競輪選手の生活
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 09:12 UTC 版)
まず、競輪を開催する施行者(各競輪場)より委託を受けたJKA(旧・日本自転車振興会)の各地区本部がJKAあっせん課に対しあっせん依頼を行い、あっせん課はスケジュールや脚質など公正に勘案した上で選手に対しあっせん通知メールを送信する。基本的に、毎月27日前後に2か月先の斡旋のメールが選手宛てに送信され、それを受信した選手はメールの内容(あっせん先の競輪場・開催期日など)を確認し、参加・不参加に関わらず意思表示をしたメールを返信することで、改めて開催施行者から参加通知メールが送信される。これで施行者と選手との間で契約成立となる。このように、選手側からすればあっせんは受け身の立場となるが、次の出走予定との間が長く空いてしまう場合や、中々あっせんのない競輪場で出走したい場合などで、選手の側から選手会を通してあっせんの要望を出すことも可能である(但し、施行者側がそれを受け入れるかは別の話であり、選手の側からの希望は滅多に通らない)。 ちなみに先頭誘導員のあっせんについても同様に、メールの送受信により契約となるが、競走参加依頼のものとは異なり不定期である。 選手はあっせんされた競輪場へ前検日(開催前日)の13時(先頭誘導員の場合はレース当日朝9時)までに赴き、選手登録証と通信機器を窓口に提出したあと、その日のうちに身体・車体など所定の検査を受けて「異常なし」と判断されれば、翌日以降の競走に参加できる。仮に身体や車体に「異常あり」と判断されればその場で契約解除となり競走には参加できず、規程により「前日検査不合格」という扱いとなる。なお、配送を委託した部品や自転車が前検日に競輪場に届かず検査が受けられない場合なども契約解除となるが、選手の責任を問えないと判断された場合は通常の欠場扱いとなる。 あっせんされた開催に対して出場・欠場ないし不参加の判断は自由であるが、最終的に一定期間内で義務付けられている「最低出走回数」は原則クリアしなければならず、特に男子はクリアできなければ級班別審査(格付け)においてもマイナス点が与えられ、降級・降班となることもあるなど不利になる。一方、女子(ガールズケイリン)は現状は全員がL級1班のため降格はないものの、ガールズグランプリなど特別競走では選考期間中の最低出走回数を満たさなければ選考から除外されてしまう規程があり、やはり不利となる。 競走の公正確保(八百長防止)の観点から、前検日に競輪場入りしてから帰宅するため競輪場を離れるまで、選手全員が競輪場併設の選手宿舎に隔離状態にされ、外部との接触や連絡はたとえ身内でも一切禁止となり、携帯電話や通信機器など も前検日に競輪場に必ず預けなければならない。競走参加中に、通信できない状態であっても通信機器を所持ないし届け忘れが発覚すれば競輪場から即日契約を解除され、かつ一定期間のあっせん停止など厳しい処分が課せられ、更に使用が発覚した場合にはより重い処分となり、過去には手島慶介などがこの処分を受けている。 選手宿舎は、12畳1室で4人相部屋となっている。居室は概ね、共用の座敷(談話室、テレビ・冷蔵庫などが置かれる)と個別の就寝スペース(通称「巣箱」)で構成されており、就寝スペースはカーテンで仕切ることが可能。選手の宿舎内での生活は、基本的に、食事・風呂・トレーニング・同室の仲間との会話がほとんどである。ただ、通信機能のない電子機器は持込可能なため、現在ではポータブルDVDプレイヤーで映画等を見る選手や、未だにゲームボーイアドバンスでゲームを楽しむ選手もいる。また、かつてはカメラの持ち込みについても禁止とはされていなかったため宿舎内の様子を帰宅後に自身のブログにアップしたりした選手もいたが、現在はカメラの持ち込みも禁止としている。この宿舎内での選手の生活については、競輪業界に題材をとった漫画『ギャンブルレーサー』などに詳しい描写がある。 基本的には開催初日から最終日まで毎日1走する(5日間ないし6日間開催のGIレースでは休み日を挟むこともある。なお、先頭誘導員は原則として1日2走する)。帰宅の際、競輪場から賞金・手当が支給される。ただ、レースで失格と判定されたり違反行為が発覚したときは、開催途中であってもその時点で競輪場からあっせん・参加の契約を解除(“追放”)され即日帰郷となる。また、グレードレースでは、準優勝戦開催日の一般戦で成績不振の選手については、最終日を待たず帰郷とすることが多い。このほか、出走したレースで落車し怪我を負ったり成績が振るわなかった場合、選手が自らの判断で以後の競走は棄権し途中帰郷することもある。 競走のない日は、主に非開催日の競輪場や街道で練習を行ない、次の参加レースに備える。この生活を月に2 - 3回ほど繰り返す。ただ、競輪は基本的にほぼ毎日全国どこかの競輪場で開催されているため、次に出場予定の開催まで長く間隔が空いている場合、出場予定の選手が急遽欠場したため数合わせで『追加』として、他にも開催中に出場選手が失格などで途中帰郷し選手数が不足した場合は『補充』として、それぞれイレギュラーであっせんを受けることもあるため基本的に休みというものはなく、特にお盆や正月には多くの開催が集中するため、競輪選手にお盆や正月はあってないようなものである。 なお2020年以降は、新型コロナウイルス感染症への対応から、選手宿舎の運用が一部変更されている。具体的には「本来4人部屋のところを1人または2人で使用する」「一部の選手は近隣のホテルに分宿する」「宿舎・ホテルでの飲酒禁止」といったもので、特にホテルへの分宿については「シングルルームなので喜んでいる」向きもある一方で、「時間の制約が厳しくコンディショニングに悪影響が出る」「次の日の朝まで自分の走りすら見ることができない」といった不満を漏らす選手もおり、賛否両論がある。
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