高LDL-Cの治療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 21:22 UTC 版)
HMG-CoA阻害薬であるスタチン系が第一選択となる。重大な副作用としては肝障害と骨格筋障害が知られている。筋肉痛といった症状が出現することが多く、筋炎や横紋筋融解症は極めて稀である。筋疾患や甲状腺機能低下症が認められる場合は横紋筋融解症のリスクが高まるため注意が必要である。高齢者や肝機能障害、腎機能障害がある場合も注意が必要である。重症(目標値よりも50 mg/dL 以上高い)であればアトルバスタチン(Lipitor リピトール)、ピタバスタチン、ロスバスタチンが選択されることが多く、軽症(目標値との差が30 mg/dL 以内)ならばプラバスタチン、シンバスタチン、薬物相互作用が気になる場合はプラバスタチン、ピタバスタチンが選択されることが多い。相互作用はマクロライド系抗菌薬、アゾール系抗真菌薬、カルシウム拮抗薬など多岐にわたる。 ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)阻害薬であるロミタピド(商品名「ジャクスタピッド」)は、「ホモ接合体家族性高コレステロール血症」に対する適応を取得している。MTPは肝細胞および小腸上皮細胞に多く発現し、トリグリセリドをアポタンパクBへ転送することで、肝臓では超低比重リポタンパク(VLDL)、小腸ではカイロミクロンの形成に関与している。ロミタピドは、小胞体内腔に存在するMTPに直接結合することで、肝細胞および小腸細胞内においてトリグリセリドとアポタンパクBを含むリポタンパク質の会合を阻害する。その結果、肝細胞のVLDLや小腸細胞のカイロミクロンの形成が阻害され、LDL-C値が低下するとされている。 前駆蛋白変換酵素サブチリシン/ケキシン9(PCSK9)を阻害するモノクローナル抗体であるアリロクマブ(商品名「プラルエント」)とエボロクマブ(商品名「レパーサ」)は、両者ともに「家族性高コレステロール血症」または「コレステロール血症」で、「心血管イベントの発現リスクが高い」「HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又はHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない」の両者を満たす患者に投与される。PCSK9はLDL受容体を分解する作用を持つが、両薬剤ともにPCSK9のLDL受容体への結合を阻害することで、LDL受容体の分解を抑制し、血中LDL-Cの肝細胞内への取り込みを促進する。
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