県内の影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 06:13 UTC 版)
愛知県は全国屈指の漁獲量を有する漁業が盛んな地域で、海老煎餅などの菓子や、エビの天ぷらを挟んだ「天むす」のほか、お祝い事の際には海老料理が欠かせず、結婚式の格式をエビフライの数と大きさで決めるなど、無類のエビ好きな県民だった。一方で名古屋市内および県内の一世帯当たりのエビ消費量は全国平均をやや上回る程度であり、1980年代初頭の時点ではエビフライが名古屋名物として紹介される事例はなかった。漫画家の江川達也によればエビは「冠婚葬祭でしか食べられない贅沢品」だった。 1990年(平成2年)にはクルマエビが愛知県・県の魚選定委員会により満場一致で「愛知県の魚」に選定されたが、県の魚に制定された経緯についてはタモリが広めた「エビフリャー」からの影響が指摘されている。なお、エビは節足動物門であって、魚類の属する脊椎動物門ではない。 その後、エビフライが名古屋名物と勘違いをされる風潮に飲食業界が着目すると、約30センチの大きさを持つ「ジャンボエビフライ」、エビフライを丼に2本差しドミグラスソースを加えた「しゃちほこ丼」、エビフライをパンに挟んだ「エビドッグ」や「エビサンド」、卵とエビフライを使った「しゃちほこいなり」など店舗ごとに趣向を凝らしたメニューが次々に創作されるようになった。さらにエビフライをかたどった携帯ストラップやぬいぐるみなどのグッズも販売されるなど、名古屋名物の一つとして定着している。 中には「名古屋人のエビフライ好きは金鯱に似ているところから来ているという説もある」あるいは「エビの豪華さが金鯱の形に似ているので、名古屋の豪華絢爛なイメージにもマッチした」と、名古屋名物の一つである名古屋城の鯱と関連付けて紹介する事例もある。一方で2000年代以降も「エビフリャー」という言葉の持つ名古屋を揶揄する雰囲気に対し地元民は複雑な感情を抱いているとも、タモリを敵対視しているとも言われる。 一宮市出身の歌手のつボイノリオは1985年(昭和60年)6月21日に発売した「名古屋はええよ!やっとかめ」のB面に「エビふりゃーでゃースキ」という楽曲を収録した。この曲は「エビフリャー」そのものではなく、名古屋弁で名物を紹介するご当地ソング的な内容となっている。また、知多郡武豊町出身の作家の家田荘子は1994年(平成6年)に『名古屋民俗学外電 AB・フリャー』(作画:清水洋三、小学館)という漫画の原作を務めた。この作品はアメリカ出身の主人公が、「エビフリャー」の話題を始めとした名古屋の独特の文化や生活習慣に触れる内容となっている。 名古屋市生まれのエッセイスト川合登志和は、タモリは、名古屋に対する無関心層を振り向かせることに成功した最大の功労者ではないか、と述べた。『タモリと戦後ニッポン』の著者であるライターの近藤正高は、名古屋はどこか無個性な街としてとらえられがちだったが、お笑い種とはいえタモリが取り上げたことにより、名古屋人自身が地域のアイデンティティを再確認した部分は多分にあるのではないか、と推測している。その傍証として近藤は『中日新聞』の夕刊コラム「夕すずめ」を挙げている。タモリが名古屋を揶揄しなくなった後も「夕すずめ」は、名古屋のイメージダウンを招きかねない出来事の度に、「またタモリに笑われる」と頻繁に書かれたのである。
※この「県内の影響」の解説は、「エビフリャー」の解説の一部です。
「県内の影響」を含む「エビフリャー」の記事については、「エビフリャー」の概要を参照ください。
- 県内の影響のページへのリンク