、編集者たちは誰がその探偵役を引き受けるべきかを議論したところ、「誰もの口から、明智小五郎の名が出て、異議なくそれにきまった」。

そこで『少年倶楽部』の編集者であった須藤憲三が、1935年(昭和10年)夏ごろ東京會舘で開かれた野間清治社長を囲む作家たちの親睦会で、乱歩に少年ものの連載の話をもちかけた。この時乱歩は「いかにも思いがけないことを聞いたふう」であったが、「なにがしかの興味が動いた様子」であったという。

当時の少年探偵ものは非現実に徹しきれないため盛り上がりに欠けるのだと考えた乱歩は、「思い切った非現実」的なものを書く事にした。そこで乱歩は「少年ルパンものを狙って」、敵役としてアルセーヌ・ルパンばりの大怪盗を登場させる事にした。

こうして1936年(昭和11年)1月から12月にかけて『少年倶楽部』誌に『怪人二十面相』が連載される事となった。従来なかった趣向の物語は大いに受け、子供からの手紙が乱歩のもとに驚くほど来たという。一年の連載が終わると講談社から単行本となり、これも多いに売れた。当時は『少年倶楽部』が発行部数では独り天下で、乱歩は『少年倶楽部』以外に書く気はなかったという。

明治末期から大正期に、三津木春影フリーマンコナン・ドイルの短編を翻案した『呉田博士シリーズ』という少年冒険探偵小説を連載して人気があった。乱歩が大学初年級時代に連載中の三津木が急逝し、その続編を雑誌が公募したことがあり、乱歩は下書きまで書いていたが、締め切りに間に合わずお蔵入りしたという。乱歩は「いずれにしても、そういうことがあったとすれば、私には少年ものの下地がなかったわけでもないのである」と述べている。

乱歩によると西洋の少年探偵小説は日本のもののようなどぎついものではなく、もっとおっとりしている。これは初めから本にするために書き下ろした長編であるためで、「日本のように毎月毎月読者をハラハラドキドキさせなければ受けない連載ものとは違う」のだといい、これを「日本は印税では引き合わないので、まず雑誌に連載するのが常道になっているという違いからくるのだ」と説明している。乱歩は「二十面相シリーズ」について「筋はルパンの焼き直しみたいなもので、大人ものを描くよりこのほうがよっぽど楽であった」と述懐している。

戦争が激しくなると、日本の文壇は軍部によって探偵小説執筆が禁止された。二十面相シリーズも中断してしまい、日本敗戦によってようやく再開が叶った。松村喜雄によると乱歩は日本敗戦の際、「探偵小説を禁止した日本軍が敗れ、陣中でミステリーを読んでいた米軍が勝った」と興奮して語ったという。戦後、シリーズが復活した『青銅の魔人』では、乱歩は大張り切りでこれに取り組み、当時生きるのにやっとという時代だけに、発売されるや子供だけでなく大人も文字通りこれをむさぼり読んだという。

戦後の光文社での連載では、「乱歩先生は暗い蔵の中で髑髏に乗せた蝋燭一本の明りをもとにお話を書いている」などと、乱歩自身が二十面相のように紹介されていた。実際はこれは作り話である。『二十面相』の連載による収入は、乱歩に経済的なゆとりを与え、金に執着しなかった乱歩の経済的危機や、戦後、報酬を度外視した探偵小説隆盛のための活動を支えた。またこのシリーズによって奇術的なトリック小説の面白さを知った少年少女のファンたちは、やがて推理小説の読者に育っていき、読者層を拡大すると同時に論理的思考の習慣を子供たちに植えつけたのである[2]

名前の由来

「二十面相」という名前は、トマス・ハンシュー英語版の『四十面相のクリーク』をまねたものである。当初乱歩は怪盗ルパンのように「怪盗二十面相」という名前にするつもりであったのだが、当時の少年雑誌倫理規定により「盗」という字を使うのはよくないとされ、「怪人」と改めた。作中では名前の由来は変装の名人であり、「その賊は二十の全く違った顔を持っている」からだと説明されている。

後に怪人二十面相は『怪奇四十面相』で、世間で自分が「二十面相」と呼ばれる事に不満を表し、「私の顔はたった二十ではなく、少なくともその倍の四十は違った顔をもっている」として四十面相(しじゅうめんそう)と変名しているが、これは明らかに『四十面相のクリーク』の影響である。ただ、四十面相という名前があまり世間に浸透しなかったためか、明智にも「二十面相」と呼ばれるようになり、『塔上の奇術師』(代作では『ふしぎな人』)を最後に四十面相という表記がなくなり、二十面相に戻る。

来歴

シリーズ作品中、怪人二十面相の過去が書かれたものに『サーカスの怪人』がある。これによると二十面相の本名は「遠藤平吉」であり、元々は『グランド・サーカス団』というサーカス団の曲芸師であった。笠原太郎という曲芸師と二代目団長の座を争ったが争いに敗れ、『サーカスの怪人』時から15年前に、サーカス団を飛び出している。ただサーカスの怪人事件が連載時の1957年とすると、二十面相は戦前から活動しているのでつじつまがあわなくなる。

遠藤平吉がこの後どのような経緯で怪人二十面相になったのかについては触れられていない。しかし、小説『怪人二十面相』の冒頭では、彼はすでに「二人以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつをするように怪人『二十面相』のうわさを」し、「毎日毎日新聞記事をにぎわして」いる大怪盗になっていた。

『サーカスの怪人』時から3年前に警察に捕まった際に、笠原に自分が犯人であると証言されたことから、笠原の事を逆恨みするようになり、約1年もの年月をかけて準備し、『サーカスの怪人』で「グランド・サーカス事件」を引き起こすのである。

犯行目的

二十面相は「宝石だとか、美術品だとか、美しくてめずらしくて、非常に高価な品物を盗むばかりで、現金にはあまり興味を持たない」。現金は必要経費を稼ぎ出すため、部下ともども「くらしをたてるため」に盗むだけであり、二十面相曰く、本来の目的は「世界の美術品をあつめること」、その手段は「買いいれるのではなく、ぬすみとる」ことであり、「二十面相大美術館をつくるのが、おれの一生の目的だ」という(『電人M』)。

シリーズ中何回か、この美術館を完成しているが、いつも明智や少年探偵団によって暴かれ、収蔵品を奪い返されてしまう。このため、何度も自身のアジトを突き止め通報している少年探偵団の小林少年と、チンピラ別動隊のポケット小僧に深い恨みを持っている。本人は『おれは二十面相だ!!』で、「美術品を集めることは、けっしてあきらめない。明智先生と根くらべだ」と嘯いている。

三作目の『妖怪博士』以後、「自分を何度も辱めた明智小五郎への復讐」が犯罪動機の一つとなり、世間と少年探偵団を驚かす事を主目的とした愉快犯的な行動が多くなっていく。戦後作品では劇場型犯罪がエスカレートし、変装も青銅の魔人を皮切りに、夜光人間宇宙怪人電人M鉄人Qなど手の込んだ奇妙な人外の物が多くなった。

結末の描写

シリーズ中、物語の最後で二十面相は21回捕まり(『宇宙怪人』を含む)、19回脱獄している。『怪奇四十面相』では獄中にいる二十面相が脱獄する場面が描かれた。

その他の作品では、「生死不明」が『少年探偵団』、『青銅の魔人』、『宇宙怪人』、『鉄塔の怪人』(ポプラ社版『鉄塔王国の恐怖』)の4回。『宇宙怪人』のラストでは下項のように二十面相は「生死不明」として描かれているが、のちの『奇面城の恐怖』で、明智はこの際に「二十面相を逮捕した」と述べている。

『怪人二十面相』では、二十面相の偽者が捕まっており、替え玉を使っての脱獄は何度か見られた。また、「少年探偵シリーズ」では、怪人二十面相の「死」が何度か描かれている。しかしもちろん二十面相は本当に死んだわけではなく、死んだように見せかけてどこかに逃げたのである。『虎の牙』で明智は二十面相を「二度も三度も死んだ男だ。死んだと見せかけて、生きていた男だ」、「不死身の男だ」と評している。

  • 『少年探偵団』では、アジトの床下にある小部屋で火薬の樽に火を放ち自爆した。しかしその際二十面相の死体は発見されなかった。次作『妖怪博士』で二十面相は復讐の為に、自ら「生きている二十面相」と名乗って明智と少年探偵団の前に再びその姿を現した。
  • 青銅の魔人』では、二十面相の乗ったモーターボートが爆発し、着ていた青銅魔人の衣装ごと川に沈み行方不明となった。
  • 『宇宙怪人』では、二十面相は潜航艇で逃げようとするが、明智に潜航艇の機械を壊されていた事を知ると、予め用意してあった爆弾で自爆した。
  • 『鉄塔の怪人[注 3]』(ポプラ版『鉄塔王国の恐怖』)では、巨大カブトムシに扮した二十面相が塔の天辺から身を投げた。後述するように、このときは本当に死んだのかも知れない。

小道具、トリック

変装具
カツラやつけ髭、眼鏡など、様々な変装用小道具で、わずか3分ほどで他人の姿に化けてしまう。いつも化粧道具を入れた円いコンパクトを携帯しており、明智探偵に化けたことも多数あった。
拳銃
「人殺しは嫌い」ということで、玩具の拳銃を脅しに使う。細紐でこれを吊るし、カーテンの向こう側から銃口をのぞかせて、部屋内の人達を足止めさせるトリックを好んだ。稀に実銃を使うこともある。
絹紐の縄梯子
丈夫な黒い絹紐を縒り合せ、鉤と結び目をつけて梯子にしたもの。丸めてポケットに納められ、まったく同じ道具を明智や少年探偵団員(中学生限定)も使用している。
ブラック=マジック
小道具ではないが、二十面相はブラック=マジックを多用する。ブラック=マジックとは、暗がりを利用したマジックで、観客席をライトで照らすことで、舞台の暗さを引き立たせ、舞台で物体を黒い布で覆ったり、逆に布を取り除いたりする事で、物体を消失させたり出現させたりするトリック。二十面相はこのトリックでバラバラの骨を浮遊させて「骸骨男」、また黒い糸で物を吊り上げ、あたかも浮遊しているかのように見せた「透明人間の出現」を演出する。暗闇をバックに奇怪な顔を浮遊させるトリックも好んで使った。
マンホール
路上のマンホールに隠れることで、逃走や誘拐に使う。変装具を隠しておく場合もあり、公設のマンホールに見せかけて作った「私設マンホール」を使うこともある。
自動車
戦前はまだ珍しかった自家用自動車を活用し、拉致連行などの悪事を働く。少年探偵団員が後部トランクに忍びこんでアジトに潜入するパターンも多かった。
義手
上着の袖に精巧な義手を縫い込んでいて、この義手に手錠をかけさせ、まんまと逃走した(『妖怪博士』)。『夜光人間』でもマントの下にビニール製の義手を二本ぶら下げ、それと知らずこれにしがみついたチンピラ別動隊を蹴散らして逃走している。
着ぐるみ
蝙蝠の怪人、巨大カブトムシ、妖星人R、黄金の虎、鉄の人魚、様々なロボットなど、部下ともども着ぐるみを被って化け物に扮し、世間を惑乱させる(多くの場合、二十面相/四十面相を名乗らず、最後に明智に正体を暴かれるまで、新たに作り上げたキャラクターに徹する)。二十面相はこの被り物のリアリティーに拘り、『鉄塔の怪人』(ポプラ社版『鉄塔王国の恐怖』)では巨大カブトムシに入って、汗びっしょりになりながら何度も部屋の壁を這い上って動き方の手本をみせたり、『海底の魔術師』ではわざわざ大蟹に入って断崖を這い降りたりしている。脱いだ後はコンパクトに折りたたんで隠せる仕様の着ぐるみも多かった。
「青銅の魔人」など、着ぐるみと同じ形の伸縮自在の風船状のゴムの替え玉人形を用意しておき、高所から落として身代りとする逃走術もよく用いている。
ゴムの吸盤
西洋の手品師が使う、20cmほどのゴムの吸盤を手と膝に着けて、建物の外壁を這う。『虎の牙』で二十面相扮する「魔法博士」が洋館の外壁を逆さまに這い降りた。
プロペラ
『宇宙怪人』事件以来、二十面相はデモンストレーションや逃走用に「プロペラ」を使って空を飛ぶ。これは「プロペラのついた箱のような機械を(革帯で)背中にくっつけて使う」もので、夜や薄暗い日にはプロペラが見えないため、地上からはあたかもスーパーマンのように空を飛んでいるように見える。
『宇宙怪人』によれば、「この機械は、一年ほど前、フランス人が発明して、パリの郊外で飛んでみせたもの」で、その写真が日本の新聞にものったほど。しかしまだオモチャみたいなもので、遠くまでは飛べず、せいぜい200〜300mで、機械(エンジン)の力がなくなってしまう。
この機械は明智の依頼でより馬力を増して複製され、明智小五郎や少年探偵団が以後使用することがあった。『鉄人Q』では少年探偵団の小林・井上両少年が、『妖星人R』(ポプラ社版『空飛ぶ二十面相』)では明智探偵が、このプロペラを使って逃亡を図る二十面相と空中戦を展開した。
『夜光人間』や、『仮面の恐怖王』、『ふしぎなひと』、二十面相最後の作品『超人ニコラ(黄金の怪獣)』でも、二十面相はこのプロペラを使って悪事を働く。
小型潜航艇・船舶
小型の潜航艇や専用の船舶を所有しており、拉致監禁や逃亡に使う。
夜光塗料
『夜光人間』では全身に夜光塗料を塗りたくる事で夜光怪人に扮した。
映画フィルムの加工
映画のフィルムに細工をして上映時にデモンストレーションとするほか、拉致誘拐を行う。『仮面の恐怖王』では、フィルムに血に擬した赤い塗料を塗り、黄金仮面の古い白黒映画の上映中、黄金仮面の顔が大写しになるシーンで、仮面の口から突然真っ赤な血を流れさせて観客を驚かした[注 4]。『鉄人Q』では、子供映画のフィルムに怪人の顔の大写しと笑い声を挿入して館内をパニックに陥れ、行夫少年を誘拐した。
幻灯機
幻灯機による投影で、人体消失や怪異現象を演出する。
催眠術
強力な催眠術を使い、少年探偵団を翻弄する。
腹話術
腹話術の名人で、変装と併用して他者を撹乱する。

二十面相の手下・仲間たち

二十面相は毎回大勢の手下を引き連れて、大がかりな劇場型犯罪を行う。怪力の大男や小人島と呼ばれる一寸法師など、さまざまな部下がいる。いずれも「二十面相大美術館」構想に賛同した者たちであり、中には二十面相の替え玉もいて、逮捕の危険も顧みず主人になりかわって犯罪現場に赴く者もいる。二十面相はアジトで、一週間に一度、この部下たちと会議を開く。

これらの生粋の部下以外に、臨時雇いのコックや無頼漢がいる。主人が二十面相と知らずに金で雇われた手下たちもいて、これらの手下は、主人の正体が悪名高い二十面相と知るや、震えあがって即座に警察に投降していた。大枚の現金による買収は二十面相の常套手段である。

また、『魔法人形』など多数の作品で少年や少女、児童を手下にしており、これら未成年者を犯罪に加担させている。『魔法博士』や『超人ニコラ』など、偽少年探偵団員を仕立てたこともあった。

洋館アジトの警護に四角ばった形や、一見人間風の等身大のロボットを使うことがある。これは手下が化けている以外に、作品によっては本物のロボットとみられるものも登場していた。トラなどの猛獣を飼い慣らし、しばしば悪事に利用している。

また部下や手下ではないが、『宇宙怪人』では、全世界規模で提案賛同者たちから協力を得ている。正体不明の美女がアジトに潜んでいることもあり、『黄金豹』には「ネコ夫人」という女性の仲間が登場している。『青銅の魔人』では、最後の逃走を図る前に小林少年に「おれにだって、なごりをおしんでくれる人もあるからね」と嘯いている。

盗んだもの(未遂を含む)

雪舟の絵は『妖怪博士』や『電人M』でも奪っている
  • ダイヤやプラチナをちりばめた「皇帝の夜光の時計」(『青銅の魔人』)
  • 真珠の塔「志摩の女王」、「にじの王冠」(『灰色の巨人』)
「志摩の女王」は二十年前には黄金仮面に奪われた事もある
  • ヨハネス・グーテンベルク出版の聖書(『魔法博士』)
  • 「純金の豹」、「二十三個のダイヤモンド」、「インドの宝石」(『黄金の豹』)
  • 推古仏(飛鳥仏)
二十面相はこの宝物に執心で、『透明怪人』や『夜光人間』で標的とし、『妖星人R』でついに手中に収めている。(『夜光人間』の場合は自作自演で、「盗まれた」とみせたのはもともと二十面相が持っていた推古仏だった。)
  • 「レンブラントのS夫人像」(『奇面城の秘密』)
  • 「黄金の宝石箱」(『塔上の奇術師』)
  • 「黄金の宝冠」(『仮面の恐怖王』)
  • 「古代エジプトの巻物」、「真珠のぞう」(『おれは二十面相だ!!』)
  • 「くれないの王冠」(『怪人と少年探偵』)
  • 「青い炎」(『超人ニコラ』)

他多数。美術品は二十面相本人だけでなく、部下たちによっても集められる。『おれは二十面相だ!!』での二十面相のセリフによると、明智探偵に奪還されても、集めた美術品はいつも半年もすればまた元のように集まってくるらしい。


注釈

  1. ^ 映像作品ではドミノマスク(いわゆる女王様マスク)であったり、ヴェネツィア風の仮面だったりと作品によって異なる
  2. ^ 彼は一作平均4.44回、シリーズ合計で111回もの変装をしている(ポプラ社版のみをカウント[1]
  3. ^ 妖虫』を乱歩自身が児童向けに翻案したものである
  4. ^ この描写は戦前の乱歩作品『蜘蛛男』からの転用
  5. ^ a b 乱歩は武田武彦の著述と前書きで述べているが、実際には氷川がポプラ版を執筆。
  6. ^ この描写は戦前の乱歩作品『地獄の道化師』からの転用

出典

  1. ^ 『生誕百年・探偵小説の大御所 江戸川乱歩99の謎』(二見書房刊)
  2. ^ 『乱歩おじさん』(松村喜雄、晶文社)
  3. ^ 『超人ニコラ/大金塊』(江戸川乱歩推理文庫43巻)における中島河太郎「解題」より、1988年、413-416頁。
  4. ^ a b 「自作解説」『怪人二十面相と少年探偵団』(『児童文学への招待』(南北社、昭和40年7月)
  5. ^ イモ欽トリオ ティアドロップ探偵団 歌詞&動画視聴 - 歌ネット”. www.uta-net.com. 2023年7月16日閲覧。






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