抗インフルエンザ薬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 16:58 UTC 版)
「インフルエンザ」の記事における「抗インフルエンザ薬」の解説
インフルエンザウイルス自体に対する治療としては、抗ウイルス薬が存在する。多くの場合、発症後の早期(約48時間以内)に使用しなければ効果が無い。しかし、抗ウイルス薬により早期に症状が解消した場合、十分な免疫が得られない。 日本感染症学会のガイドラインでは、48時間を経過した患者についても、既に軽快傾向である場合を除いて、積極的投与を検討するとして 抗インフルエンザウイルス薬一覧作用機序区分一般名おもな商品名剤形・規格用法・用量(予防投与を除く)成人小児M2蛋白阻害薬 アマンタジン塩酸塩(シンメトレル) 細粒:10%錠:50mg, 100mg 1日 100mg1-2分服 投与しない ノイラミニダーゼ阻害薬 オセルタミビルリン酸塩(タミフル) カプセル:75mgドライシロップ:3% 1回 75mg1日2回(5日間) 幼小児:1回 2mg/kg1日2回(5日間)新生児・乳児:1回 3mg/kg1日2回(5日間) ザナミビル水和物(リレンザ) 吸入:5mg/ブリスター(4ブリスター/枚) 1回10mg, 1日2回(5日間) ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(イナビル) 吸入粉末:20mg 40mg, 単回投与 20mg(10歳未満)40mg(10歳以上) ペラミビル水和物(ラピアクタ) 点滴静注液:バイアル:150mg/15mLバッグ:300mg/60mL 300mg, 単回投与重症化の危険性:1日1回 600mg, 連日投与いずれも15分以上かけて点滴静注 10mg/kg, 単回投与症状に応じて連日反復投与可。最高 600mg/回いずれも15分以上かけて点滴静注 RNAポリメラーゼ阻害薬 ファビピラビル(アビガン) 錠:200mg 1日目は1回 1,600mg,2日目~5日目は1回 600mg, 1日2回5日間 投与しない キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬 バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ) 錠:10mg, 20mg 成人及び小児(12歳以上):40mg, 80mg(80kg以上)単回投与 12歳未満:40mg(40kg以上),20mg(20-40kg未満), 10mg(10-20kg未満)単回投与 ※ 北村正樹(2018)「抗インフルエンザウイルス薬」より引用し改変 NA(ノイラミターゼ)阻害剤:A型、B型双方に有効。ウイルスそのものの増殖を抑えるのではなく、増殖したウイルスが細胞内から出られなくする。ザナミビル(リレンザ):吸入薬(グラクソ・スミスクライン) オセルタミビル(タミフル):経口薬(ロシュ/中外製薬) ペラミビル(ラピアクタ):注射薬(バイオクリスト開発、日本では塩野義製薬がライセンス生産) ラニナミビル(イナビル):吸入薬(第一三共) M2プロトンチャネル阻害薬:A型のみに有効。アマンタジン(シンメトレル):経口薬。ウイルスの細胞への侵入・脱殻に関与するプロトンチャネルであるM2タンパク質の作用を特異的に阻害する。1964年にA型インフルエンザに効果があることが発見された。日本では当初パーキンソン病の治療薬として承認され、1998年にインフルエンザに対しても承認。現在は、ジェネリック医薬品もあり価格が安かったが、2005年の鳥インフルエンザの際に、中国で政府が大量に配布したアマンタジンを“予防として”鶏の餌に混ぜる行為が行われた結果、耐性ウイルスが発生し、インフルエンザ治療薬としては選択肢に加えることができない状況にある。 リマンタジン(英語版):アマンタジンのα-メチル誘導体。日本では認可・発売されていない。 RNAポリメラーゼ阻害薬:A型、B型双方に有効。ファビピラビル(英文:Favipiravir)(アビガン)(富山化学工業):経口薬。RNAポリメラーゼの阻害によりウイルスの遺伝子複製時に作用を示し、その増殖を防ぐ。高病原性トリインフルエンザウイルスH5N1型を含む広範囲なインフルエンザウイルスに有効であり、ノロウイルスなどの他のRNAウイルスに対する有効性も示唆されている。 詳細は「ファビピラビル」を参照 エンドヌクレアーゼ阻害薬:A型、B型双方に有効。ウイルスの増殖に必要なエンドヌクレアーゼを特異的に阻害することで、ウイルスを増殖できなくする。バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ):経口薬(ロシュ/塩野義製薬) アマンタジン耐性インフルエンザウイルスや、ザナミビル(オセルタミビル)耐性インフルエンザウイルスの出現も既に報告され、アマンタジン耐性は、主に連続変異によってM2タンパク質の構造が変化することによるとされる。また、ザナミビルとオセルタミビルに薬剤耐性を持つウイルスの出現も、すでに報告されている。 こちらの薬剤耐性機構については、まだよく分かってはいないが、ヘマグルチニンが変異して細胞との結合力が低下して、ノイラミニダーゼの働きが弱くても、細胞からの放出が行われることによって、耐性を獲得する場合があることが報告されている。このような薬剤耐性ウイルスの出現に対抗するため、新薬開発の取り組みも継続されている。 2002年冬、インフルエンザが非常に流行したため、抗インフルエンザ薬が不足する問題が起こったことがある。
※この「抗インフルエンザ薬」の解説は、「インフルエンザ」の解説の一部です。
「抗インフルエンザ薬」を含む「インフルエンザ」の記事については、「インフルエンザ」の概要を参照ください。
- 抗インフルエンザ薬のページへのリンク