ゴム 種類

ゴム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/03 05:08 UTC 版)

種類

原料による分類

ゴムにはゴムノキの樹液(ラテックス)によって作られる天然ゴムと、人工的に合成される合成ゴムが存在する。

天然ゴム

天然ゴムの構造

天然ゴム (NR) はゴムノキの樹液に含まれる cis-ポリイソプレン [(C5H8)n] を主成分とする物質であり、生体内での付加重合で生成したものである。樹液中では水溶液に有機成分が分散したラテックスとして存在し、これを集めて精製し凝固乾燥させたものを生ゴムという。生ゴムも弾性材料として消しゴムなどに使われるが、硫黄による加硫により架橋させると広い温度範囲で軟化しにくい弾性材料となる。この加硫法による弾性改良はチャールズ・グッドイヤーにより1839年に発見された[1]。硫黄の他に炭素微粉(カーボンブラック)を加えて加硫すると特性が非常に改善され、その含有量によって硬さが変化する。多くの硬質ゴム製品はこの炭素のために黒色をしている。黒くないゴム製品にはカーボンの代わりに湿式シリカ(二酸化ケイ素の微粉)を加える。このためシリカは炭素(carbon)を含まないにもかかわらずホワイトカーボンとも呼ばれる。

なおイソプレンを化学的に重合させたポリイソプレンは合成ゴムの一種であるが、天然ゴムのポリイソプレンとはいくらかの構造的違いがある。まず合成ポリイソプレンでは現在のところ100%シス体を得ることはできず、少量のトランス体が含まれている。また天然ゴムはポリイソプレンの他に微量のタンパク質や脂肪酸を含むが、合成ポリイソプレンにはそのような不純物はない。

天然ゴムは殆どシス型のポリイソプレンから出来ているが、その一方トランス型のポリイソプレンから出来ているものをガタパーチャまたはグッタペルカと言う。ガタパーチャは東南アジアに野生するアカテツ科の常緑高木グッタペルカノキ (palaquium gutta) などのラテックスから作られる天然樹脂の一つであり、天然ゴム、ガタパーチャ双方ともポリイソプレンから出来ているが、天然ゴムは高い弾性限界を示し、グッタペルカは示さない。この弾性限界の違いは幾何異性体の性質によるものである。即ち、シス型のポリイソプレンは分子鎖が折れ曲がった構造をとって不規則な形を取りやすく、分子鎖と分子鎖の間に多くの隙間を生じ分子間力が比較的小さくなる為、分子同士の結晶化が起こらず軟らかな性質を持つようになるが、それに対してトランス型のポリイソプレンは分子鎖が直線構造をとりやすく、分子鎖と分子鎖の距離が近くなる為、分子間力が強く作用し分子間で微結晶化を引き起こし、硬い樹脂状の物質となる。

但し、シス型であることは弾性限界の増大の十分条件ではない。ポリイソプレンにおいては側鎖であるメチル基の影響もあり高い弾性限界を持つのはシス型であるが、例えばクロロプレンゴムはトランス型であるが高い弾性限界を有する。

天然ゴムに含まれる微量のタンパク質や脂肪酸はポリイソプレン鎖の末端に結合していると考えられている。このタンパク質はアレルゲンとなることがある[16]

合成ゴム

合成ゴムには、ポリブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系などがある。いずれも付加重合または共重合によって得られる。以下にJISによる分類別に示す[1]

用途による分類

ゴムは用途により自動車タイヤ用の汎用ゴム(一般用ゴム)とそれ以外の特殊性能を持つ特殊ゴムに分けられる[3][17]

形状による分類

ゴムは形状により固形ゴム、液状ゴム、粉末ゴムに分けられる[3]。また、原料ポリマーの形状によりドライラバーやラテックスに分けられる[3]


  1. ^ a b c 伊藤眞義『図解入門よくわかる最新ゴムの基本と仕組み』秀和システム、2009年。ISBN 978-4-7980-2425-7 
  2. ^ a b c d 化学はじめて物語”. 日本化学工業協会. 2020年2月10日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i 前田守一「配合設計 (1) 原料ゴムの種類と性質」『日本ゴム協会誌』第51巻第8号、632-640頁。 
  4. ^ 下川耿史『環境史年表 明治・大正編(1868-1926)』p.391 河出書房新社 2003年11月30日刊 全国書誌番号:20522067
  5. ^ 我国ゴム工業誕生の地発祥の地コレクション、2006年7月
  6. ^ a b c d 三田土護護製造株式会社の話西岡正光、日本ゴム協会誌ひすてれしす、第69巻第1号(1996)
  7. ^ 土谷秀立(つちやひでたつ)谷中・桜木・上野公園路地裏徹底ツアー
  8. ^ 創刊70周年特別企画 ゴム産業の変遷60年 1992~2005ゴムタイム、2016年10月24日
  9. ^ a b c 配合師 第1報山田均、日本ゴム協会誌、第84巻 第11号(2011)
  10. ^ a b c d e 戦前日本企業の東南アジアへの事業進出の歴史と戦略- ゴム栽培、農業栽培、水産業の進出を中心として丹野勲 神奈川大学 国際経営論集 No.51 2015-03-31
  11. ^ 高弾性 大辞林
  12. ^ 高弾性 大辞泉
  13. ^ a b 日本ゴム協会 編『ゴム技術入門』丸善、2004年。ISBN 4-621-07393-1 
  14. ^ a b c カシオ EX-word XD-SF6200収録 ブリタニカ国際大百科事典 小項目電子辞書版 『老化(ゴムの)』
  15. ^ a b カシオ EX-word XD-SF6200収録 百科事典マイペディア 電子辞書版 『老化(化学)』
  16. ^ 長岡技術科学大学化学系の天然ゴム研究
  17. ^ 1. 1 はじめに”. 東京材料. 2020年6月24日閲覧。
  18. ^ a b c d 渡辺訓江, 近藤肇「ゴムの工業的合成法」『日本ゴム協会誌』第90巻第4号、2017年、210-214頁、doi:10.2324/gomu.90.210  アーカイブページ
  19. ^ International Standards of Quality and Packing for Natural Rubber Grade というマニュアルによる格付け[18]
  20. ^ TOCOMにTSR上場、日本が発信する天然ゴムの国際指標”. 2019年10月23日閲覧。
  21. ^ a b TOCOM、TSR(技術的格付ゴム)上場へ”. 株式会社ポスティコーポレーション. 2019年10月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月23日閲覧。
  22. ^ a b 第10条1号 : 業務規程”. 株式会社東京商品取引所. 2019年10月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月23日閲覧。






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