鉄輪式世界最高速度の記録
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 15:02 UTC 版)
「TGV POS」の記事における「鉄輪式世界最高速度の記録」の解説
第4402編成は、東ヨーロッパ線開業前にSNCF・アルストム・フランス鉄道線路事業公社 (RFF) の三者による「V150プロジェクト」として特別編成を組成し、2007年1月15日から開始された試験運行で同年4月3日に鉄輪式における世界最高速度574.8 km/hを樹立した。「V150」とは秒速150 m = 時速540 kmを意味する。先立つ2007年2月14日には1990年5月18日にAtlantique第325特別編成がLGV大西洋線で樹立した鉄輪式世界最高速度記録515.3 km/hを上回る554.3 km/hを、続いて2月20日には559.4 km/h、3月29日は568.4 km/hをそれぞれ記録しているが、いずれも非公式記録である。 第4402特別編成は両端2両の動力車384003・384004号と中間3両のDuplex編成用客車の5両で組成された。車輪直径は通常の920 mmから1,080 mmに拡大され、客車の台車4台のうち2台に、AGVのプロトタイプで採用する出力1,000 kWの永久磁石同期電動機を4基装備し、動力車に装着されている誘導電動機も通常の1,160 kWから1,950 kWに増強された。この結果、編成出力は通常のPOS編成の約2倍の19,600 kW、パワーウェイトレシオは73 kW/tと小型自動車に匹敵する数値となった。編成長は106 m、空車時重量は268 tである。 この試験運行時には、先頭動力車のパンタグラフは不要のためカバーで覆われ、ノーズ部は運転台風防ガラス前面へのガラス追加とエアーダクトカバー設置、左右一体連結器カバー採用により段差が極小された。客車3両はDuplex編成により動力車との急激な断面積変化を抑え、車体底面カバーの増設と車両連接面間カバーが拡大、増設された。これらの空力的な改造により、走行抵抗を15 %減少させている。加えて動力車には600個以上のセンサが設置された。 試験運行に際しては500 km/h以上の速度域での最大電流を確保するために架線電圧は31,000 Vに、架線張力も通常の20 kNから40 kNに強化され、分岐器の固定と、バラストの強化など最高速度記録挑戦に向け万全の体制が取られた。 最高速度は13時16分にLGV東ヨーロッパ線の191km地点、ムーズ=TGV駅 - シャンパーニュ=アルデンヌ=TGV駅間で記録された。試験運行および新記録達成の模様はテレビで生中継された。小型ジェット機を飛行させ、走行する特別編成を上空から追跡する実況中継も実施された。 試験終了後の5月に先頭車と次位の客車がパリ7区・エッフェル塔近くのセーヌ川畔で展示された。その後、中間車は主電動機を撤去した上でDuplex編成に組成され、動力車は当時の車体塗装を残したまま、世界最高速度記録達成記念のレタリングを施し本来の仕様に復元された後にRéseau編成から捻出された客車と組成され、営業運転に使用されている。2013年に車体外装がTGV Lyria仕様の塗色に変更されたが、当該車両が世界最高速度を記録した車両であることを示すレタリングが施されている。 展示のためセーヌ川を艀で輸送される第4402特別編成(2007年5月) パリ・セーヌ川畔で展示された第4402特別編成(2007年5月) 第4402特別編成の中間車(2007年5月)
※この「鉄輪式世界最高速度の記録」の解説は、「TGV POS」の解説の一部です。
「鉄輪式世界最高速度の記録」を含む「TGV POS」の記事については、「TGV POS」の概要を参照ください。
- 鉄輪式世界最高速度の記録のページへのリンク