大久保清
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人物
獄中手記『訣別の章』について、風俗史家の下川耿史は、著書『殺人評論』において「(ニーチェやショーペンハウアーを引くなど)難しい言葉を多用して、(アナキズムに共感するなどして)国家権力への反発を述べているが、言葉が難しいわりには浅薄で、他にひどくセンチメンタルな詩を長々と書き連ねており、これが36歳の男が書くものかと思うほどに実に少年っぽい」と批評している[74]。
取調中の大久保は数字の「3」を嫌がった[75]。警察は大久保を追い詰めるためにこれを利用し、松井田署に身柄を移送した際には留置場の第3房に収監した[56]。
他事件との類似性
『上毛新聞』記者・五十嵐啓介は、本事件から50年となる2021年に事件を回顧する連載特集記事を執筆した[30]。五十嵐は、福井裕輝(精神科医)の声を引用し、附属池田小事件(2001年)の死刑囚である宅間守(2004年に死刑執行)や、座間9人殺害事件(2017年)の死刑囚について言及し、両者と大久保に共通点(反社会性パーソナリティ障害)がある旨を指摘している[76]。
また『読売新聞』は、富山・長野連続女性誘拐殺人事件(1980年)の発生時、同事件の加害者女性(1998年に死刑確定、女性死刑囚)と大久保の共通点として、「被害者がいずれも若い女性である点」「虚栄心が強く、服装や車などに金をかけ、言葉巧みに被害者を誘って犯行におよんでいる点」「殺害・死体遺棄現場が人目に付かない山中である点」「逮捕後に曖昧な供述を繰り返し、捜査機関を翻弄している点」を挙げている[77]。
大久保清を題材とした作品
- 1971年7月、本事件を題材にしたピンク映画『日本セックス縦断 東日本篇』(監督:渡辺護、製作:東京興映)が公開された。大久保に相当する「久保田清」を演じたのは今泉洋。
- 1976年、本事件のほか、西口彰事件などを再現したオムニバス映画『戦後猟奇犯罪史』(製作:東映)が公開された。大久保に相当する「久保清一」を演じたのは川谷拓三。
- 1983年8月29日、筑波昭による同名書籍を原作としたテレビドラマ『昭和四十六年 大久保清の犯罪』(製作:TBS)が放送された。大久保を演じたのはビートたけし、プロデュースは八木康夫。
- 『天上の青』 - 曽野綾子の小説(1988年 - 1990年、毎日新聞に連載)。直接的な描写はないが、本事件をモチーフとしている作品である。1990年に毎日新聞社より単行本刊行。1993年に、新潮文庫にて文庫化。
注釈
出典
- ^ a b c d e f 『読売新聞』1976年1月23日東京朝刊第14版第一社会面23面「大久保清の死刑執行 女性連続殺人 最後まで反省みせず」
- ^ a b 連載担当記者:五十嵐啓介「大久保は問う~女性連続殺人から50年(1)怨嗟 遺族「思い出したくない」 半世紀経てなおやり場ない無念」『上毛新聞ニュース』上毛新聞社、2021年4月4日。2021年4月14日閲覧。オリジナルの2021年4月7日時点におけるアーカイブ。
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- ^ 『別冊宝島333 隣りの殺人者たち-彼や彼女はなぜ、人を殺したのか』宝島社、1997年、p.172
- ^ a b 連載担当記者:五十嵐啓介「大久保は問う~女性連続殺人から50年(4)虚無 人間不信 侮辱ばかり」『上毛新聞ニュース』上毛新聞社、2021年4月7日。2021年4月14日閲覧。オリジナルの2021年4月7日時点におけるアーカイブ。
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- ^ a b 『中日新聞』1973年2月22日夕刊E版1面「大久保清に死刑 前橋地裁が判決 謝罪が聞けず残念 町田繁弁護人の話」
- ^ 『中日新聞』1973年2月22日夕刊E版第一社会面11面「死刑でも娘は戻らぬ 大久保判決 目を押える遺族たち 鬼か…大久保うす笑い "人間じゃない"の声も」
- ^ 『中日新聞』1973年3月9日朝刊第12版第一社会面19面「大久保の死刑確定へ」【前橋】
- ^ 『中日新聞』1973年3月9日夕刊E版第一社会面15面「大久保清、控訴せず死刑確定」【前橋】
- ^ 『読売新聞』1973年4月3日東京夕刊第4版第二社会面10面「【前橋】『大久保』東京へ護送」
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- ^ 連載担当記者:五十嵐啓介「大久保は問う~女性連続殺人から50年(5)凶悪 手口新た 繰り返す惨劇」『上毛新聞ニュース』上毛新聞社、2021年4月9日。2021年4月14日閲覧。オリジナルの2021年4月9日時点におけるアーカイブ。
- ^ 『読売新聞』1980年4月7日東京朝刊第14版第二社会面22頁「【長野】M そっくり殺人鬼 大久保清 二重人格 凶行楽しむ 核心トボケ」(読売新聞東京本社) - 『読売新聞』縮刷版 1980年(昭和55年)4月号244頁
- ^ 天上の青 - テレビドラマデータベース
- ^ BSサスペンス 天上の青 - NHK
- ^ 文化庁芸術祭賞受賞一覧 昭和61年度(第41回) - 平成7年度(第50回) (PDF) - 文化庁
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