各国における食用利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/09 05:34 UTC 版)
ライムギの主要栽培地域はロシアからドイツにかけての東欧北部であるが、各国ではそれぞれ特色のある利用がなされている。 ドイツにおいてはライムギとコムギの混合したパンが一般的であるが、その混合具合によって種類が違い、またライムギも粗挽きにするか細かく挽くかで違ってくる。ドイツのライムギパンはロッゲンブロート(Roggenbrot、Roggen=ライムギ、Brot=パン)と呼ばれるが、ライムギとコムギとの配合比によって名称基準が明確に定められている。ロッゲンブロートと呼ばれるものはライムギ配合比が90%以上と定められており、ほぼライムギのみによるパンである。ライムギの配合比のほうが多い、ライムギ粉89%から51%までのパンはロッゲンミッシュブロートと呼ばれる。これに対し、コムギの配合比のほうが多い、コムギ粉89%から51%までのパンはヴァイツェンミッシュブロートと呼ばれる。なお、コムギ配合比90%以上のほぼコムギのみによるパンはヴァイツェンブロートと呼ばれる。粗挽きのライムギ粉と、ライムギ粒の挽き割りから作られるプンパーニッケルなどもよく知られたドイツのライムギパンである。 フランスにおいても、ドイツと同様にライムギとコムギの配合比によってパンの名称が定められている。 オーストリアのアルプス山脈部においてもライムギは利用されていたが、ここでは最も利用されていたのはエンバクのパンであり、ライムギパンはそれよりは高級なものとされていた。しかし1950年代から1960年代にかけて流通網の整備などにより安い小麦粉やライムギ粉が入ってくるようになると、エンバクはパンにされなくなり、ライムギパンも半分は小麦粉を混ぜるようになった。 ロシアにおいてもライムギの黒パンは好まれ、非常に多く消費されるが、ドイツのものとは味などでかなり異なったものである。ロシアの黒パンは伝統的にライムギだけの黒パンである。ロシアはドイツに比べてもさらに自然環境が厳しく、主力の栽培穀物がライムギだったためである。この黒パンはロシアにおいてはまさしく食物の中心的存在であり、ロシア語でパンをあらわす『フレープ(хлеб)』という言葉はパン全体だけでなく、穀物全体をも指し、また逆に黒パンのことも指した。パンの中で最も一般的なものが黒パンだったので、フレープという語がそのまま黒パンを指すようになったのである。また、ロシアはヨーロッパの他国に比べてパンの消費量が非常に多く、まさしく主食に近い地位を確立していた。ロシア語で「パンと塩」(Хлеб да Соль:フレープ・ダ・ソーリ)という言葉は「もてなし」を意味するが、これは来客をもてなす時に大きな丸い黒パンと塩を差し出したからである。ロシアにおいても、近年ではコムギとライムギの混合パンは多く流通している。 ポーランドも黒パン地域であるが、ここの黒パンはドイツよりはロシア風に近いものである。ベラルーシはエンバクをより多用する地域であるが、ここではパン用にはその時代からライムギが使用されてきた。フィンランドではライムギパンはルイスレイパ(Ruisleipä)、エストニアにおいてはレイブ (Leib) と呼ばれ、やはりよく消費される。また、北欧諸国においては平たく乾いたクラッカー状のクリスプ・ブレッドが多く生産されるが、このクリスプ・ブレッドは伝統的にライムギによって作られるものであり、現在ではほかの原料によって作られることもあるものの、やはりライムギによって作られるものが主流である。クリスプ・ブレッドはスウェーデン語ではクネッケブレード(knäckebröd)、ノルウェー語ではクネッケブレー(Knekkebrød)、デンマーク語ではクネックブレド(Knækbrød)、アイスランド語ではリョックブレユズ(Hrökkbrauð)、フィンランド語ではネッキレイペ(näkkileipä)と呼ばれ、いずれの国でもよく食べられる。 ライムギパンにコンビーフまたはパストラミ、ザワークラウト、チーズ、ロシアンドレッシングまたはサウザンドアイランドドレッシングを挟んでグリルしたホットサンドであるルーベンサンドは、ニューヨークの定番のサンドイッチのひとつとなっている。
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