だいせんおき‐こくりつこうえん〔‐コクリツコウヱン〕【大山隠岐国立公園】
大山隠岐国立公園
大山は中国地方きっての名山であり、古くから修験の場でもあった。穏やかな準平原状の山が多い中国山地にあって、アルペン的な山容はひときわ異彩を放っている。伯耆(ほうき)富士の名も持つが、富士山型の姿は西側から見るときだけで、東西方向に鋭くそぎ落とされた峻険な稜線を持つため、南北及び東面からは荒々しい姿となる。
大山と三瓶(さんべ)山
昭和11年、大山国立公園として指定され、38年に区域を拡張して現在の名称になった。中国地方の最高峰大山(1,729m)から蒜山(ひるぜん)にかけての山域と、隠岐諸島、島根半島及び三瓶山の4地域からなる。
大山は、その山容から多くの登山者があり、山麓のキャンプ場やスキー場とともに、年間を通して親しまれている。山頂付近にはダイセンキャラボクの群落があり、山腹には西日本屈指の規模を持つブナ林が広がる。利用拠点は、最も一般的な夏山登山道の出発点で、天台宗の古刹のある大山寺をはじめ、南東に盆地状の鏡ヶ成(かがみがなる)、西麓に桝水原(ますみずはら)などがある。これらの地点や大平原(おおなるばら)、船上山(せんじょうざん)、豪円山など山麓の要所を結ぶ環状道路があり、利用拠点への到達性はよい。登山道も整備されているが、弥山(みせん)から剣ヶ峰を経て天狗ヶ峰への主稜線と槍尾根は崩落が激しく、登山道から削除されている。
蒜山は、大山東南に尖峰を立てる烏ヶ山(からすがせん)から連なるなだらかな山塊で、上(かみ)、中(なか)、下(しも)蒜山の3山からなる。南麓には広大な蒜山高原があり、大山とは対照的に、ササ原の明るく牧歌的な自然が広がる。
三瓶山は島根県のほぼ中央部に位置し、男(お)三瓶、女(め)三瓶、子(こ)三瓶、孫(まご)三瓶などの7山が室ノ内と呼ばれる火口を環状に囲む。裾野には西の原などの草原が広がり、自然探勝をはじめ登山、キャンプ、スキーなど、多様な利用を楽しめる地区である。
島根半島と隠岐
島根半島は、西部の出雲大社から日御碕(ひのみさき)にかけてと、外洋に面した北岸の東部一帯が公園区域である。出雲大社は、大国主命(おおくにぬしのみこと)を祀る。現在の本殿は18世紀の造営である。大社造り、高さ24m、古代の神社の様式を伝える高床式の大建築であるが、かつてはより大きく、東大寺大仏殿などと並び称せられたという。平成12年、巨木3本を組んだ径3mもある柱が境内から出土し、この伝承を裏付けるものとして話題になった。
日御碕は半島の西の端で、日御碕神社があり、沖合の経(ふみ)島はウミネコの繁殖地である。
東部海岸は半島東端の地蔵崎、美保関などを含み、古くから隠岐への交通の拠点であった。北岸の美保の北浦は、地蔵崎から七類まで約8kmのリアス式海岸で、高さ120mの出雲赤壁を中心に、多数の小島や岩礁、海食洞などがある。また、中北部には多古(たこ)の七つ穴や、高さ40m長さ200mに達する加賀の潜戸(くけど)など、大規模な海食洞がある。
隠岐は島根半島の北東海上にあり、大小180余りの島からなる。島前(どうぜん)と島後(どうご)に分かれ、島後は一つの島だが、島前は西ノ島、中ノ島、知夫里(ちぶり)島の3島が環状に配列しており、それに小島嶼(とうしょ)が加わる。これは火山活動によって生まれたカルデラが海没した結果である。西ノ島西岸の国賀(くにが)海岸は、摩天崖(まてんがい)を中心に高さ100〜250mの雄大な海食崖が続く。通天橋などの洞門もあり、隠岐一番の景勝地である。そのほか、知夫里島の知夫赤壁などが知られる。
島後は隠岐最大の島で、北端の白島(しらしま)海岸は、高さ50〜200mの断崖が約4km続き、沖合の小島とともに明るい風景をつくっている。海中景観にも見るべきものがあり、隠岐に4ヵ所と島根半島西部1ヵ所、計5ヵ所の海中公園地区が指定されている。
一木一石運動
大山の山頂は、かつては草原であった。しかし、登山者が集中する弥山の山頂などは、踏みつけにより植物が消え、裸出した土壌が流失するようになった。
そのため、昭和60年に地元の保護団体と行政機関により「大山の頂上を保護する会」が結成され、「一木一石運動」が開始された。これは、登山の際に皆が石を運び上げ、山頂の植生を取り戻そうとする運動である。成果は上がり、山頂に緑が戻りつつあるが、活動はまだ続いている。
関連リンク
- 大山隠岐国立公園 (環境省ホームページ)
大山隠岐国立公園
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/25 08:03 UTC 版)
大山隠岐国立公園(だいせんおきこくりつこうえん)は、鳥取県・島根県・岡山県の3県にまたがって所在する国立公園。元々は1936年2月1日に十和田国立公園(現・十和田八幡平国立公園)、吉野熊野国立公園、富士箱根国立公園(現・富士箱根伊豆国立公園)とともに大山を中心とする限られた地域が指定されたのが始まりである。
- ^ “大山隠岐国立公園の区域図 (大山蒜山地域)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “大山隠岐国立公園の区域図 (隠岐島地域)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “大山隠岐国立公園の区域図 (島根半島・三瓶山地域)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “大山隠岐国立公園の公園紹介”. 環境省. 2014年4月19日閲覧。
- ^ “国立公園の利用者数(公園、年次別)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- 1 大山隠岐国立公園とは
- 2 大山隠岐国立公園の概要
- 3 面積
- 4 脚注
大山隱岐國立公園と同じ種類の言葉
固有名詞の分類
日本の国立公園 | 阿寒国立公園 吉野熊野国立公園 大山隠岐国立公園 陸中海岸国立公園 足摺宇和海国立公園 |
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