岸壁の母 流行歌

岸壁の母

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/11 05:34 UTC 版)

流行歌

菊池章子版

岸壁の母
菊池章子シングル
リリース
ジャンル 歌謡曲
レーベル テイチクレコード
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昭和29年(1954年)9月、テイチクレコードから発売された菊池章子のレコード「岸壁の母」が大流行(100万枚以上)した。

作詞した藤田まさとは、上記の端野いせのインタビューを聞いているうちに身につまされ、母親の愛の執念への感動と、戦争へのいいようのない憤りを感じてすぐにペンを取り、高まる激情を抑えつつ詞を書き上げた。歌詞を読んだ平川浪竜(ひらかわ・なみりゅう)は、これが単なるお涙頂戴式の母ものでないと確信し、徹夜で作曲、翌日持参した。さっそく視聴室でピアノを演奏し、重役・文芸部長・藤田まさとに聴いてもらった。聴いてもらったはいいが、何も返事がなかった。3人は感動に涙していたのであった。そして、これはいけると確信を得、早速レコード作りへ動き出した。

歌手には専属の菊池章子が選ばれた。早速、レコーディングが始まったが、演奏が始まると菊池は泣き出した。何度しても同じであった。放送や舞台で披露する際も、ずっと涙が止まらなかった。菊池曰く「事前に発表される復員名簿に名前がなくても、「もしやもしやにひかされて」という歌詞通り、生死不明のわが子を生きて帰ってくると信じて、東京から遠く舞鶴まで通い続けた母の悲劇を想ったら、涙がこぼれますよ」と語っている。

昭和29年9月、発売と同時に、その感動は日本中を感動の渦に巻き込んだ。菊池はレコードが発売されたとき、「婦人倶楽部」の記者に端野いせの住所を探し出してもらい、「私のレコードを差し上げたい」と手紙を送った。しかし、端野の返事は「もらっても、家にはそれをかけるプレーヤーもないので、息子の新二が帰ってきたら買うからそれまで預かって欲しい」というものであった。菊池はみずから小型プレーヤーを購入し、端野に寄贈した。

二葉百合子版

岸壁の母
二葉百合子シングル
リリース
ジャンル 歌謡浪曲
レーベル キングレコード
チャート最高順位
  • 週間3位(オリコン
  • 1976年度年間5位(オリコン)
  • 1977年度年間75位(オリコン)
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この曲は、二葉百合子が昭和46年に発売したカヴァーアルバム『二葉百合子の涙の歌謡劇場』で初めてカヴァーした。その後、昭和47年(1972年)にシングルカットされ、二葉百合子が浪曲調で吹き込んだ(作・室町京之介)。

LPレコード、シングル、テープを合わせて(250万枚[1])の大ヒットとなり、昭和51年(1976年)には中村玉緒主演で映画化された。さらに二葉自身、同年末の『第18回日本レコード大賞』では審査委員会奨励を受賞し、そして『第27回NHK紅白歌合戦』にも初出場を果たす。

昭和52年(1977年)に市原悦子主演でドラマ化(「岸壁の母」)された。

今も二葉百合子の「十八番」として、息長く歌い継がれている。

二葉によると、「岸壁の母」のモデルである端野いせとは、生前とても親しくさせてもらっていた[2]。同曲のカバーを発表する際、東京・大森のいせの自宅に何度も出向き、彼女から息子や夫を戦争に取られて悲しい思いをしている等の話を聞かせてもらった[2]

発表後から全国各地の公演先に行くたびに「戦争は絶対に繰り返してはならない」との強い思いで、「岸壁の母」を歌うようになった[2]。すると客の間で「岸壁の母」が徐々に話題になり、発表から4年ほどかかって1976年頃の全国的なヒットに繋がった[2]1981年にいせが亡くなった際、二葉は彼女の最期を看取らせてもらった[2]。「岸壁の母」について、「私の大事な大事な財産です」と評している[2]

その他カヴァー


  1. ^ 長田暁二『歌謡曲おもしろこぼれ話』社会思想社、2002年、109頁。ISBN 4390116495
  2. ^ a b c d e f 引退後も素晴らしいお弟子さんに恵まれて 幸せだなぁと、つくづく思います”. マンション生活情報サイト「Wendy-Net」より「Ms Wendy」 (2014年11月掲載). 2023年6月16日閲覧。
  3. ^ 石原裕次郎、渡 哲也がカラオケを楽しむプライベート音源が奇跡のCD化!発売から早くも通販サイトで1位となるなど大反響!、PRTIMES(株式会社テイチクエンタテインメント)、2019年7月17日 15時56分。


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