アイマラ語 アイマラ語の概要

アイマラ語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/11 01:58 UTC 版)

アイマラ語
Aymara
話される国 ボリビア
ペルー
 チリ
アルゼンチン
地域 南アメリカ
民族 アイマラ
話者数 約200万人
言語系統
アイマラ諸語
  • アイマラ語
表記体系 ラテン文字
公的地位
公用語

ボリビア

ラパス県 (ボリビア)
オルロ県
ポトシ県(北東)

ペルー

モケグア県
プーノ県
タクナ県
少数言語として
承認

 チリ

アリカ・イ・パリナコータ州
タラパカ州

アルゼンチン

フフイ州
言語コード
ISO 639-1 ay
ISO 639-2 aym
ISO 639-3 aymマクロランゲージ
個別コード:
ayr — 中央アイマラ語
ayc — 南アイマラ語
消滅危険度評価
Vulnerable (Moseley 2010)
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歴史と現在

アイマラ語は、もともとペルー中央部リマ県の山間部に起源があるハケ語族(Jaqi)に含まれる。この系統の語族の中には、ハカル語やカウキ語が含まれる。こういったことから、アイマラ族は、ティワナク崩壊後にペルー方面からチチカカ湖周辺に下ってきたという説がある。しかし、言語学者で支持する研究者は少なく、詳しいことはわかっていない。リマ県の山間部にあった同系統のハケ語族はスペイン語に吸収されていったが、スペイン人の侵略以前は、かなり広範囲にハケ語系言語が現在のペルー南部地域で話されていた。また、16世紀のスペイン人の侵略時には、クスコアヤクーチョでもアイマラ語やそれに近い系統の言語を話す人々が多かったことが記録されている。モケグア県アレキパ県もアイマラ語圏であったという。

ボリビアでは、ラパス県、オルロ県、ポトシ県に集中しており、ペルーではプーノ県に集中している。

また、1970年代初頭に調査を行ったLucy Therina Briggsによれば、アイマラ語は、北方言と南方言に分かれるという。北方言はチチカカ湖周辺、南方言はポオポ湖周辺に分布しており、その中間形態がペルーのモケグワ県とタクナ県で話されているという。さらに、これらの方言区分とは別に、都市部で用いられる中央方言、遠隔地域で話される周辺方言とに、Briggsは分けている。これは接辞の音韻の変化などに基づいている。


現在もボリビア、ペルーなどで話されているが、アイマラ語しか話せない人は近年少なくなっている。特に都市部ではアイマラ語しか話せない人はほぼいない。むしろ、アイマラ族が多数居住するエル・アルト市においても、アイマラ語を全く解さずスペイン語しか話せないという人が若者を中心に増えてきている。

近年は古い文化を見直す動きが高まっており、アイマラ語についても衰退させないための活動が増えてきている。例えばボリビアでは、アイマラ語専門のラジオ局ができたり、医師には勉強を義務づけるなどの動きがある。また、インターネットから利用できるアイマラ語辞書のページ[2]も作られた。ウィキペディアにもアイマラ語版が存在する。アイマラ語の新聞出版されている。しかし、都市部においては、実際は日常生活でアイマラ語が多く利用されることはほとんどなく、またアルファベット化の問題もあり、日常生活で文字文化として触れる機会は少ない。ただし、ラパスやプーノでも市場などではよく話されている。

ペルーやボリビアでは、小学校からスペイン語教育が徹底されるため、早くからスペイン語に触れる機会が増えてきている。また、商業や通信などほとんどの場で、アイマラ語に触れる機会が少ないため(ただし、電話のインフォメーションなどではアイマラ語やケチュア語が選択できる)、あるいはアイマラ語を必要としないため、都市部に近いところでは、若者がアイマラ語を話さなくなってきており、アイマラとしてのアイデンティティーが失われ、ペルアーノ(ペルー人)、ボリビアーノ(ボリビア人)としての新しいアイデンティティーが形成されつつある。これは新大陸、特にメキシコ以南のラテンアメリカ諸国における先住民のアイデンティティーが各自の言語と密接に結びついていることを、如実に示している。

音韻体系

アイマラ語の母音は /a/,/i/,/u/の3種類をもち、長短を弁別する。ただし、音声的には[e],[O]、[Λ] なども現れる。母音の長短は、音韻的には区別があるが、語根の弁別に関与することはまれで、接辞に連なる際に形態音韻論的な過程に関連する。中国語や英語と異なり、声調やアクセントは単語の弁別にはかかわらない。アクセントの強勢がおかれるのは、語の最後から2音節目である。ただし、語末の母音脱落時にもアクセントは移動しない。

子音は26種類(一部の方言では27種類)ある。 閉鎖音の調音の位置について、平音、帯気音(有気音)、放出音(喉頭化音)の3系統が区別される。調音点では、唇音歯茎音軟口蓋音硬口蓋音口蓋垂音の閉鎖音を音素上弁別する。閉鎖音は有声と無声を区別しないが、朝鮮語のように、無気音、有気音声門閉鎖音を伴うものを弁別する。そのほか、鼻音側音には歯茎音と軟口蓋音の区別があり、顫動音の /r/, 二つの半母音(/w/ と /j/)がある。強勢は通常次末(最後から二番目の音節)にあるが、長母音はその限りではない。元々は書き文字を持たなかったが、現在はスペイン語アルファベットと記号を用いて表記している。




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