ダイビング器材 スキンダイビングおよびスクーバダイビングで用いる器材

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ダイビング器材

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/28 12:21 UTC 版)

スキンダイビングおよびスクーバダイビングで用いる器材

ここでは、スキンダイビングスクーバダイビングに共通で用いられる器材について解説する。潜水の分野では、マスク・シュノーケル・フィンの3つを「3点セット」と総称することもある[注 2]■右上に画像あり)。これらの器材を「軽器材」という[注 3]

マスク

ダイビングハーフマスク(図説)

水の屈折率は空気のそれとは大きく異なるため、眼の角膜が水に接している場合、正常に物を見ることができない。水中用のゴーグルはこの問題を解決するために存在する、周囲の水と角膜の間に空気の層を設けるための器具である。ただ、鼻を覆わないタイプと覆うタイプに大別でき、前者は「水中眼鏡/水中めがね(水泳など水中活動対応型のゴーグル。: underwater glasses, swimming goggles. 左側の画像はその一例)」といい、後者は「ダイビングマスク英語版: diving mask, dive mask)」という。耳抜きを容易に行えるよう、マスクタイプは指でマスク下の鼻をつまめるように考慮されている。

水中眼鏡
ダイビングフルフェイスマスク

水圧によって装着部(眼球周辺)がマスク内部に引き込まれるため(マスクスクイズ)、潜水用としては鼻まで覆うことのできるダイビングマスクを用い、その内部に鼻から呼気を吹き込んで圧力差による障害を回避(マスクブロー)するようになっている。換言すれば、水遊びや水泳に用いられる眼の周りのみを覆う水中眼鏡を少しでも本格的と言える潜水に用いることは、常人には不可能である(※伝統的な素潜りを生業とするような者は例外)。

マスクの中に入った水を抜くための排水弁を持つ製品も存在するが、排水弁がなくても水中での水抜きは可能である。その場合にはマスクの上部を手で押さえて、鼻から呼気を吹き込めばマスク内の圧力が上がってマスクの下部が浮き上がり、すき間から呼気と水が排出される。水中でマスクが緩んだり外れる、あるいはベルトを調節するためマスクを意図的に外すといった事態に備えるため、オープンウオーターダイバーライセンスの技能講習では水中でのマスク脱着も実施される。

近視老眼等のダイバーのために、いわゆる「度入り」のレンズを装着できるようになっているマスクもある。乱視はもちろん遠近両用等もあるが、眼鏡ではごく当たり前の境い目の無い遠近両用レンズはまだ存在しない。

特に冷たい水中や、汚染された水中に潜水する場合、また水中での会話を必要とする場合には、レギュレーターが組み込まれ、口を含む顔面全体を覆う形状のマスクを使用する場合があり、このタイプを「フルフェイスマスク(ダイビングフルフェイスマスク)」という(■右側に一例の画像あり)。これに対してフルフェイス型でない通常タイプは「ハーフマスク(ダイビングハーフマスク)」という(■右側にイラストあり)。テレビ番組などで企画される水中リポート(潜水リポート)で使用されているのはこのタイプである。フルフェイスマスクも様々な種類が存在する。フルフェイスマスクは職業ダイバーの間で多用されている一方で、一般レジャーダイバーへの普及率はゼロに等しい。しかし、一部の体験ダイビングや障害者向けダイビング等で使われている。レギュレーターが外れる心配が無いことや普段どおりの鼻呼吸も可能なこと、マスク内への浸水が少ないこと、入っても排水弁から排水されることなど、初心者や障害者に向いている面は数多くある。

ダイビングハーフマスクとシュノーケルの組み合わせ(図説)

シュノーケル

日本語では「シュノーケル」とも「スノーケル」ともいう。前者はドイツ語名 "Schnorchel" の音写形、後者は英語名 "snorkel" の音写形である。

顔面を水に漬けた状態で呼吸をするためのJ字型の管である。スクーバダイビングでも目的地点付近までは水面を移動することが多く、タンク内の空気を節約するために使用される。マスクストラップの左右どちらでも取り付け可能であるが、スクーバダイバーの場合はレギュレーターのホースが右側から伸びてくるため、左側に装着するのが一般的である。排水弁付きが一般的であるが、あえて弁無しを選ぶダイバーもいる。21世紀初期には上部から水が入りにくいドライトップ付きの製品も多くなったが、どんなスノーケルであっても水は容易に浸入することを使用者は常に念頭に置いて呼吸する必要がある。

下部がU字管のように曲がっているタイプと、蛇腹状で使わないときには真っ直ぐの状態になっているタイプがあり、前者はシュノーケラー(シュノーケリングする者)向き、後者はスクーバダイバー向きという説もある。

スイムフィン

ダイビング(潜水)やシュノーケリングをする者の多くが用いる道具に、鯨類クジラ目動物)や鰭脚類が脚部に具える上下運動型のフリッパー (cf. en) に酷似した、足元に装着するフリッパー状のものがある。これを英語では "swimfin(s)"、"swim fin(s)"、"fin(s)"、"flipper(s)" などという。日本語では、英語名の音写形である「スイムフィン」「フィン」「フリッパー」のほか、古くからの名称(※これも外国語名の漢訳語か)「足鰭/足ひれ」が用いられる[注 4]人体の部位のなかで最も大きな運動力を生み出せるが、その力(脚力)の一つである陸上で前に進む力を水中における上下運動[注 5]に置き換え、水中での前方への推力に変換するのがスイムフィンであり、水域(水中や水面下)での移動を劇的に効率化できる。

モノフィン(左)とステレオフィン(右)
フルフットフィン(左)とオープンヒールフィン(右)

スイムフィンには、2本で構成されるヒトの脚に合わせてと同じように独立した2本が1セットになっているタイプと、鯨類のフリッパーのように(あるいは、西洋タイプの人魚の尾鰭のように)1枚の大きな面で水を捉えるタイプがあり、1949年に遅れて開発されてきた後者を「モノフィン: monofin)」と呼ぶ一方で、以前からあった前者を「従来型フィン」の意味合いをもって「ステレオフィン: stereo-fins)」と呼んだり、「ビーフィン: Bi-fins, BF)」と呼ぶようになった。

スイムフィンを足に装着する際に足を入れる部分を「フットポケット(: foot pocket(s))」というが、これを基準にする場合は、以下の2種類に分類することができる。

  • オープンヒールフィン: open-heel fin(s)
ストラップフィン」ともいう。かかと)の部分をストラップで留めるタイプ。踵と部分の皮膚との摩擦を防ぐため、マリンブーツを着用の後、装着する。大まかなサイズ設定はあるがストラップの調整が利くのでサイズの融通性が高い。ストラップに一般的なゴムバンドではなく、ステンレススプリングを用いたタイプは装着後の調整は不可能だが、サイズ(長さ)が適切なら利便性、耐久性及び快適性に優れる。
  • フルフットフィン: full-foot fin
フットポケットが踵の部分までを覆っている。素足に装着するダイバーが多いが、薄手のフルフットフィン専用ブーツも各種市販されている。

デリケートなくるぶし)周りを保護するため、また、フィン擦れを防止するために専用ブーツや専用ソックス(※薄手のものが理想)の着用が望ましい。サイズの微調整は一切できず、一般の靴のような細かいサイズ設定があるわけではないので、ぴったり合わせるためには若干の工夫が必要である。フルフットフィン専用ブーツや専用ソックス、なかには磯足袋(いそたび)などを履いているダイバーもいるが、それらは身体の保温・保護のためであると同時にフィンに足を合わせるための道具でもある。

フィンの硬さや長さ、素材などにより、様々な種類が発売されている。一般に、硬質素材で作られた大型のもののほうが脚力を推力に変換する効率がよく、かつ、大きな最大推力を出せるとされているが、その反面、強い脚力がなければ効率の良いフィンキックを行えない。作業潜水において重量物を運搬する場合には軟らかいフィンでは必要な推力を得ることができず、反対にレクリエーショナルダイビングにおいて体力に合わない硬いフィンを使用すれば体力を無駄に消耗することになる。このようなことから、自分の脚力とダイビングスタイルに合ったものを選ぶことが重要とされている。ウェットスーツ着用時とドライスーツ着用時では、ブーツの大きさの関係でフィンの共用が困難であることも多い。また、中級以上のダイバーともなれば、潜るポイントに応じて適切と思われるフィンを使い分けることもごく普通である。

被服

保護スーツ

身体が長時間に亘って水中や水上にあるような仕事(※最広義の『仕事』のことであり、『遊び』も含む)に従事する者は、体温の低下を防ぐ準備が必須があり、場合によっては、想定される有害な物理的接触も未然に防がなければならない。そのような目的に適うよう開発された被服が、英語でいうところの "'exposure protection suit" あるいは "exposure suit"、日本語でいうところの「保護スーツ」である。保護スーツには、着用者の身体が水に濡れることを前提にした「ウェットスーツ/ウエットスーツ」と濡れないことを前提にした「ドライスーツ」の、大きく分けて2種類がある。

ダイビング(潜水)やシュノーケリング/スノーケリングをする者は、基本的には体温以下の水の中で行動するため、本格的あるいは長時間に亘って行う場合には保護スーツを着用するのが通例となっている。また、ダイバーは、仕事の種類によってウェットスーツとドライスーツを使い分ける。過酷な低水温の中ではよほど特殊な人以外にはやりようのないスキンダイビングで使われるのはウェットスーツか一般的な水着のいずれかであるが、スクーバダイビングテクニカルダイビング洞窟潜水など、低水温の中で従事することもあるダイビングでは、ウェットスーツとドライスーツを環境に合わせて使い分ける。

水着

本格的なスキンダイビングスクーバダイビングでは、水中で低体温症の危険が生じても、すぐに上陸して暖を取るなどの対処ができない場合も多く、保温力をもたない水着のみを着用して潜水することは危険である。また、岩やサンゴに触れることによる皮膚の損傷防止という観点からは、全身、少なくとも胴および脚部全体を覆う被服を着用して潜水することが好ましい。したがって、日本を含む世界の多くの国・地域では保護スーツの着用がほぼ通例となっており、水着のみを着用して潜水することは、熱帯などかなり水温の高い地域で、かつ、受傷の原因となる物体に触れる危険性が相当低い場合でない限り、一般的でない。ただし、沿岸の限られた範囲で行われるシュノーケリング/スノーケリング(※潜水というほど深く潜らない)においては、保護スーツを着用しない場合も多い。しかし、ウェットスーツは身体の保温と保護だけでなく浮力確保という目的もある。その浮力を相殺するためのウェイトを捨てさえすれば十分な浮力が確保できるが、水着やラッシュガード等の浮力が無いものしか着用していないダイバー(やシュノケラー)は、その緊急時の浮力確保ができない。なお、保護スーツ(特にウェットスーツ)の下着として水着を着用することは一般的である。できるだけ身体に密着するシンプルなタイプの水着が望ましい。

ウエイト

ウエイトベルトの一例。ダイビングスーツや他の器材の浮力に応じて、あらかじめ錘を増減しなければならない。バックルのレバーを引き起こすとクイックリリースできる。

保護スーツなどの器材は浮力を有するため、これらを身に付けて潜行することは不可能ないし困難である。こうした浮力を相殺し、潜行を可能ないし容易にするため、金属(主として)製のを身に付けることが必要になる。ダイビングではこれを「ダイビングウエイト/ダイビングウェイト: diving weights)」、システムを「ダイビングウエイトシステム/ダイビングウェイトシステム: diving weighting system)」といい、それぞれを略して「ウエイト/ウェイト: weights)」「ウエイトシステム/ウェイトシステム(: weighting system)」と呼んでいる。

穴の空いた錘をナイロンなどの繊維でできたベルトに取り付け腰に装着する場合が多いが、ポケットに錘を入れたベスト状の器具(ウエイトベスト)や、BCに組み込まれたウエイト専用ポケットを使用する場合もある。こうしたベルトやポケットは、緊急時に錘を捨てて浮上することができるよう、身体からワンタッチで取り外せるようになっている(クイックリリース)。装着したウェイトベルトの先端をたくし込むなどの「端末処理」は、クイックリリースの妨げとなるので禁則事項である。

BCDにウェイトを装着する場合、ウェイト専用ポケット以外のポケットには原則としてウェイトを入れてはいけない。第一の理由はクイックリリースができないことで、ウェイトの脱落、ポケットの破損などのデメリットもある。


注釈

  1. ^ 「イクイットメント」など他の音写形も無いわけではない。
  2. ^ キーワード検索[ ダイビング 3点セット ]。なお、例外もある。
  3. ^ キーワード検索[ ダイビング 軽器材 ]
  4. ^ 日本語と同じ漢字文化圏でも、中国語では「足 + 蹼(みずかき)」の意で「脚蹼」という。
  5. ^ 水泳バタフライ泳法で行う「ドルフィンキック」は、両脚を揃えて足の甲で水を上下に打つキック泳法であり、本文で論旨としている「水中における(脚の)上下運動」を人体のみで行っていることになる。
  6. ^ 現在の専門家および専門業者は「スクーバ」を正式名称と定め、「スキューバ」を用いないことから、「スキューバセット」という用語は目にしない。
  7. ^ 高圧ガス保安協会等の公的機関では高圧ガス容器と呼んでいる。
  8. ^ 減圧の手順を決定できる減圧表と呼ばれる早見表も存在するが、レクリエーショナルダイビングにおいては通常、減圧を実施しなければならない潜水は行わない前提としている。
  9. ^ ダイブ・テーブルの元来の作成目的であった作業ダイビングにおいては、できる限り短時間で作業深度まで到達し、浮上も同様に行うため、潜水時間と最大深度への滞在時間はほぼ同一であり、ダイブ・テーブルを用いて潜水計画を立ててもあまり問題はなかった。

出典

  1. ^ equipment”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2020年4月16日閲覧。


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