結成初期~絶頂期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/18 06:27 UTC 版)
詳細は「ペルシア戦争」および「第一次ペロポネソス戦争」を参照 結成当初は「対ペルシア侵攻」を想定した、アテナイと環エーゲ海の諸ポリスの海軍力を一定に保つための軍事同盟であった。(テミストクレス~キモン~ペリクレス時代) ペルシアの保有する艦船の数は多かった。ペルシアはフェニキアやエジプトを臣従させ、港に停泊する船を徴発した。その物量に対抗する艦船数が戦争前のギリシアは及ばなかった。この問題を解決するために、テミストクレスはアテナイとピレウス港を一本化し、保有する戦艦を200隻まで増やした。ただ増やしただけでなく、修理・回収ができるだけの設備をピレウス港に増築し、物資を常に備蓄させている。戦艦を操る漕ぎ手たちを公務員として常に抱え、技術者たちの錬度が下がらないように維持していた。ピレウス港は工廠として機能するように作り変えられ、アテナイを“海運”国家から“海軍”国家へと変貌させた。この軍拡によって、ペルシャ戦争におけるサラミスの海戦で、ペルシア艦隊をほぼ全滅させクセルクセスを追い返した。しかし、戦争後もペルシア帝国が再度侵攻するのではないかという不安が残った。ペルシアの脅威という問題を解決するために結成されたのが結成当初のデロス同盟であった。 エーゲ海の沿岸部や、島にある小さな都市国家同士が力を合わせることでペルシアの海上侵略を防ごうとしたのだった。 しかし、艦船と漕ぎ手の維持には莫大な維持費が必要となる。これはアテナイだけでなく、他の都市国家も同様に軍事力の維持が課題となった。 ペリクレスは各ポリスの総生産に応じて納金額を調整し、貢納義務を課した。加えて、非常時にはアテナイ海軍力への支援を約束した。これにより、ギリシア世界全体の海軍力を高めたまま維持することが可能となった。 ところが、カリアスの和約によりペルシアと不可侵条約が結ばれる。加えて、アテナイとスパルタとの間にも休戦協定を結び、ペリクレス期のギリシア世界には内乱や騒乱を除き平和な時代が訪れた。それは同時に、ペルシアからの侵略の脅威も消失し、デロス同盟の意義を問い直さなければならないこととなったことを意味した。 平和になったことにより軍事同盟としてのメリットが消失してしまい、分担金だけをアテナイが占める形になってしまった。 そこでペリクレスは、200隻の三段櫂船を「商船」として利用することにした。そうすれば、船の漕ぎ手という技術職者を常時保有でき、環エーゲ海のマーケットの発展という形でデロス同盟を維持できるからだ。加えて、他のポリスはアテナイの軍艦に守られて商品を運搬できるため海賊への対策としても利用できるメリットがあった。 このように、環エーゲ海の海運国家経済を良くするために同盟を運用することとなった。これにより、デロス同盟は「軍事同盟」から「経済同盟」の意味合いが大きくなってゆく。 このエーゲ海へ展開したマーケットにより、デロス同盟加盟国家の経済は格段に向上して戦後の高度経済成長を促した。出土品などからさまざまな都市国家との交易が行われていたことがわかっている。平和になったことでペルシャも交易相手としてアテナイや他の諸都市と貿易を行っていた。ギリシア世界、そしてペルシャのあらゆる商品がアテナイに集り、そこに資産家や実業家が集る。 当然、発展する都市には学問も隆盛し、ギリシア世界の学問の中心がアテナイへと移っていったのもこの時期である。強力な軍事力でギリシア世界の独立を守り、ペリクレスやスパルタのアルキダモス王たちの努力によって、繁栄の時代を作り上げた。この時期は、アテナイの民主主義の最盛期と呼ばれ、アテナイのペリクレスの評価にも繋がっている。 だが、民主主義を採用するアテナイや他の諸ポリスで出た意見も尊重しなければならなかった。そこで発生したのがサモス島のポリスの反乱であった。ペリクレスはこれに対し武力でもって鎮圧を行った。しかし、戦後処理としては主犯格の数十名を処刑したのみで他の反逆者たちはペルシャのサトラベに一時的に拘留されただけで帰国した。また、ポリスを植民地化せず独立を維持させることにより「デロス同盟とは海運ポリスの運命共同体である」ことを印象付けることとなった。デロス同盟とは海運ポリス同士の助け合いのために不可欠であり、非常時には助け合わなければならず、そこに上下の無いことを強調した。この処置が後に最後まで親アテネ国家として残るサモス島と、次の記事で国家ごと植民地にされたがために真っ先に反旗を翻すレスボス島との決定的な違いとなって現れる。あくまで、どんな国家もデロス同盟には必要であるという一体感を、扇動家たちは踏みにじることになる。
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